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秋に聴くクラリネット五重奏

2016年11月26日 | pocknのコンサート感想録2016
11月23日(水)Clarinet Quintets in Autumn

目黒・芸術家の家スタジオ


【曲目】
1.モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調 K.581
[Sterhazy Quartet feat.ろぶ]
 Cl:大藤由紀/Vn:石川淳一、長谷川淳子/Vla:窪川智子/Vc:長谷川奈津子

2.ブラームス/クラリネット五重奏曲ロ短調 Op.115
[Junnery Quintet]
 Cl:武藤恵理/Vn:山口京太、長谷川淳子/Vla:鈴木智/Vc:依田龍彦


ハセジュンさんにお誘い頂き、アットホームな室内楽コンサートに出かけた。プログラムには名高いクラリネット五重奏曲が二つ並んだ。

モーツァルトのクインテットは、明るくクリアで、アクティブな演奏。音楽のシーンごとに5人が様々な組み合わせで奏でるアンサンブルが、いつもキチンとお互い確認し合って呼吸を合わせつつ次へと受け渡して行く姿勢が、演奏を生き生きとさせ、しっかりとした全体の形を作り上げて行く。ディナミークの鮮やかな変化も堂に入っているし、アンサンブルとしての結束力の高さを感じた。大藤さんのクラリネットはとても安定していて、速くて細かいパッセージも丁寧に描き、アンサンブルのなかでもクラリネットに与えられたソリスト的な役割をきっちりと果たしていた。

後半は時代を1世紀飛び越えてブラームスのクインテット。こちらは作品そのものの性格もあるかも知れないが、アンサンブルがとてもしっとりと潤っていて、深い詩情を湛えた演奏となった。拍子に対して意識的に呼吸を合わせるというより、アンサンブルの中に漂う空気をメンバーが感じ取り、柔らかく自然な呼吸でタイミングや表情を合わせているという印象を受けた。今日のコンサートのタイトルにもなっている「秋」の哀愁がそこはかとなく伝わってきた。ここでは第1ヴァイオリンの山口さんが、そうしたニュアンスをたっぷりとした息遣いでアンサンブルに示し、メンバー全体がそれを敏感に感じ取り、音色と表情を合わせて行く様子が窺えた。武藤さんの陰影に富んだクラリネットの音色も素敵だった。

会場の「芸術家の家」は、演奏者の息遣いが間近で感じられる小さな落ち着いた空間。演奏者から伝わる「歌」や「語り」もより親密に感じられ、深まる秋を素敵な演奏と共に味わうことができた。
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