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竹澤恭子 & 江口 玲 デュオリサイタル

2022年02月04日 | pocknのコンサート感想録2022
1月31日(月)竹澤恭子(Vn)/江口 玲(Pf)
~2022 都民芸術フェスティバル参加公演~
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.ドビュッシー/ヴァイオリン・ソナタ
2.サン=サーンス/ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ短調 Op.75
3.フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
【アンコール】
1.ショパン/ノクターン(遺作) 嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレシオーネ」
2.ドビュッシー/美しき夕暮れ


先週のN響公演は中止になってしまい、転んでもタダでは起きない僕は他の良さそうな演奏会を探して見つけたのがコレ。2020年に聴いたコンサートがとても感銘深く、またこのデュオを聴きたくなった。そして期待にたがわぬ素晴らしいデュオリサイタルとなった。

会場はほぼ満席だったが、当日券で中央右寄りの良い席が取れた。フランスものを3つ揃えた今夜の曲目だが、エスプリ的なシャレたイメージとは異なる、熱くて濃厚な演奏が繰り広げられた。

竹澤の弾くヴァイオリンにはある種のクセを感じる。それは鼻につくクセではなく、様々なエッセンスが混ざり合って熟成した香りと味わいという意味でのクセだ。竹澤はこの独特のクセを織り込んで濃厚な歌を聴かせ、大胆にダイナミックに攻めてくる。常にチャレンジ精神旺盛にアクティブに働きかけ、聴き手の心をグイグイ引き付ける姿勢からは、雄々しささえ感じる。かといって、荒々しい粗野なものとは異なり、音色は香り高く、語り口は研ぎ澄まされて美しい。まるで香油のような香り高さを湛え、エネルギーがみなぎっている。

竹澤のヴァイオリンを、みなぎる肉体のパフォーマンスに例えるなら、共演した江口のピアノは、そこを流れる血液のようで、両者は血肉となって躍動美を聴かせた。

江口が弾いたピアノは木目調のクラシカルな楽器。アンコールをやる前に楽器について説明してくれ、カーネギーホールのオープニング時に使われていたという1887年製スタインウェイ《ローズウッド》とのこと。2020年に紀尾井ホールで聴いた演奏会でも江口が弾いた楽器だ。雅やかで奥ゆかしい響きがする。但し、竹澤のアクティブな演奏に相応しい楽器かどうかは判然とせず、モダンピアノでも聴いてみたい気はした。

とは言え、2人の共演は稀有とも云える一体感で訴えてきた。とりわけインパクトが強かったのはサン=サーンスとフランクのソナタ。

サン=サーンスのソナタは全体を大きく捉えつつ歌に溢れ、雄弁にアピールしてきた。第4楽章にあたる終盤の息もつかせぬフレーズと、朗々と歌うフレーズとを行き来する様子には遊び戯れる楽しさがいっぱいで、ワクワクドキドキの連続だった。

フランクのソナタは、深い呼吸で朗々と伸びやかに歌い上げ、大きなスケール感を生み出す。ヴァイオリンとピアノのバトルを繰り返し、終楽章ではどこまでも突き進む推進力に圧倒され、エネルギー全開で圧巻のエンディングとなった。

「コロナの犠牲者のために」演奏されたアンコールのショパンの後、間髪入れずに客席から「ナイス!」のコール。ブラボーが禁止だからナイスにした?いつまでもブラボー禁止には疑問アリアリだが、もう少し静寂を味わいたかった。

竹澤恭子 & 江口 玲:ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ 2020.10.24 第一生命ホール
辻 彩奈 & 江口 玲 2021.5.3 ミューザ川崎シンフォニーホール
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第1番 (Vn:竹澤恭子) 2007.4.19 東京文化会館

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