山崎貴監督の「三丁目の夕日」の第3作「ALWAYS 三丁目の夕日'64」をみた。1作(2005)の時代設定は東京タワーができた1958年、2作(2007)が59年だったが、3作ではいっきょに5年後の64年になる。一平と淳之介は高校1年になり、一平はエレキバンドに入り、淳之介は密かにSF小説を書いている。
この時代設定からいくつか大きな問題が生じる。この映画のファンは、昭和30年代への追憶となつかしさで見にきている。しかしこの映画に出てくるエレキギター、加山雄三、自販機のコカコーラ、新幹線、ひょっこりひょうたん島などはたしかに昭和39年に存在したが、40年代の印象が強い。
また5年の時の流れがあるから仕方がないが、子どもでなく高校生が中心にいると違うジャンルの映画にみえる。たとえば第1作は「泥の河」(1981 小栗康平)の都会版として見た。子どもを中心に据えた映画は、古くは「生まれてはみたけれど」「お早う」(小津安二郎)、バブルの時期の「ノーライフキング 」(1989 市川準) など大人の世界と対立する独立した世界としてうまくまとまる。ところが登場人物が高校生になると青春恋愛映画になってしまう。「男はつらいよ」で寅さんが年をとり、満男が成長していったようなものだ。
ストーリーとしては、六ちゃんの恋愛と結婚、淳之介が小説家を志望することが軸になっている。しかし六ちゃんの恋愛にしても淳之介と竜之介の葛藤にしても、シナリオに深みがなく説得力に欠ける。出来はもうひとつだった。しいてあげれば菊池健太郎の無料診療の部分はなかなかよかった。なおシナリオそのもののまとまりはよい。
この映画には、マンガの原作が12話分ある。「三丁目の夕日'64 映画化特別編」というタイトルで売っている。松本周辺に里帰りする話は、東京では駄菓子屋のオヤジなのに大作家として錦を飾る話になっていた。往復は蒸気機関車だ。淳之介は肝試しに飛び入りで参加し、酔った竜之介は天の川を大蛇と見間違える。これでこそ三丁目の世界だ。
ライバル緑川も登場するが、それは淳之介ではなく重い病で薄命の美女だった。
縁談は、六ちゃんではなく看護師と医師の話で、だいたい同じストーリーだ。ただ新婚旅行は箱根に3泊4日だった。このほうが「三丁目」らしい。
なお小道具などのディテールへのこだわりは前2作同様感心するところが大きかった。たとえばゴム飛行機、黒電話、旧式の電話ボックス、出版社のたぶん湿式のコピー機、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」、セカイチョーやビスコの捨て看板やのぼり旗など、集めるだけでも大変なものもあったと思われるが、映画のなかで活きていた。髪型やファッションもたしかにこんなスタイルだったと思う。
役者は、前2作でキャラクターが確立している堤真一(鈴木則文)、薬師丸ひろ子(トモエ)、吉岡秀隆(茶川竜之介)、小雪(ヒロミ)、堀北真希(星野六子)、三浦友和(宅間史郎)、もたいまさこ(大田キン)はそれぞれイメージどおりに好演していた。なかでも薬師丸ひろ子がしっかりものの母親役をじつにいい感じで演じていた。小じわをメイクでつくって山崎貴らしい演出だった。
その他、明治の男を演じた米倉斉加年とその世話をする遠縁の高畑淳子もいい味を出していた。寅さん映画では田舎のシーンが必ず登場するが、志村喬、松村達雄、三船敏郎らと同等の重みを出していた。また正司照枝(産婆)、神戸浩(郵便配達)も存在感があった。正司照枝は連続ドラマ「カーネーション」でも矍鑠(かくしゃく)とした祖母役をやっていたがさらに今後を期待したい。また神戸浩はわたくしにとっては彗星86のときの印象が強い。
わたくしはリアル3D映画をはじめてみた。スター・ウォーズの3Dの予告編はたしかに自分に向かって突進してくるようで迫力があった。しかし「3丁目の夕日」のような日常のくらしを描くほのぼのとした映画で効果があるのかどうかやや疑問だった。昨年8月に「東京の交通100年博」の会場で、この映画のことを知った。それで第1作のように迫力ある動く都電をみたいと思ったのが、2Dでなく3Dを選んだ理由である。しかしそれははじめのほうに少し出てきただけだった。
乗り物では、むしろ2回出てきた電車の車窓風景で3Dの効果があった。1回は竜之介が故郷・松本との往復に使った電車、もう1回は六子夫妻が新婚旅行で乗った新幹線「ひかり」の浜名湖付近の映像である。窓から見える後ろへ流れる風景、これはリアルだった。
また日常見ないような角度からの光景、たとえば地上3mくらいの屋根の高さから小鳥の目で出演者たちを見下ろすとか、東京タワーの頂上3mくらい上から地上の風景を見下ろすシーン?も3Dの効果が高かった。しかも静止画でなく動画なので迫力がある。
とくに手前側、目の前2m以内が迫力がある。たとえばゴム飛行機が自分めがけて飛んできたり、赤とんぼが飛び回る風景はたしかに迫力があった。笑えるシーンとしては、いつものように堤が大魔神のように怒り、髪が逆立つシーンも3Dでいっそう迫力があった。
サングラスのように暗いメガネをかけるといっそう暗くなったので、どうかと思ったが、エンタテインメント映画に3Dは必須とまでいかなくても、いろんな効果を上げられそうな可能性を感じた。
この時代設定からいくつか大きな問題が生じる。この映画のファンは、昭和30年代への追憶となつかしさで見にきている。しかしこの映画に出てくるエレキギター、加山雄三、自販機のコカコーラ、新幹線、ひょっこりひょうたん島などはたしかに昭和39年に存在したが、40年代の印象が強い。
また5年の時の流れがあるから仕方がないが、子どもでなく高校生が中心にいると違うジャンルの映画にみえる。たとえば第1作は「泥の河」(1981 小栗康平)の都会版として見た。子どもを中心に据えた映画は、古くは「生まれてはみたけれど」「お早う」(小津安二郎)、バブルの時期の「ノーライフキング 」(1989 市川準) など大人の世界と対立する独立した世界としてうまくまとまる。ところが登場人物が高校生になると青春恋愛映画になってしまう。「男はつらいよ」で寅さんが年をとり、満男が成長していったようなものだ。
ストーリーとしては、六ちゃんの恋愛と結婚、淳之介が小説家を志望することが軸になっている。しかし六ちゃんの恋愛にしても淳之介と竜之介の葛藤にしても、シナリオに深みがなく説得力に欠ける。出来はもうひとつだった。しいてあげれば菊池健太郎の無料診療の部分はなかなかよかった。なおシナリオそのもののまとまりはよい。
この映画には、マンガの原作が12話分ある。「三丁目の夕日'64 映画化特別編」というタイトルで売っている。松本周辺に里帰りする話は、東京では駄菓子屋のオヤジなのに大作家として錦を飾る話になっていた。往復は蒸気機関車だ。淳之介は肝試しに飛び入りで参加し、酔った竜之介は天の川を大蛇と見間違える。これでこそ三丁目の世界だ。
ライバル緑川も登場するが、それは淳之介ではなく重い病で薄命の美女だった。
縁談は、六ちゃんではなく看護師と医師の話で、だいたい同じストーリーだ。ただ新婚旅行は箱根に3泊4日だった。このほうが「三丁目」らしい。
なお小道具などのディテールへのこだわりは前2作同様感心するところが大きかった。たとえばゴム飛行機、黒電話、旧式の電話ボックス、出版社のたぶん湿式のコピー機、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」、セカイチョーやビスコの捨て看板やのぼり旗など、集めるだけでも大変なものもあったと思われるが、映画のなかで活きていた。髪型やファッションもたしかにこんなスタイルだったと思う。
役者は、前2作でキャラクターが確立している堤真一(鈴木則文)、薬師丸ひろ子(トモエ)、吉岡秀隆(茶川竜之介)、小雪(ヒロミ)、堀北真希(星野六子)、三浦友和(宅間史郎)、もたいまさこ(大田キン)はそれぞれイメージどおりに好演していた。なかでも薬師丸ひろ子がしっかりものの母親役をじつにいい感じで演じていた。小じわをメイクでつくって山崎貴らしい演出だった。
その他、明治の男を演じた米倉斉加年とその世話をする遠縁の高畑淳子もいい味を出していた。寅さん映画では田舎のシーンが必ず登場するが、志村喬、松村達雄、三船敏郎らと同等の重みを出していた。また正司照枝(産婆)、神戸浩(郵便配達)も存在感があった。正司照枝は連続ドラマ「カーネーション」でも矍鑠(かくしゃく)とした祖母役をやっていたがさらに今後を期待したい。また神戸浩はわたくしにとっては彗星86のときの印象が強い。
わたくしはリアル3D映画をはじめてみた。スター・ウォーズの3Dの予告編はたしかに自分に向かって突進してくるようで迫力があった。しかし「3丁目の夕日」のような日常のくらしを描くほのぼのとした映画で効果があるのかどうかやや疑問だった。昨年8月に「東京の交通100年博」の会場で、この映画のことを知った。それで第1作のように迫力ある動く都電をみたいと思ったのが、2Dでなく3Dを選んだ理由である。しかしそれははじめのほうに少し出てきただけだった。
乗り物では、むしろ2回出てきた電車の車窓風景で3Dの効果があった。1回は竜之介が故郷・松本との往復に使った電車、もう1回は六子夫妻が新婚旅行で乗った新幹線「ひかり」の浜名湖付近の映像である。窓から見える後ろへ流れる風景、これはリアルだった。
また日常見ないような角度からの光景、たとえば地上3mくらいの屋根の高さから小鳥の目で出演者たちを見下ろすとか、東京タワーの頂上3mくらい上から地上の風景を見下ろすシーン?も3Dの効果が高かった。しかも静止画でなく動画なので迫力がある。
とくに手前側、目の前2m以内が迫力がある。たとえばゴム飛行機が自分めがけて飛んできたり、赤とんぼが飛び回る風景はたしかに迫力があった。笑えるシーンとしては、いつものように堤が大魔神のように怒り、髪が逆立つシーンも3Dでいっそう迫力があった。
サングラスのように暗いメガネをかけるといっそう暗くなったので、どうかと思ったが、エンタテインメント映画に3Dは必須とまでいかなくても、いろんな効果を上げられそうな可能性を感じた。