facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

タリス・スコラーズ

2011年06月13日 | pocknのコンサート感想録2011
6月13日(月)ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ
~ スペインの音楽《ビクトリア没後400年記念》~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. ビクトリア/五旬祭の日が来たりし時
2. ビクトリア/聖金曜日のためのエレミアの哀歌
3. ビバンコ/わが愛する者はいばらの中のゆりのごとし
4. ビバンコ/マニフィカト
5. ビクトリア/レクイエム
【アンコール】
ロボ/わがハープは悲しみの音にかわり

タリス・スコラーズは、これまで何度となく聴いてきた僕にとってとても大切な声楽アンサンブル。4年ぶりとなる今回も、たぐい稀なる卓越した、美しく清澄な響きがホールをいっぱいに満たし、至福の愉悦にたっぷりと浸った。

古楽器オーケストラや、それと一緒に歌う合唱団は世界で数多く活躍しているが、バロック以前の、声楽的対位法で書かれたルネサンス時代の宗教声楽作品を演奏する団体はそれほど多くはないのではないだろうか。そんな中でタリス・スコラーズほど長く活動を続け、何よりこれほどのハイレベル集団は唯一無二と言ってもいい。

タリス・スコラーズは10人という、合唱を行うには必要最小限の人数によるアンサンブルが、東京オペラシティコンサートホールの3階席まで豊かに響き渡る。その響きは、磨きぬかれたシルバーに、金の装飾が節度とセンスをもって施されているといった感じ(決して金ピカではない)。そして、これが人の声か、と思うような純度の高さと奥行きの深さ。絵画で言えば、フラ・アンジェリコの明るさと透明感、実際にそんな絵があるかどうかわからないが、アンジェリコの絵に描かれた、ラッパを持った天使達の奏でる金管合奏の響きを想わせる音が聴こえてくるのは、彼らの奇跡的ともいえる純正調の唱和の技の賜であろう。

ルネサンス時代の宗教声楽曲は、後の時代の音楽のような劇的な変化はないが、言葉によって、或いはフレーズ(その後の時代のフレーズとは多少意味合いが異なるが)によって響きの色合いや密度は変化し、時々ハッとするような表情を見せるのもこの時代の音楽の魅力で、それはタリス・スコラーズだからこそ出せるニュアンスなのだろう。

けれど僕はこの時代の音楽についてそうした細かいところまでわかっているわけではないので、それがわかればきっとひとつひとつの表現について更に違った感じ方もできるのかも知れない。実際、4年前に聴いたのもビクトリアのミサだったことは、自分のブログの感想を読み返すまで忘れていた・・・

でもこの天上の響きにただただ身も心も委ね、至福の時を味わうのもひとつの楽しみ方だと思うし、満員の聴衆の多くは、そうした魅力に誘われて集まり、心を満たされて家路に着くのだろう。次の来日公演も、きっとまた出かけていくことと思う。

タリス・スコラーズ 2007.6 紀尾井ホール

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蓮の会《小劇場シリーズ》 "... | トップ | 学長と語ろうこんさ~と 宮... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2011」カテゴリの最新記事