「流星」
高等学校の学生の頃、日本海の砂丘の上で
ひとりマントに身を包み、仰向けに横たわって
星の流れるのを見たことがある。
十一月の凍った星座から、一條の青光をひらめ
かし
忽焉とかき消えたその星の孤独な所行ほど
強く私の青春の魂をゆり動かしたものはなかった。
それから半世紀、命あって、若き日と同じように、十一月の日本海の砂丘の上に横たわって
長く尾を曳いて疾走する星を見る。
併し心うたれるのは、その孤独な所行ではなく
ひとり恒星群から、脱落し、天体を落下する星というものの終焉のみごとさ、そのおどろくべき清潔さであった。
井上靖
高等学校の学生の頃、日本海の砂丘の上で
ひとりマントに身を包み、仰向けに横たわって
星の流れるのを見たことがある。
十一月の凍った星座から、一條の青光をひらめ
かし
忽焉とかき消えたその星の孤独な所行ほど
強く私の青春の魂をゆり動かしたものはなかった。
それから半世紀、命あって、若き日と同じように、十一月の日本海の砂丘の上に横たわって
長く尾を曳いて疾走する星を見る。
併し心うたれるのは、その孤独な所行ではなく
ひとり恒星群から、脱落し、天体を落下する星というものの終焉のみごとさ、そのおどろくべき清潔さであった。
井上靖
内灘砂丘までは歩いたのか、それとも浅電に乗ったのか?
井上靖の高等学校は昭和2〜5年。
浅電
浅野川線は、大正14年の開業。石川県金沢市の北鉄金沢駅から同県河北郡内灘町の内灘駅間を結ぶ北陸鉄道の鉄道路線。