5月26日(木)ファビオ・ルイージ 指揮 NHK交響楽団
《2022年5月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.メンデルスゾーン/序曲「静かな海と楽しい航海」Op.27
2.ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
【アンコール】
♪ ラヴェル/水の戯れ
Pf:小菅 優
3.リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」Op.35
サントリーホールが改修工事のため一時休止していたN響B定期が再開。指揮は9月から首席指揮者に就任するファビオ・ルイージ。名曲コンサートのようなプログラムだが、どの曲も「水」や「海」がキーワードとなる考えられた選曲。
メンデルスゾーンの序曲は、柔らかなシルクを織りなすようなデリケートなヴェールに包まれて始まった。甘美で抒情に溢れ、表情豊か。響きは豊潤で緻密。楽しい船旅の情景を描く場面での伸びやかさと力強さもドラマチックで申し分ない。油絵の風景画が目に浮かぶ。重心が低く、深い呼吸で、柔らかな充実した響きが四肢にみなぎる演奏スタイルはティーレマンを思わせるが、この曲には、はやる気持ちを抑えきれないようなアバド的ワクワク感も欲しいとも思った。
次は小菅優をソロに迎えてラヴェルのコンチェルト。これは小菅の存在感が抜群だった。煌めきがあり、踊り出したくなるようなリズム系の乗りのよさと、歌うメロディーの対比の鮮やかさ。パンチが冴え、オケと共に怒濤の如くなだれ込む第1楽章のエンディングの胸がすくリアリティー、ヒタヒタと絡み付く弱音の連なりがオケからくっきりと浮かび上がってきた第2楽章、オケと堂々とタックルを組んで瞬時の方向転換を繰り返しつつ両者が互いに煽る第3楽章。ルイージ/N響も密度の濃い熱い演奏で、ピアノとオケとのガチの競演に聴き入った。
アンコールの、水がほとばしる様を描く冴えにも脱帽。N響は、若手のよくわからない外国人アーティストではなく、こうした力のある日本人アーティストをどんどん出演させてほしい。
後半はおなじみ「シェエラザード」。ここでは何と云っても、マロさんの甘美で妖艶なヴァイオリン・ソロに魅せられた。シェエラザード姫がシャフリアール王に身を摺り寄せて、魔法をかけて陶酔させるようななまめかしい歌を聴かせる情景が、映画のシーンのように伝わってくる。早川さんのキリっとヴァイオリンを支えるハープとともに、スポットライトが当たっているよう。
ルイージ指揮のN響は、ここでも充実の響きでたっぷり歌い、全体を大きく捉えて表情を練り上げつつ壮大な物語を奏でていった。あちこちに現れる管楽器のソロも概ね素晴らしく、色彩豊かな陰影が施された。ただ、この作品は音楽自体が出来すぎの観があり、首席指揮者就任直前の指揮者ならではの実力を示すには無難過ぎる選曲のように思ったのだが、沖縄の復帰50周年記念で「海」をテーマに、看板の指揮者と共に沖縄公演を行う企画の一環としては相応しい演目と演奏陣だったと云える。
ラヴェルの演奏中、ホール内に補聴器のハウリングのようなキーンという高音域の音が断続的に鳴っていてとても気になった。休憩時間にスタッフが回ったりアナウンスが入ったりしたおかげか、後半では聴こえなかった。補聴器のハウリング音は、補聴器の持ち主には多分聞こえない。周囲で気づいた人がすぐに注意しないとダメだ。本人にとってもその方が有難いはず。
ファビオ・ルイージ 指揮 NHK交響楽団 2021.11.25 サントリーホール
小菅 優 ピアノリサイタル 2022.1.21 東京オペラシティ
MAROワールド Vol.44 “ドホナーニ Part Ⅱ” 2022.3.21 王子ホール
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
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Pf:小菅 優
3.リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」Op.35
サントリーホールが改修工事のため一時休止していたN響B定期が再開。指揮は9月から首席指揮者に就任するファビオ・ルイージ。名曲コンサートのようなプログラムだが、どの曲も「水」や「海」がキーワードとなる考えられた選曲。
メンデルスゾーンの序曲は、柔らかなシルクを織りなすようなデリケートなヴェールに包まれて始まった。甘美で抒情に溢れ、表情豊か。響きは豊潤で緻密。楽しい船旅の情景を描く場面での伸びやかさと力強さもドラマチックで申し分ない。油絵の風景画が目に浮かぶ。重心が低く、深い呼吸で、柔らかな充実した響きが四肢にみなぎる演奏スタイルはティーレマンを思わせるが、この曲には、はやる気持ちを抑えきれないようなアバド的ワクワク感も欲しいとも思った。
次は小菅優をソロに迎えてラヴェルのコンチェルト。これは小菅の存在感が抜群だった。煌めきがあり、踊り出したくなるようなリズム系の乗りのよさと、歌うメロディーの対比の鮮やかさ。パンチが冴え、オケと共に怒濤の如くなだれ込む第1楽章のエンディングの胸がすくリアリティー、ヒタヒタと絡み付く弱音の連なりがオケからくっきりと浮かび上がってきた第2楽章、オケと堂々とタックルを組んで瞬時の方向転換を繰り返しつつ両者が互いに煽る第3楽章。ルイージ/N響も密度の濃い熱い演奏で、ピアノとオケとのガチの競演に聴き入った。
アンコールの、水がほとばしる様を描く冴えにも脱帽。N響は、若手のよくわからない外国人アーティストではなく、こうした力のある日本人アーティストをどんどん出演させてほしい。
後半はおなじみ「シェエラザード」。ここでは何と云っても、マロさんの甘美で妖艶なヴァイオリン・ソロに魅せられた。シェエラザード姫がシャフリアール王に身を摺り寄せて、魔法をかけて陶酔させるようななまめかしい歌を聴かせる情景が、映画のシーンのように伝わってくる。早川さんのキリっとヴァイオリンを支えるハープとともに、スポットライトが当たっているよう。
ルイージ指揮のN響は、ここでも充実の響きでたっぷり歌い、全体を大きく捉えて表情を練り上げつつ壮大な物語を奏でていった。あちこちに現れる管楽器のソロも概ね素晴らしく、色彩豊かな陰影が施された。ただ、この作品は音楽自体が出来すぎの観があり、首席指揮者就任直前の指揮者ならではの実力を示すには無難過ぎる選曲のように思ったのだが、沖縄の復帰50周年記念で「海」をテーマに、看板の指揮者と共に沖縄公演を行う企画の一環としては相応しい演目と演奏陣だったと云える。
ラヴェルの演奏中、ホール内に補聴器のハウリングのようなキーンという高音域の音が断続的に鳴っていてとても気になった。休憩時間にスタッフが回ったりアナウンスが入ったりしたおかげか、後半では聴こえなかった。補聴器のハウリング音は、補聴器の持ち主には多分聞こえない。周囲で気づいた人がすぐに注意しないとダメだ。本人にとってもその方が有難いはず。
ファビオ・ルイージ 指揮 NHK交響楽団 2021.11.25 サントリーホール
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