10月6日(土)午後四谷区民ホールでFORUM90の「響かせあおう死刑廃止の声2012」が開催された。10月10日は世界死刑廃止デーなので、10日前後に毎年集会が開催される。
いまや世界の死刑廃止国は71%140か国に達した。さらに10年以上死刑執行をしていない「事実上の廃止国」が35か国ある。また今年は国連で4回目の死刑執行停止決議が採択される。
それなのに日本ではほんの1か月前(9月27日)、松田幸則さん(福岡)、江藤幸子さん(仙台)の2人が執行された。2か月連続の執行は異例の事態である。そして10月24日滝実衆院議員が法相に再任された。
この日の集会は、パネルディスカッションとシンポジウムから成っていた。わたくしはパネルディスカッションの白石草さんのお話に関心があったのでそれを中心に報告する。
パネルディスカッション「原発を考え、死刑を考える」のパネリストは、神田香織さん(講談師)、山本太郎さん(俳優)、白石草(はじめ)さん(Our Planet-TV代表理事)の3人、司会は安田好弘さん(弁護士)だった。神田さんは「はだしのゲン」で反原爆、「チェルノブイリの祈り」で反原発、林真須美死刑囚を題材にした「シルエットロマンスを聴きながら」で反死刑を訴える。そしていわき出身ということもあり、2011年10月音楽・演劇など文化活動でネットを広げるNPO法人ふくしま支援・人と文化ネットワークを立ち上げた。
俳優の山本太郎さんは、車いすで登壇した。肉離れを起こしたそうだ。山本さんは3・11までは社会的な問題に口を出さないようにしていた。東電関係者は死刑にし、死んでほしいと思っていた。しかし安田弁護士をモデルにした「死刑弁護人」(東海テレビ)のナレーションを担当し「責任ある立場の人には生きて償ってもらう。同じような事故を起こさないためには死刑はないほうがよい」と考えが変わったという。死刑と原発の共通点は弱い人へのイジメ、押し付けだ。
白石草さんも「責任を取るには命しかないのか。その人なりに命以外で償ってもらうほうがよい。死んでもらってはかえって困る。生きている限り第一原発周辺で働いてもらったほうがよい」と思うと述べた。
安田 情報発信がいかに運動の力になるかという点について話し合いたい。
白石 電波の使用に関し、日本の規制は他の国に比べ厳しい。国家が直接管理しているのは、日本、北朝鮮、中国の3国で、期せずして数少ない死刑存置国だ。アメリカはFCCが管理しているが、その理由は国家が管理すると言論を統制する結果になるからだ。ドイツでは受信料の2%が市民のテレビ局(オープンチャンネル)に配布される。
安田 インターネットなどでネットワークを広げられないものか
白石 わたしもネットを10年ほど使い続けた。しかし限界に気がついた。たとえば福島ではネットの普及率は3割だ。シングルマザーは携帯メールは使うがそれどまりだ。そうすると情報格差ができてしまう。
テレビはデジタル化移行で空いたチャンネルができている。ぜひ市民に開放してほしい。回路をどう増やすかが問題だ。
韓国のKBSでは週に1時間市民枠がある。ニューヨークではタイムワーナーがスポンサーとなり4つの市民チャンネルを開放している。ひとつはカルチャー、ひとつはミュージック、ひとつは宗教、そして社会問題だ。審査基準というものはなく、原則早い者勝ちだ。ただし宣伝やコマーシャルだけは許されない。
今年10月からNHKの受信料が7%下がった。あと3%下げる必要がある。その分は市民に使えばよい。何百億もの金額になるのでかなり潤沢に使える。
神田 ぜひそうしてほしい。どうすれば実現できるのか。
白石 NHKの場合は経営委員会で決めればすむ。しかし基本は世論だ。わたしたちは全員NHKのオーナーなのだから。
神田 1日3分でも5分でも被災地の声を入れてほしい。
白石 死刑なり原発なり、一面の意見しか伝えられないと、知らないので他者に対する想像力を働かせられない。そうするとたとえば生活保護問題のように、バッシングが生まれ差別につながっていく。多様な意見をどう確保するかが重要だ。多様な当事者が多様な意見を発表したほうが社会が安定する。発言の敷居を低くすることが課題だ。
山本 われわれは切り捨てられ、汚染食品を食べさせられ被爆が強要されている。日本の国に住む全員が一種の死刑囚のようなものだ。命を脅かされ死んでもなんの問題もないような扱いを受けている。この状況を変えるには多くの人に気づいてもらう必要がある。気づかなければ真綿で首を絞めるように殺されるだけだ。しかし希望はある。今日参加されている皆さんのような存在だ。
神田 白石さんがおっしゃるようにメディアを変え、市民のメディアを手にし本当の情報を流し、安心して生きていける社会にしよう。
白石 山本さんのように原発事故をきっかけに社会問題に覚醒した人は多い。次の山本さんを探す活動、新しい人を開拓しスカウトすることが世論の形成につながる。それが次の一歩となる。
安田 原発をなくすことは死刑をなくすことにつながる。本質は、生きる権利を社会全体あるいは国家が保障することだ。
このあと大道寺幸子基金の発表がシンポジウム形式で行われた。選考委員は、池田浩士、加賀乙彦、香山リカ、川村湊、北川フラム、坂上香、太田昌国の各氏だった。今年はA4用紙25枚をつないだ大作の絵画や原稿用紙700枚とか380枚の力作の応募があったそうだ。
☆このあと新宿駅を経て代々木第三児童遊園まで5列縦隊のデモを行った。
「私たちは死刑制度の廃止を訴えて歩いています。日本は今年すでに7名を処刑しました。・・・法務大臣は死刑執行するな! 国家による殺人をやめろ! 日本の死刑を廃止しよう! 世界の死刑を廃止しよう!」
反天連のデモなどに比べて警官の妨害はほとんどなかった。
☆この集会全体がIWJのユーストリームにアップされている(このサイト)。
いまや世界の死刑廃止国は71%140か国に達した。さらに10年以上死刑執行をしていない「事実上の廃止国」が35か国ある。また今年は国連で4回目の死刑執行停止決議が採択される。
それなのに日本ではほんの1か月前(9月27日)、松田幸則さん(福岡)、江藤幸子さん(仙台)の2人が執行された。2か月連続の執行は異例の事態である。そして10月24日滝実衆院議員が法相に再任された。
この日の集会は、パネルディスカッションとシンポジウムから成っていた。わたくしはパネルディスカッションの白石草さんのお話に関心があったのでそれを中心に報告する。
パネルディスカッション「原発を考え、死刑を考える」のパネリストは、神田香織さん(講談師)、山本太郎さん(俳優)、白石草(はじめ)さん(Our Planet-TV代表理事)の3人、司会は安田好弘さん(弁護士)だった。神田さんは「はだしのゲン」で反原爆、「チェルノブイリの祈り」で反原発、林真須美死刑囚を題材にした「シルエットロマンスを聴きながら」で反死刑を訴える。そしていわき出身ということもあり、2011年10月音楽・演劇など文化活動でネットを広げるNPO法人ふくしま支援・人と文化ネットワークを立ち上げた。
俳優の山本太郎さんは、車いすで登壇した。肉離れを起こしたそうだ。山本さんは3・11までは社会的な問題に口を出さないようにしていた。東電関係者は死刑にし、死んでほしいと思っていた。しかし安田弁護士をモデルにした「死刑弁護人」(東海テレビ)のナレーションを担当し「責任ある立場の人には生きて償ってもらう。同じような事故を起こさないためには死刑はないほうがよい」と考えが変わったという。死刑と原発の共通点は弱い人へのイジメ、押し付けだ。
白石草さんも「責任を取るには命しかないのか。その人なりに命以外で償ってもらうほうがよい。死んでもらってはかえって困る。生きている限り第一原発周辺で働いてもらったほうがよい」と思うと述べた。
安田 情報発信がいかに運動の力になるかという点について話し合いたい。
白石 電波の使用に関し、日本の規制は他の国に比べ厳しい。国家が直接管理しているのは、日本、北朝鮮、中国の3国で、期せずして数少ない死刑存置国だ。アメリカはFCCが管理しているが、その理由は国家が管理すると言論を統制する結果になるからだ。ドイツでは受信料の2%が市民のテレビ局(オープンチャンネル)に配布される。
安田 インターネットなどでネットワークを広げられないものか
白石 わたしもネットを10年ほど使い続けた。しかし限界に気がついた。たとえば福島ではネットの普及率は3割だ。シングルマザーは携帯メールは使うがそれどまりだ。そうすると情報格差ができてしまう。
テレビはデジタル化移行で空いたチャンネルができている。ぜひ市民に開放してほしい。回路をどう増やすかが問題だ。
韓国のKBSでは週に1時間市民枠がある。ニューヨークではタイムワーナーがスポンサーとなり4つの市民チャンネルを開放している。ひとつはカルチャー、ひとつはミュージック、ひとつは宗教、そして社会問題だ。審査基準というものはなく、原則早い者勝ちだ。ただし宣伝やコマーシャルだけは許されない。
今年10月からNHKの受信料が7%下がった。あと3%下げる必要がある。その分は市民に使えばよい。何百億もの金額になるのでかなり潤沢に使える。
神田 ぜひそうしてほしい。どうすれば実現できるのか。
白石 NHKの場合は経営委員会で決めればすむ。しかし基本は世論だ。わたしたちは全員NHKのオーナーなのだから。
神田 1日3分でも5分でも被災地の声を入れてほしい。
白石 死刑なり原発なり、一面の意見しか伝えられないと、知らないので他者に対する想像力を働かせられない。そうするとたとえば生活保護問題のように、バッシングが生まれ差別につながっていく。多様な意見をどう確保するかが重要だ。多様な当事者が多様な意見を発表したほうが社会が安定する。発言の敷居を低くすることが課題だ。
山本 われわれは切り捨てられ、汚染食品を食べさせられ被爆が強要されている。日本の国に住む全員が一種の死刑囚のようなものだ。命を脅かされ死んでもなんの問題もないような扱いを受けている。この状況を変えるには多くの人に気づいてもらう必要がある。気づかなければ真綿で首を絞めるように殺されるだけだ。しかし希望はある。今日参加されている皆さんのような存在だ。
神田 白石さんがおっしゃるようにメディアを変え、市民のメディアを手にし本当の情報を流し、安心して生きていける社会にしよう。
白石 山本さんのように原発事故をきっかけに社会問題に覚醒した人は多い。次の山本さんを探す活動、新しい人を開拓しスカウトすることが世論の形成につながる。それが次の一歩となる。
安田 原発をなくすことは死刑をなくすことにつながる。本質は、生きる権利を社会全体あるいは国家が保障することだ。
このあと大道寺幸子基金の発表がシンポジウム形式で行われた。選考委員は、池田浩士、加賀乙彦、香山リカ、川村湊、北川フラム、坂上香、太田昌国の各氏だった。今年はA4用紙25枚をつないだ大作の絵画や原稿用紙700枚とか380枚の力作の応募があったそうだ。
☆このあと新宿駅を経て代々木第三児童遊園まで5列縦隊のデモを行った。
「私たちは死刑制度の廃止を訴えて歩いています。日本は今年すでに7名を処刑しました。・・・法務大臣は死刑執行するな! 国家による殺人をやめろ! 日本の死刑を廃止しよう! 世界の死刑を廃止しよう!」
反天連のデモなどに比べて警官の妨害はほとんどなかった。
☆この集会全体がIWJのユーストリームにアップされている(このサイト)。