9月22日(水)モディリアーニ弦楽四重奏団+アダム・ラルーム(Pf)
~シューマン・プロジェクト1842~
王子ホール
【曲目】
1. シューマン/弦楽四重奏曲第1番イ短調 Op.41-1
2. シューマン/弦楽四重奏曲第2番ヘ長調 Op.41-2
3. シューマン/ピアノ四重奏曲変ホ長調 Op.47
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【アンコール】
シューマン/ピアノ四重奏曲~第3楽章
ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)の常連カルテットとしておなじみのモディリアーニ弦楽四重奏団。独特の柔らかさや香りが魅力で、LFJでは何度も聴いてきた。それ以外に単独の演奏会も聴いた気がしていたが、今日が初のLFJ以外で聴く公演となった。ところが来日の少し前に、ファースト・ヴァイオリンのフィリップ・ベルナールが肩の故障で来日が出来なくなり、ギョーム・シュートルが代役で出演することになった。シュートルはイザイ弦楽四重奏団のメンバーとして活躍し、シューマンの演奏経験も豊富で、キャリアとしては申し分ないが、やはり正規メンバーで聴きたかった。
しかし、たっぷりと歌い、充実した良い響きが広がるのを聴いて、メンバーの結束力や演奏の完成度には何ら不安はないと確信。抒情味溢れるフレーズから決然としたフレーズへの移行など、アンサンブルとしての機動性もいい。節度のある豊かな表現力、躍動感、スタイリッシュな身のこなしなども光る。代役のシュートルは音もきれいだし、瑞々しい感性で引き締まった演奏を聴かせ、他の3人と自然に渡り合い、イニシアチブを取るべきところではしっかりと役目を果たしていた。他の3人の安定した結束があるので、安心してアンサンブルに入っていけるということもあるのだろう。
ただ、聴いているうちに、これら2曲でよく出てくる、同じフレーズの繰り返しがなぜかしつこく聴こえ、鼻についてきた。曲を聴く機会は多い方で、いつもはこんなに気にならなかったのだが… そう言えば、響きは決して悪くないが、モディリアーニSQを聴いていつも感じる、(何故か)東欧的な響きを思わせる、ノスタルジックな柔らかく温かな空気感がない。やはりいつもの4人が長年熟成してきた響きというものは、メンバーが一人欠けてしまうと出てこないのかも知れず、言い方は悪いがフィルター的機能が働かず、シューマンの語法的なクセがマイナスに聴こえてしまう、ということはあるのかも知れない。
その点、後半のピアノ四重奏曲は、メンバーでセカンドのロイック・リョーがベルナールの代わりを務めたことで、弦のメンバーは正規メンバーで構成されたためか、前半では伝わって来なかった「モディリアーニの音」が聴こえてきた。こうした感覚は、聴覚以外の要因も関係することは往々にしてあるが… それにしても、第3楽章の柔らかな抒情、香り高さはモディリアーニSQからいつも伝わってきて、心惹かれる音だった。とりわけ弱音で奏される楽章終盤は繊細の極み。彼岸の境地のような穏やかさと平安に満たされ、すっかり心酔。
他の楽章でも、ラルームの、機転の利いた瑞々しく冴え渡るピアノと弦のアンサンブルが、楽し気に戯れ、生き生きとしたやり取りを交わし、ひと時も気を逸らされることはなかった。第4楽章、見事な噛み合いで推進力を増し、スリリングに曲を締めた。普段はセカンドを担当するリョーだが、穏やかにではあるが、しっかりと存在感を発揮し、柔らかく美しい音色を奏で、このアンサンブルの個性を示していた。
モディリアーニ弦楽四重奏団/Vc:アンリ・ドマルケット ~LFJ 2014~(2014.5.3 東京国際フォーラム)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
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王子ホール
【曲目】
1. シューマン/弦楽四重奏曲第1番イ短調 Op.41-1
2. シューマン/弦楽四重奏曲第2番ヘ長調 Op.41-2
3. シューマン/ピアノ四重奏曲変ホ長調 Op.47
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【アンコール】
シューマン/ピアノ四重奏曲~第3楽章
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ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)の常連カルテットとしておなじみのモディリアーニ弦楽四重奏団。独特の柔らかさや香りが魅力で、LFJでは何度も聴いてきた。それ以外に単独の演奏会も聴いた気がしていたが、今日が初のLFJ以外で聴く公演となった。ところが来日の少し前に、ファースト・ヴァイオリンのフィリップ・ベルナールが肩の故障で来日が出来なくなり、ギョーム・シュートルが代役で出演することになった。シュートルはイザイ弦楽四重奏団のメンバーとして活躍し、シューマンの演奏経験も豊富で、キャリアとしては申し分ないが、やはり正規メンバーで聴きたかった。
しかし、たっぷりと歌い、充実した良い響きが広がるのを聴いて、メンバーの結束力や演奏の完成度には何ら不安はないと確信。抒情味溢れるフレーズから決然としたフレーズへの移行など、アンサンブルとしての機動性もいい。節度のある豊かな表現力、躍動感、スタイリッシュな身のこなしなども光る。代役のシュートルは音もきれいだし、瑞々しい感性で引き締まった演奏を聴かせ、他の3人と自然に渡り合い、イニシアチブを取るべきところではしっかりと役目を果たしていた。他の3人の安定した結束があるので、安心してアンサンブルに入っていけるということもあるのだろう。
ただ、聴いているうちに、これら2曲でよく出てくる、同じフレーズの繰り返しがなぜかしつこく聴こえ、鼻についてきた。曲を聴く機会は多い方で、いつもはこんなに気にならなかったのだが… そう言えば、響きは決して悪くないが、モディリアーニSQを聴いていつも感じる、(何故か)東欧的な響きを思わせる、ノスタルジックな柔らかく温かな空気感がない。やはりいつもの4人が長年熟成してきた響きというものは、メンバーが一人欠けてしまうと出てこないのかも知れず、言い方は悪いがフィルター的機能が働かず、シューマンの語法的なクセがマイナスに聴こえてしまう、ということはあるのかも知れない。
その点、後半のピアノ四重奏曲は、メンバーでセカンドのロイック・リョーがベルナールの代わりを務めたことで、弦のメンバーは正規メンバーで構成されたためか、前半では伝わって来なかった「モディリアーニの音」が聴こえてきた。こうした感覚は、聴覚以外の要因も関係することは往々にしてあるが… それにしても、第3楽章の柔らかな抒情、香り高さはモディリアーニSQからいつも伝わってきて、心惹かれる音だった。とりわけ弱音で奏される楽章終盤は繊細の極み。彼岸の境地のような穏やかさと平安に満たされ、すっかり心酔。
他の楽章でも、ラルームの、機転の利いた瑞々しく冴え渡るピアノと弦のアンサンブルが、楽し気に戯れ、生き生きとしたやり取りを交わし、ひと時も気を逸らされることはなかった。第4楽章、見事な噛み合いで推進力を増し、スリリングに曲を締めた。普段はセカンドを担当するリョーだが、穏やかにではあるが、しっかりと存在感を発揮し、柔らかく美しい音色を奏で、このアンサンブルの個性を示していた。
モディリアーニ弦楽四重奏団/Vc:アンリ・ドマルケット ~LFJ 2014~(2014.5.3 東京国際フォーラム)
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