4月21日(金)スティーヴ・ライヒ《18人の音楽家のための音楽》
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
1.ライヒ/ダブル・セクステット(2007)
2.ライヒ/トラベラーズ・プレイヤー(2020)[日本初演]
3.ライヒ/18人の音楽家のための音楽(1974~76)
【演奏】
コリン・カリー(指揮&Perc) /コリン・カリー・グループ/シナジー・ヴォーカルズ
ライヒの音楽を演奏するスーパースペシャリスト集団とも云える「コリン・カリー・グループ」による、スティーヴ・ライヒのコンサートを聴いた。どの曲でもライヒならではの異次元を堪能した。
最初の「ダブル・セクステット」は、文字通り2グループの六重奏のための音楽。ライヒ特有の軽快な変拍子のリズムが繰り返されるなか、定期的に起こる転調を経ながら色や光やテクスチャが移り変わり、景色が変わって行く。その中で貫かれる明解な響きとリズムが快楽物質を放ち、陶酔感が高まっていった。ノンヴィブラートで伸ばす弦の音色が、バンドネオンの音みたいに聴こえるのも不思議な感覚だった。最後は音高を高めて一気に駆け抜け、客席からは歓声が飛んだ。一糸乱れぬアンサンブルで颯爽と決めるコリン・カリー・グループの演奏あってこその高まりだろう。何食わぬ顔で平然と演奏しているように見えるのもスゴイ。
次は声楽が中心の最近作「トラベラーズ・プレイヤー」。これはミニマルのライヒというイメージとは異なる、中世の4度や5度音程を基調とした音楽とか、ペルトの音楽に通じる静謐感に支配された祈りの音楽。4人のヴォーカルのノンヴィブラートによる透明な声が、果てしない天空を旅して、それに他の楽器が付き従って行く。ここでも弦楽器は音を伸ばして雅楽の笙のような音色を漂わせ、神聖な儀式のなかで浄化された気分になった。ライヒのイメージとは異なりながら、大きな循環の波に身を任せ、異次元を体験できるのはライヒ的。
最後は大作「18人の音楽家のための音楽」。とにかく圧巻だった!前半に演奏した性格が相反する2つの作品の特徴を併せ持ったように多元的な音楽。前半で指揮をしていたコリン・カリーもパーカスで演奏に加わり、18人による壮大な音絵巻を繰り広げた。
巨大な輪が回転して、振動で唸りを上げたり、軋む音が聴こえたり、電気的な処理はしていないはずなのに、電気的なノイズやハウリングのようなエコーで耳鳴りしているような錯覚を覚えたり… わずかなパーツや音の変化、引いては寄せる音の波動の繰り返しで未知の音響を作り出し、それが様々なシーンを投影していった。
一人一人の演奏の様子から、誰がどの楽器でどんな音を出しているかはわかるが、生身の人間が演奏しているとは思えないほどの精緻で緻密な、一見機械的な音響と、人間ならではの生命の鼓動が一体となった音の渦中に身を置いていたら、宇宙空間へ放たれるような得も言われぬ陶酔感へ引き込まれて行った。これこそ、ライブでしか味わえない体験。
終演後はポップスのライブの乗りで一斉のスタオベ、歓声と口笛。盛り上がるのはいいが、演奏が終わって演奏者がまだ静止しているときに拍手が始まってしまったのは残念だった。静寂のなかにもう少し身を置いて余韻を味わいたかった。
スティーヴ・ライヒ 80th ANNIVERSARY 《テヒリーム》 ~2017.3.1 東京オペラシティ~
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最新アップロード:「かなりや」(詩:西條八十)
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コリン・カリー(指揮&Perc) /コリン・カリー・グループ/シナジー・ヴォーカルズ
ライヒの音楽を演奏するスーパースペシャリスト集団とも云える「コリン・カリー・グループ」による、スティーヴ・ライヒのコンサートを聴いた。どの曲でもライヒならではの異次元を堪能した。
最初の「ダブル・セクステット」は、文字通り2グループの六重奏のための音楽。ライヒ特有の軽快な変拍子のリズムが繰り返されるなか、定期的に起こる転調を経ながら色や光やテクスチャが移り変わり、景色が変わって行く。その中で貫かれる明解な響きとリズムが快楽物質を放ち、陶酔感が高まっていった。ノンヴィブラートで伸ばす弦の音色が、バンドネオンの音みたいに聴こえるのも不思議な感覚だった。最後は音高を高めて一気に駆け抜け、客席からは歓声が飛んだ。一糸乱れぬアンサンブルで颯爽と決めるコリン・カリー・グループの演奏あってこその高まりだろう。何食わぬ顔で平然と演奏しているように見えるのもスゴイ。
次は声楽が中心の最近作「トラベラーズ・プレイヤー」。これはミニマルのライヒというイメージとは異なる、中世の4度や5度音程を基調とした音楽とか、ペルトの音楽に通じる静謐感に支配された祈りの音楽。4人のヴォーカルのノンヴィブラートによる透明な声が、果てしない天空を旅して、それに他の楽器が付き従って行く。ここでも弦楽器は音を伸ばして雅楽の笙のような音色を漂わせ、神聖な儀式のなかで浄化された気分になった。ライヒのイメージとは異なりながら、大きな循環の波に身を任せ、異次元を体験できるのはライヒ的。
最後は大作「18人の音楽家のための音楽」。とにかく圧巻だった!前半に演奏した性格が相反する2つの作品の特徴を併せ持ったように多元的な音楽。前半で指揮をしていたコリン・カリーもパーカスで演奏に加わり、18人による壮大な音絵巻を繰り広げた。
巨大な輪が回転して、振動で唸りを上げたり、軋む音が聴こえたり、電気的な処理はしていないはずなのに、電気的なノイズやハウリングのようなエコーで耳鳴りしているような錯覚を覚えたり… わずかなパーツや音の変化、引いては寄せる音の波動の繰り返しで未知の音響を作り出し、それが様々なシーンを投影していった。
一人一人の演奏の様子から、誰がどの楽器でどんな音を出しているかはわかるが、生身の人間が演奏しているとは思えないほどの精緻で緻密な、一見機械的な音響と、人間ならではの生命の鼓動が一体となった音の渦中に身を置いていたら、宇宙空間へ放たれるような得も言われぬ陶酔感へ引き込まれて行った。これこそ、ライブでしか味わえない体験。
終演後はポップスのライブの乗りで一斉のスタオベ、歓声と口笛。盛り上がるのはいいが、演奏が終わって演奏者がまだ静止しているときに拍手が始まってしまったのは残念だった。静寂のなかにもう少し身を置いて余韻を味わいたかった。
スティーヴ・ライヒ 80th ANNIVERSARY 《テヒリーム》 ~2017.3.1 東京オペラシティ~
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