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沖澤のどか 指揮 読売日本交響楽団

2021年10月13日 |  pocknのコンサート感想録2021
10月9日(土)沖澤のどか指揮 読売日本交響楽団
~第241回土曜マチネーシリーズ~
東京芸術劇場


【曲目】
1.シベリウス/交響詩「フィンランディア」Op.26
2.ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
 【アンコール】
 ♪ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第10番ト長調 Op. 14-2~第2楽章
 Pf:ペーター・レーゼル
3.シベリウス/交響曲第2番ニ長調 Op.43

この演奏会に行くことにした決め手は、昨年の5月、最後の日本公演と銘打ったリサイタルが1年以上の延期となったピアニスト、ドイツの名匠ペーター・レーゼルがとうとう来日を果たし、リサイタルを前にこの演奏会にも客演するとわかったこと。若手のホープとして注目を集め、去年もステキな演奏を聴かせてくれた沖澤のどかの指揮というのも嬉しい。

東京芸術劇場は3階席までかなりの入りだが、オケの団員がステージに入ってくる時の拍手がまばらだったのは寂しかった。コロナ禍で演奏会が再開されてから定着したかに思えた楽員登場時の暖かく大きな拍手は、これからも続いて欲しい。

最初は「フィンランディア」。エネルギーに溢れたしなやかな演奏。伸びやかで開放感のある響きが、丁寧な筆致でホールに満たされた。中間部のフィンランディア讃歌の、穏やかで温かな親密さがとりわけ印象に残った。

そしてレーゼルが登場してベートーヴェンのコンチェルト。レーゼルのピアノは最初の一音から聴き手を魅了した。一つ一つの音が命を宿す特別な存在として響き、心を捉える。穏やかな眼差しから端正に紡ぎ出される音たちは全てを知り尽くした洞察に満ち、世界を優しい眼差しで大きく包み込むような存在感や安心感があり、身も心も委ねて聴き入った。レーゼルは強烈な個性を聴かせたり、変わったアプローチをしたりということは一切なく、それでいて様々なピアニストが弾くホール所有の同じピアノでこんな強烈なインパクトを伝えるなんて驚くしかない。沖澤指揮読響は瑞々しいタッチで的確にオーケストラパートの持ち味を出して理想的なパートナーを務め、稀に見る名演が実現した。アンコールがこれまた秀逸で、紀尾井ホールで聴いたベートーヴェンのソナタ全曲演奏会の記憶が蘇った。来週のリサイタルが楽しみ!

後半はおなじみのシベリウスの2番。冒頭の、香りが立ち上るような柔らかな語りかけが、構えていた心を一気にほぐしてくれた。力みや余計な気合いとは無縁。沖澤の指揮はとても丁寧で、音楽の流れに逆らわずに淀みなく進んでいく。希望、優しさ、憧れといった感情が溢れている。終楽章も暖かな春のようなおおらかさ。明るい太陽が降りそそぎ、幸福感に包まれて終演となった。調和のとれた平和なシベリウスと云ったらいいのだろうか。その一方で、流れに逆らうような激しさや、強烈な意思表示という点で物足りなさも感じ、人間臭い屈折や迷いといったドラマがもっとあってもいいとも思ったが、沖澤さんが作り出す世界は柔軟で、多くの可能性を秘めていることも確か。今後の更なる成長を楽しみに見守っていきたい。

東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ(指揮:沖澤のどか)~2020.7.12 東京文化会館~
沖澤のどか 指揮やっとかめ室内管弦楽団~2019.8.12 杉並公会堂~
ペーター・レーゼル ピアノリサイタル~2018.5.8 紀尾井ホール~

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