4月30日(日)Vn:去川聖奈/Pf:林直樹
音楽ネットワーク「えん」~第108回 コンセール・ラポール in 東京(通算932回)~
尾上邸音楽室
【曲目】
1.エルガー/愛の挨拶
2.レーガー/ロマンス
3.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 Op.24「春」
♪ ♪ ♪ 4.ジーツィンスキー/篠崎史紀編/ウィーンわが夢の街
5.ブラームス/ハイフェッツ編/瞑想曲
6.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」
【アンコール】
♪ マスネ/タイスの瞑想曲
小さな会場でハイレベルの演奏会を提供する「音楽ネットワーク《えん》」のコンサートを久しぶりに聴き、溢れる若さと充実した手ごたえを感じる演奏を楽しんだ。
ヴァイオリンの去川さんは冒頭の「愛のあいさつ」で、いきなり聴き手を魅了した。何より心を捉えたのは色香を湛えた魅惑の音色。太くて芯のある音が柔らかく豊かに響き、自然な息遣いで歌いかけてくる。親密な語り口から、終盤には熱く朗々と愛を歌い上げ、短い曲のなかに大きなドラマを感じさせる演奏に心酔した。この香り立つ音色と心をくすぐる歌心は、とりわけアンコールも含めた小品で際立った。縛られることなく自由に伸び伸びと、チャーミングさや色っぽさも交えて、自然な語り口で生き生きと音楽を伝えてくる。
一方で、ベートーヴェンのスプリングソナタでは、様式感への配慮ということもあるのだろうが、小品から感じられた自由な発露や音色の多彩さが抑制されている印象を受けた。「この曲はリピートなしで演奏されることが多いけれど、即興も交えてリピートします」というMC通り、ピアノの林さんと共にリピートでは時おり装飾音が加えられた。でももっと羽目を外すぐらい自由に楽しそうにやってもいい。
もう1曲のソナタはブラームスの「雨の歌」。去川さんは演奏の前に、曲のタイトルの由来となった歌曲の歌詞も紹介しつつ、その一部を林さんとともに演奏してくれたり、第3楽章からは「片思いの切なさが感じられる」と、曲への印象を語ってくれたり、他の楽章についてもブラームスのクララへの思いや、亡くなったクララの息子への哀悼の気持ちが込められていることなど、興味深い話をしてくれた。演奏にもそんな思いが込められ、小品で聴かれたような感情の揺らぎが感じられ、音への色付けや香り付けにも、心の内が映し出されていた。林さんのピアノも詩情を湛え、ヴァイオリンとの生き生きとした対話が交わされていた。
これを聴いたら、ベートーヴェンでもこの先、去川さんならではの個性が光る演奏に期待が膨らんだ。8月31日には、林さんとのデュオでブラームスのソナタ全曲の演奏会がみなとみらいホールで行われる。益々の活躍が楽しみだ。
演奏会の後、アーティストを囲んだ交流会のなかで、8月に「えん」のコンサートに出演予定の中村里咲さんの歌と尾﨑風磨さんのピアノで、演技力抜群の生き生きとしたコロラトゥーラによる3曲を披露してくれたり、聴衆で参加していたアーティストによる鍵盤ハーモニカやピアノの演奏なども聴くことができたり… 聴衆とアーティストの間の垣根が低い「えん」ならではの交流も楽しんだ。
《音楽ネットワーク「えん」過去のコンサートの感想》
第1回シンフォニー演奏会 2021.12.1 三鷹市芸術文化センター風のホール
アイリス・レゲヴ & 村岡明日香 デュオ・リサイタル 2021.7.11 安養院瑠璃光堂
石田詩葉 ピアノリサイタル 2020.10.17 尾上邸音楽室
『虹と雪のバラード』 2020.2.29 スタジオコンチェルト
シリーズ《今を生きる作曲家に焦点を当てて》第2回 2017.11.26 尾上邸音楽室
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「ほたるこい」幻想 ~混声合唱のための~ ほか
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3.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調 Op.24「春」
5.ブラームス/ハイフェッツ編/瞑想曲
6.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」
【アンコール】
♪ マスネ/タイスの瞑想曲
小さな会場でハイレベルの演奏会を提供する「音楽ネットワーク《えん》」のコンサートを久しぶりに聴き、溢れる若さと充実した手ごたえを感じる演奏を楽しんだ。
ヴァイオリンの去川さんは冒頭の「愛のあいさつ」で、いきなり聴き手を魅了した。何より心を捉えたのは色香を湛えた魅惑の音色。太くて芯のある音が柔らかく豊かに響き、自然な息遣いで歌いかけてくる。親密な語り口から、終盤には熱く朗々と愛を歌い上げ、短い曲のなかに大きなドラマを感じさせる演奏に心酔した。この香り立つ音色と心をくすぐる歌心は、とりわけアンコールも含めた小品で際立った。縛られることなく自由に伸び伸びと、チャーミングさや色っぽさも交えて、自然な語り口で生き生きと音楽を伝えてくる。
一方で、ベートーヴェンのスプリングソナタでは、様式感への配慮ということもあるのだろうが、小品から感じられた自由な発露や音色の多彩さが抑制されている印象を受けた。「この曲はリピートなしで演奏されることが多いけれど、即興も交えてリピートします」というMC通り、ピアノの林さんと共にリピートでは時おり装飾音が加えられた。でももっと羽目を外すぐらい自由に楽しそうにやってもいい。
もう1曲のソナタはブラームスの「雨の歌」。去川さんは演奏の前に、曲のタイトルの由来となった歌曲の歌詞も紹介しつつ、その一部を林さんとともに演奏してくれたり、第3楽章からは「片思いの切なさが感じられる」と、曲への印象を語ってくれたり、他の楽章についてもブラームスのクララへの思いや、亡くなったクララの息子への哀悼の気持ちが込められていることなど、興味深い話をしてくれた。演奏にもそんな思いが込められ、小品で聴かれたような感情の揺らぎが感じられ、音への色付けや香り付けにも、心の内が映し出されていた。林さんのピアノも詩情を湛え、ヴァイオリンとの生き生きとした対話が交わされていた。
これを聴いたら、ベートーヴェンでもこの先、去川さんならではの個性が光る演奏に期待が膨らんだ。8月31日には、林さんとのデュオでブラームスのソナタ全曲の演奏会がみなとみらいホールで行われる。益々の活躍が楽しみだ。
演奏会の後、アーティストを囲んだ交流会のなかで、8月に「えん」のコンサートに出演予定の中村里咲さんの歌と尾﨑風磨さんのピアノで、演技力抜群の生き生きとしたコロラトゥーラによる3曲を披露してくれたり、聴衆で参加していたアーティストによる鍵盤ハーモニカやピアノの演奏なども聴くことができたり… 聴衆とアーティストの間の垣根が低い「えん」ならではの交流も楽しんだ。
《音楽ネットワーク「えん」過去のコンサートの感想》
第1回シンフォニー演奏会 2021.12.1 三鷹市芸術文化センター風のホール
アイリス・レゲヴ & 村岡明日香 デュオ・リサイタル 2021.7.11 安養院瑠璃光堂
石田詩葉 ピアノリサイタル 2020.10.17 尾上邸音楽室
『虹と雪のバラード』 2020.2.29 スタジオコンチェルト
シリーズ《今を生きる作曲家に焦点を当てて》第2回 2017.11.26 尾上邸音楽室
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