12月19日(木)エリアフ・インバル 指揮 東京都交響楽団
~第762回 定期演奏会Aシリーズ~
東京文化会館
【曲目】
1.バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112
【アンコール】
ハンガリーの民謡
Vn:庄司紗矢香
2.バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」Op.11 Sz.48
ユーディト:イルディコ・コムロシ(MS)/青ひげ公:マルクス・アイヒェ(Bar)
1年2ヶ月ぶりに聴くインバル/都響の定期は、バルトークの名作が二つ並んだ。バイオリンコンチェルトでは庄司紗矢香のソロが冒頭からいつもながらの存在感を示した。音も感性も表現も、全てが研ぎ澄まされている。青々とした茎のようなしなやかさ、その茎を鋭い刃物でシャッと切り落としたときの切り口のような瑞々しさ、そしてひとつひとつのフレーズが美しい立ち姿を見せる。
音の姿もよければ、庄司さんの弾く姿もいい。無駄のない動きがフレーズごとにビシッと決まり、出てくる音楽と一体化している感じ。ブレが全くないために、曲中に出てくる微分音の変わり目も影が走るようにリアルな効果を表していたし、音楽全体の構成が明確に感じ取れる。とにかく颯爽としていて格好いいバルトーク。
プログラム後半の曲目が「青ひげ」だったので、この演奏会のチケットを買ったのだが、これも当たり。まず圧倒されたのが二人の歌手。ユーディト役のメゾのコムロシは、大きな体格にカラフルなコスチュームで情熱的でボリューム感たっぷりの歌を聴かせた。何かに取りつかれたような妖気はあまり感じられなかったが、「扉を開けて!」と懇願する迫力は青ひげ公の冷たい心を奮い立たせるようだった。
方や青ひげ公を歌ったバリトンのアイヒェは、冷徹で凄みを覗かせるこの役のキャラクターを見事に出していた。知的で巧妙な歌いまわしが、青ひげ公の不気味さと腹黒さを浮き立たせ、ボリュームある美しい声は全曲を通して絶対的な存在感を示していたが、ユーディトの懇願に抗しきれない場面で聴かせる人間臭さもこの歌手の持ち味で、表現力の懐の深さを感じた。
インバル/都響は熱のこもった集中力のある演奏で高いテンションを持続。振幅の大きな表現で鮮やかな情景描写にも長け、現実離れしたこの物語の世界をリアルに描写していた。金管や木管のソロも見事な腕前で、細かい表情づけでも雄弁。これにはインバルの力も大きいのだとは思うが、この指揮者に昔感じたほどの強烈な個性が感じられなかったのは、去年聴いたマーラーの「嘆きの歌」のときと同じ印象。
~第762回 定期演奏会Aシリーズ~
東京文化会館
【曲目】
1.バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112
【アンコール】
ハンガリーの民謡
Vn:庄司紗矢香
2.バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」Op.11 Sz.48
ユーディト:イルディコ・コムロシ(MS)/青ひげ公:マルクス・アイヒェ(Bar)
1年2ヶ月ぶりに聴くインバル/都響の定期は、バルトークの名作が二つ並んだ。バイオリンコンチェルトでは庄司紗矢香のソロが冒頭からいつもながらの存在感を示した。音も感性も表現も、全てが研ぎ澄まされている。青々とした茎のようなしなやかさ、その茎を鋭い刃物でシャッと切り落としたときの切り口のような瑞々しさ、そしてひとつひとつのフレーズが美しい立ち姿を見せる。
音の姿もよければ、庄司さんの弾く姿もいい。無駄のない動きがフレーズごとにビシッと決まり、出てくる音楽と一体化している感じ。ブレが全くないために、曲中に出てくる微分音の変わり目も影が走るようにリアルな効果を表していたし、音楽全体の構成が明確に感じ取れる。とにかく颯爽としていて格好いいバルトーク。
プログラム後半の曲目が「青ひげ」だったので、この演奏会のチケットを買ったのだが、これも当たり。まず圧倒されたのが二人の歌手。ユーディト役のメゾのコムロシは、大きな体格にカラフルなコスチュームで情熱的でボリューム感たっぷりの歌を聴かせた。何かに取りつかれたような妖気はあまり感じられなかったが、「扉を開けて!」と懇願する迫力は青ひげ公の冷たい心を奮い立たせるようだった。
方や青ひげ公を歌ったバリトンのアイヒェは、冷徹で凄みを覗かせるこの役のキャラクターを見事に出していた。知的で巧妙な歌いまわしが、青ひげ公の不気味さと腹黒さを浮き立たせ、ボリュームある美しい声は全曲を通して絶対的な存在感を示していたが、ユーディトの懇願に抗しきれない場面で聴かせる人間臭さもこの歌手の持ち味で、表現力の懐の深さを感じた。
インバル/都響は熱のこもった集中力のある演奏で高いテンションを持続。振幅の大きな表現で鮮やかな情景描写にも長け、現実離れしたこの物語の世界をリアルに描写していた。金管や木管のソロも見事な腕前で、細かい表情づけでも雄弁。これにはインバルの力も大きいのだとは思うが、この指揮者に昔感じたほどの強烈な個性が感じられなかったのは、去年聴いたマーラーの「嘆きの歌」のときと同じ印象。