10月16日(土)ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団
第694回定期演奏会
サントリーホール
【曲目】
1.ベルク/ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
Vn:神尾真由子
2.ブルックナー/交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」1878/80年稿ノーヴァク版
今年の5月に聴いたノット/東響のマーラーで体験した最高に幸福な時間を、今度はブルックナーで味わおうと出かけた演奏会。神尾がソロを弾くベルクのコンチェルトも楽しみだった。
まずはベルク。神尾のヴァイオリンは研ぎ澄まされた美しさを湛え、いつもの濃厚で妖艶なテイストは抑え気味に、スリムでピュアなラインを描いていった。オケも、はかない美しさをデリケートに聴かせる。バッハのコラールが聴こえてくると、音楽はストイックな雰囲気から内面へと入り込んで来て、神尾のヴァイオリンも持ち前の妖艶な色香を強めていった。そして、最後はまさに昇天を思わせるようにオケとともに遥か遠い空の彼方へと消えて行った。
この曲は本当に素晴らしい作品だと思うので、ずっと覚醒して聴いていたいのだが、いつも中盤あたりから眠くなってしまい「コラール」が聴こえてくると覚醒するパターンで、今回もやはりそんな感じだった。もっとしっかり集中して聴ければ異なる感想になったかも知れない。
後半はブルックナー。冒頭のトレモロからは厳格な雰囲気が伝わってきた。全曲を通してファンタジックなものよりも、よりリアリスティックな表現を感じる演奏だった。ストレートで押しが強く、武骨に深く掘り下げて行く演奏からは人間臭さが伝わってくる。音圧が高まる場面では、赤々と燃える粘度の高いマグマがたぎり、グワワンと吹き上げる強大なエネルギーで圧倒する。第3楽章では特にそうした底力を全身で体感した。第2楽章でのヴィオラの雄弁な歌をはじめ、能動的な「歌」や「語り」も随所で聴かせた。
ただ、デリケートな部分をもう少し丁寧に扱ってほしいと感じたり、全体の響きの精度を高めてほしいと感じたりするなど、最後の仕上げのもう一段の磨きあげがほしいとも感じた。音楽全体に一貫して流れる大河のような大きさや懐の深さという点でももう一歩。
終演後は割れるような拍手が続き、オケが引いたあとはスタンディングオベーションでノットが呼び戻される盛り上がりを見せたが、自分のなかでは5月のあのマラ4の幸福感にまでは至れなかった。
ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団(マーラー/交響曲第4番 他)2021.5.22 オペラシティ
ジョナサン・ノット指揮 NHK交響楽団 2011.2.17 サントリーホール
#文化芸術は生きるために必要だ
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最新アップロード:「紅葉」(メゾソプラノ、チェロ、ピアノ連弾用アレンジ)
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まずはベルク。神尾のヴァイオリンは研ぎ澄まされた美しさを湛え、いつもの濃厚で妖艶なテイストは抑え気味に、スリムでピュアなラインを描いていった。オケも、はかない美しさをデリケートに聴かせる。バッハのコラールが聴こえてくると、音楽はストイックな雰囲気から内面へと入り込んで来て、神尾のヴァイオリンも持ち前の妖艶な色香を強めていった。そして、最後はまさに昇天を思わせるようにオケとともに遥か遠い空の彼方へと消えて行った。
この曲は本当に素晴らしい作品だと思うので、ずっと覚醒して聴いていたいのだが、いつも中盤あたりから眠くなってしまい「コラール」が聴こえてくると覚醒するパターンで、今回もやはりそんな感じだった。もっとしっかり集中して聴ければ異なる感想になったかも知れない。
後半はブルックナー。冒頭のトレモロからは厳格な雰囲気が伝わってきた。全曲を通してファンタジックなものよりも、よりリアリスティックな表現を感じる演奏だった。ストレートで押しが強く、武骨に深く掘り下げて行く演奏からは人間臭さが伝わってくる。音圧が高まる場面では、赤々と燃える粘度の高いマグマがたぎり、グワワンと吹き上げる強大なエネルギーで圧倒する。第3楽章では特にそうした底力を全身で体感した。第2楽章でのヴィオラの雄弁な歌をはじめ、能動的な「歌」や「語り」も随所で聴かせた。
ただ、デリケートな部分をもう少し丁寧に扱ってほしいと感じたり、全体の響きの精度を高めてほしいと感じたりするなど、最後の仕上げのもう一段の磨きあげがほしいとも感じた。音楽全体に一貫して流れる大河のような大きさや懐の深さという点でももう一歩。
終演後は割れるような拍手が続き、オケが引いたあとはスタンディングオベーションでノットが呼び戻される盛り上がりを見せたが、自分のなかでは5月のあのマラ4の幸福感にまでは至れなかった。
ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団(マーラー/交響曲第4番 他)2021.5.22 オペラシティ
ジョナサン・ノット指揮 NHK交響楽団 2011.2.17 サントリーホール
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