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2016年12月B定期(デュトワ指揮)

2016年12月06日 | N響公演の感想(~2016)
12月1日(木)シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団
《2016年12月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. プロコフィエフ/組曲「3つのオレンジへの恋」Op.33bis
2.ラヴェル/バレエ音楽「マ・メール・ロワ」
3.ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 Op.67「運命」

今夜のデュトワ/N響からは、これまでとは異なるタイプの気合いがビンビンと伝わってきた。デュトワは毎年B定期以外ではオペラを含む大作を持ってきて、気合い十分の名演が評判になるのに比べ、Bプロではいい演奏はあってもそこまで評判になることが少ない。今夜の演奏はプログラムこそB定期っぽかったが、とても熱かった。

プロコフィエフの冒頭からオケは大きなうねりとなり、一斉に掴みかかってくるような熱気をぶつけてきた。集中力がぎゅっと凝縮され、密度の濃い屈強な力強さを持ちながら、それが縦横無尽にしなやかに動き回る。打ち込んでくるパンチは熱くて重く、デュトワのイメージの爽快感とは異なるただならぬ深刻さで迫ってきた。

転じて次のラヴェルではがらりと趣を変え、実にデリケートでファンタジーに溢れる世界を描いた。プロコフィエフではステージからこぼれ落ちるほど大編成だったオケがぐっとコンパクトになり、ソロ楽器の妙技も映える。終曲の「妖精の園」では、メロディーがまるで無風のなかで霧がゆっくりと漂うようにゆったりと歌い、緩やかに呼吸していた。そして迎える一大クライマックスも、力の限り大音響で盛り上がるのではなく、ハッビーエンドを優しく見守るような穏やかさがあった。

前半で硬軟両方の面を聴かせたデュトワ/N響が、「運命」では「硬」を主体とした力みなぎる全体像に「軟」を織り混ぜ、しなやかで雄弁な迫真の演奏を聴かせた。演奏スタイルはピリオド奏法が盛んになる前に「正統的」と言われていたタイプの演奏で、デュトワらしいフランス的な色彩感や香りづけも敢えて封印しているかのように重心の低い、厳しいベートーヴェン像を提示してきた。こうしたスタイルの演奏が、今でもピリオド演奏と全く変わらない強いインパクトで迫ってくることを再認識した。

演奏全体がとても能動的で、さらにセカンド・ヴァイオリンやヴィオラなどの内声パートがとても果敢に挑みかかってきて、トゥッティでのテンションをグイグイと盛り立てる。そこに、デュトワらしい軽やかで柔らかな語り口の装飾的なフレーズも加わることで最後の仕上げもしっかり施され、完成度を一層高めていた。第4楽章では、堂々と華々しいフィナーレを築き、聴き手の気分も一気に頂点へと導かれた。今夜のコンサートマスターはゲストでロイヤル・フィルのコンサートマスターのダンカン・リデルが務めた。
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