4月12日(水)松井亜希(S)/山田剛史(Pf) 
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~東京・春・音楽祭 2023~
~ミュージアム・コンサート~
国立科学博物館日本館2階講堂
【曲目】
♪ クィルター/4つの子供の歌 Op.5
♪ プーランク/歌曲集「くじびき」FP178
♪ ブリテン/歌曲集「子守歌のお守り」Op.41 より
ゆりかごの歌、ハイランドの子守歌、お守り、乳母の歌
♪ ヴィラ=ロボス/赤ちゃんの一族 第1組曲「人形たち」より
陶器の人形、道化人形(ピアノ・ソロ)
♪ バーンスタイン/わたしは音楽が大嫌い!~ソプラノのための5つの子どもの歌~
~《子供の魔法の角笛》のテキストによる作品~
♪ シューマン/テントウムシ
♪ ブラームス/子守歌
♪ ツェムリンスキー/せむしの小人さん
♪ R.シュトラウス/天の使い(《5つの歌》op.32-5より)
♪ シンディング/「子供の魔法の角笛」Op.15 より
慈母マリア様、子守歌、フーガ
♪ マーラー/「子供の魔法の角笛」より
ラインの伝説、この歌を作ったのは誰?
♪ 武満徹/こどものためのピアノ小品より 微風、雲(ピアノ・ソロ)
♪ 木下牧子/抒情小曲集「月の角笛」より
うぐいす、ほんとに きれい、ねこぜんまい、夕顔、山の琵琶、月の角笛、つらら
(アンコール)
♪ 中田喜直/「ほしとたんぽぽ」より「こころ」、「わらい」(詩:金子みすゞ)
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BCJのソリストとしてすっかりお馴染みの松井亜希さんだが、リサイタルを聴くのは5年ぶり。東京科学博物館内の、旧奏楽堂を思わせる趣のある講堂は落ち着いた響きがする。リサイタルでは、子供向けに書かれた歌や、子供が主人公の歌、子供が登場する歌など、子供にまつわる様々な歌が、楽しいMCと共に披露された。
松井さんの歌は、どんな曲でもスッと心に入ってきて、清々しい心地よさをもたらす。それは色彩に富んだ清澄で美しい声の魅力と、親密で自然に心を揺さぶる表現、言葉の美しさなど、様々な要素が重なってもたらされるものだ。あるときは、母が子どもに物語を読み聞かせるように温かなハートで愛情たっぷりに、またあるときは夢物語の主人公になったようにスリリングに、或いは自信満々に、ときにはとろけるほど色っぽく… 松井さんの歌はシーンごとに千変万化に声の色を変え、装いを変え、極細の弱音から刺激的な強音まで自在に軽々と飛び回る。顔の表情や体の自然な動きも役者顔負けの豊かさで、松井さんの歌からは目も離せない。もうこれは、歌手というよりも「表現者」という言葉の方が相応しいと思えるほどだ。
松井さんはこのリサイタルのために、自ら歌詞の詳しい大意を作り、聴衆に配ってくれた。僕はあらかじめ対訳を用意していたが、それができなかった歌ではこの大意がとても役立った。歌が雄弁なので、大意だけでも今何を歌っているのかが手に取るようにわかったし、対訳が手元にある歌では、一つ一つの言葉がいかにその言葉に相応しく発せられ、言葉に命が灯されているかを感じ取れた。日本語の歌では、日本語の持つ独特の美しさを伝えてくれた。アーティストは、取り組む作品の隅々まで熟知し、揺るぎない表現手段を備えて演奏会に臨むのは当然ではあるが、その徹底ぶりには驚くばかり。
そんな風に作品に徹底的に対峙していることを忘れさせてくれるほど、歌うことがとにかく楽しくて仕方ないという様子で次々と素敵な歌を聴かせてくれ、時間を忘れて歌の世界に酔いしれ、松井さんがミューズのようにも思えた。松井亜希は、現代屈指のすごいアーティストだと、今夜のリサイタルで益々実感した。
歌を常に優しくエスコートした、タカギクラヴィア所蔵の小さめのスタインウエイによる山田さんの演奏もステキだった。山田さんは松井さんの影のように歌の表情を映し、また一心同体のように絡みつき、いつでも松井さんと一緒に歌っていた。明晰で強靭なタッチでアグレッシブに音楽を先導する場面もあり、ピアノのソロ作品では、そんなソリストとしての一面を聴くことも出来た。後半で演奏した武満の2作品は、昔NHKの「ピアノのおけいこ」のテーマ曲として使われていたと紹介されたが、この2曲は1979年度に講師を担当した井上直幸氏によるレッスンの教材として使われていたもので懐かしかった。
バッハ/ヨハネ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン)~2021.2.19 サントリーホール~
バッハ/マタイ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン)~2020.8.3 東京オペラシティ~
鈴木雅明指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団(S:松井亜希)~2019.6.21 紀尾井ホール~
松井亜希 ソプラノリサイタル ~2018.3.10 ソフィアザール・サロン(駒込)~
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「おさかな」(詩:金子みすゞ)/「かなりや」(詩:西條八十)
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
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~東京・春・音楽祭 2023~
~ミュージアム・コンサート~
国立科学博物館日本館2階講堂
【曲目】
♪ クィルター/4つの子供の歌 Op.5
♪ プーランク/歌曲集「くじびき」FP178
♪ ブリテン/歌曲集「子守歌のお守り」Op.41 より
ゆりかごの歌、ハイランドの子守歌、お守り、乳母の歌
♪ ヴィラ=ロボス/赤ちゃんの一族 第1組曲「人形たち」より
陶器の人形、道化人形(ピアノ・ソロ)
♪ バーンスタイン/わたしは音楽が大嫌い!~ソプラノのための5つの子どもの歌~
~《子供の魔法の角笛》のテキストによる作品~
♪ シューマン/テントウムシ
♪ ブラームス/子守歌
♪ ツェムリンスキー/せむしの小人さん
♪ R.シュトラウス/天の使い(《5つの歌》op.32-5より)
♪ シンディング/「子供の魔法の角笛」Op.15 より
慈母マリア様、子守歌、フーガ
♪ マーラー/「子供の魔法の角笛」より
ラインの伝説、この歌を作ったのは誰?
♪ 武満徹/こどものためのピアノ小品より 微風、雲(ピアノ・ソロ)
♪ 木下牧子/抒情小曲集「月の角笛」より
うぐいす、ほんとに きれい、ねこぜんまい、夕顔、山の琵琶、月の角笛、つらら
(アンコール)
♪ 中田喜直/「ほしとたんぽぽ」より「こころ」、「わらい」(詩:金子みすゞ)
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BCJのソリストとしてすっかりお馴染みの松井亜希さんだが、リサイタルを聴くのは5年ぶり。東京科学博物館内の、旧奏楽堂を思わせる趣のある講堂は落ち着いた響きがする。リサイタルでは、子供向けに書かれた歌や、子供が主人公の歌、子供が登場する歌など、子供にまつわる様々な歌が、楽しいMCと共に披露された。
松井さんの歌は、どんな曲でもスッと心に入ってきて、清々しい心地よさをもたらす。それは色彩に富んだ清澄で美しい声の魅力と、親密で自然に心を揺さぶる表現、言葉の美しさなど、様々な要素が重なってもたらされるものだ。あるときは、母が子どもに物語を読み聞かせるように温かなハートで愛情たっぷりに、またあるときは夢物語の主人公になったようにスリリングに、或いは自信満々に、ときにはとろけるほど色っぽく… 松井さんの歌はシーンごとに千変万化に声の色を変え、装いを変え、極細の弱音から刺激的な強音まで自在に軽々と飛び回る。顔の表情や体の自然な動きも役者顔負けの豊かさで、松井さんの歌からは目も離せない。もうこれは、歌手というよりも「表現者」という言葉の方が相応しいと思えるほどだ。
松井さんはこのリサイタルのために、自ら歌詞の詳しい大意を作り、聴衆に配ってくれた。僕はあらかじめ対訳を用意していたが、それができなかった歌ではこの大意がとても役立った。歌が雄弁なので、大意だけでも今何を歌っているのかが手に取るようにわかったし、対訳が手元にある歌では、一つ一つの言葉がいかにその言葉に相応しく発せられ、言葉に命が灯されているかを感じ取れた。日本語の歌では、日本語の持つ独特の美しさを伝えてくれた。アーティストは、取り組む作品の隅々まで熟知し、揺るぎない表現手段を備えて演奏会に臨むのは当然ではあるが、その徹底ぶりには驚くばかり。
そんな風に作品に徹底的に対峙していることを忘れさせてくれるほど、歌うことがとにかく楽しくて仕方ないという様子で次々と素敵な歌を聴かせてくれ、時間を忘れて歌の世界に酔いしれ、松井さんがミューズのようにも思えた。松井亜希は、現代屈指のすごいアーティストだと、今夜のリサイタルで益々実感した。
歌を常に優しくエスコートした、タカギクラヴィア所蔵の小さめのスタインウエイによる山田さんの演奏もステキだった。山田さんは松井さんの影のように歌の表情を映し、また一心同体のように絡みつき、いつでも松井さんと一緒に歌っていた。明晰で強靭なタッチでアグレッシブに音楽を先導する場面もあり、ピアノのソロ作品では、そんなソリストとしての一面を聴くことも出来た。後半で演奏した武満の2作品は、昔NHKの「ピアノのおけいこ」のテーマ曲として使われていたと紹介されたが、この2曲は1979年度に講師を担当した井上直幸氏によるレッスンの教材として使われていたもので懐かしかった。
バッハ/ヨハネ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン)~2021.2.19 サントリーホール~
バッハ/マタイ受難曲(バッハ・コレギウム・ジャパン)~2020.8.3 東京オペラシティ~
鈴木雅明指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団(S:松井亜希)~2019.6.21 紀尾井ホール~
松井亜希 ソプラノリサイタル ~2018.3.10 ソフィアザール・サロン(駒込)~
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「おさかな」(詩:金子みすゞ)/「かなりや」(詩:西條八十)
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け