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鈴木雅明指揮 読売日本交響楽団&RIAS室内合唱団

2018年10月30日 | pocknのコンサート感想録2018
10月26日(金)鈴木雅明指揮 読売日本交響楽団/RIAS室内合唱団
第582回 定期演奏会
サントリーホール

【曲目】
1.クラウス/教会のためのシンフォニア ニ長調 VB146
2.モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調 K.543
3.メンデルスゾーン/オラトリオ「キリスト」Op.97
4.メンデルスゾーン/詩篇第42番「鹿が谷の水を慕うように」Op.42
S:リディア・トイシャー/T:櫻田亮
【アンコール】
♪バッハ/モテット「来たれイエスよ、来たれ」BWV229~アリア

鈴木雅明がモダンのシンフォニーオーケストラを振ること、RIAS室内合唱団が出演すること、メンデルスゾーンの珍しい宗教声楽作品をやること、どれもに引かれて出かけたコンサートは大正解だった。

最初のクラウスの曲、プログラム解説ではモーツァルトとの共通性を説いていたが、きっちりして溌剌とした音楽はむしろハイドン的。鮮やかでパンチの効いたトゥッティと、くっきり生き生きと描かれたフーガが、開始に相応しい華やかな祝祭的な気分を盛り立てた。

モーツァルトのシンフォニーも鈴木らしい颯爽とした演奏。序奏を足早に進めたあとも小気味良いテンポで進み、要所をキリッと締め、瞬発力も効かせ、歌わせるところは柔らかく歌い、スッキリしたフォルムのなかで起伏に富んだドラマを展開した。ピリオド系の指揮者は何でもかんでもリピートを入れることが多いが、この演奏では第4楽章はリビートを網羅した一方で、第1楽章の後半はリビートを省略。これで音楽の重心が後半に置かれただけでなく、最後の説得力が高まった。

プログラム後半はメンデルスゾーンの宗教声楽作品が2つ。どちらも僕にとっては恐らく初体験だが、ホレボレする素晴らしい音楽だった。ちなみに「詩篇」の印象的な力強いメロディーは、後の「エリア」の先取りだった。

RIAS 室内合唱団は「室内(Kammer)」と付いてはいるが、結構大所帯で、柔らかく深く発せられる言葉が、心から心へのメッセージを伝えてきた。響きも美しく温かで、聴いていて安心感や懐かしさを覚えた。スウェーデン放送合唱団とはまた違った色合いや香りを持つ優れた合唱団だ。「キリスト」では、合唱がイエスを糾弾する側の役も担うが、「十字架につけよ!」という叫びには、そんな言葉を発してしまうことへの自責の念や苦悩も感じられ、「痛み」の表情として伝わってきた。それ故に、イエスの慈悲を歌う最後のコラールがなお更胸に沁みて来る。場面の展開を、艶と張りのある声で生き生きと伝えた櫻田亮のレチタティーヴォも良かった。

「詩篇」では、合唱の深く温かな表情が、神へのひたむきな思いと、美しい祈りの姿を描き、喜びで溢れんばかりの力強い神への賛美では、輝かしい響きも聴かせてくれた。ソプラノのリディア・トイシャーの、清らかで優しく、心に沁みる歌が花を添えた。

オーケストラは、前半の演奏と比べてより豊潤な香りを醸し出し、豊かな響きを聴かせた。これが合唱と一体となって生まれる輝きと色合いは極上もの。シンフォニーオーケストラと大所帯の合唱団ならではの響きを作り出し、雄弁に語らせた鈴木の指揮には、新たな手腕を感じた。アンコールで、メンデルスゾーンとは切っても切れない関係にあるバッハをアカペラで切々と聴かせてくれたのも嬉しかった。

♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢(YouTube)
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美(YouTube)

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