鍛冶屋。さんが色々書かれていますが、私自身MMTにそれ程詳しく無く、さらに経済にもそれ程詳しくありませんが、一応、私なりの考え方を。(ミクロとマクロをごちゃ混ぜにするなとお叱りを承知で書きます)
■ 通貨発行は納税によって国庫に還元するから財政破綻はあり得ない? ■
MMT系の方は「通貨発行権のある統合政府において、自国通貨建ての国債はいくらでも発行できる」という主張します。確かに金利をゼロに固定出来れば可能ですし、今の日本はそうなっている。
これに対して「為替が下落してインフレ率が上昇する(通貨の価値が棄損する)」と私は三橋教批判で10年以上書き続けていますが、MMT系の方々は、「円の本当の需要は円を使い納税する日本人によって支えられるから、通貨の価値は失われない」と反論します。「通貨は国債発行によって生まれるが、一方でそれは納税とし国庫に還流するから財政の均衡は保たれる」と主張する。
■ 通貨は発行された後、様々な経路を通って流通する ■
通貨は発行された後、実際には様々な場所に偏在します。
基本的には貧乏人から金持ちの手に渡り、預金や投資によって資産市場で運用される。金利の低下した日本では円は為替市場でドルに替えられて(円売りドル買い)外貨で運用される。海外市場が順調な時は、適当な金利を稼いで、所得収支が黒字化し、納税にもいくばくかのメリットがある。為替市場は円売りドル買いが続くので円安傾向が続きます。
一方、世界的なバブル崩壊などが起きて海外市場が暴落すると、日本の海外投資は大きく棄損します。日本の金融機関や投資家は慌てて海外資産を売却して円に資金を戻すので「円買いドル売り」が発生して、為替が大きく円だかに振れます。
簡略化すると 100円を1ドルで海外投資 → 暴落で0.5ドルで売却 → 円高で30円に目減り
■ あれ、70円は何処に行ったの?? ■
これ私も不思議なのですが、多分「強い通貨は買われる」の法則で、一時的に為替市場にプールされているのでは無いか。これは安くなったドルの価値保存の意味も兼ねています。
しかし、しばらくすると日本国内は資産市場の損失によって不景気になるので、緩和政策が始まり円が下落する。この時点で為替市場では円売りドル買いが加速するので、円安になります。
バブル崩壊、リーマンショックと、だいたい同じ道を辿っています。
注目するべきは、資産市場と為替市場が大量な円やドルをトラップしているという点。これに民間の信用創造と信用収縮が加わるので、実査にはこれ程単純ではありませんが、円を大量に発行したにも関わらず、円安で物価が上昇して、一方で日本人が使えるお金が目減りしています。
これが777さんが書かれた金融緩和によるデフレの正体では無いか。金融緩和をして国民にお金を配っても、貧乏人の手元には残らず、さらにはバブル崩壊によって雇用まで失われる。長期的には経済は冷え込むが、目先ではインフレが進行して、長短金利が逆転して逆イールドカーブが発生する。
投資は高い長期金利を、安い短期金利の差で奪い取るゲームですから、長短金利が逆転すると市場は崩壊する。
■ 会計学的な処理では「偏在」は存在しない? ■
MMT系の人達は、「海外でのお金の流れは相殺されるので考えなくて良い」「民間の信用創造はプラスマイナスゼロ」と片付けてしまいますが、それこそ机上の話であって、実際の経済では、ここら辺の影響が非常に大きい。むしろ、相場や金利は「偏在」によって生まれるので、偏在を無視するMMT系の理論は偏在が大きくなると破綻する。インフレ率の上昇も偏在の結果だが、偏在を認めないMMTでは対処が出来ない。
MMTの基本は「会計学的な財政論」、或いは「バランスシート財政論」ですが、「貸方」「借り方」の他に「特別損失」みたいな物が存在するのが実際の世界の様な・・・。この損失は誰かの利益ではあるのですが。
考察が雑なので、詳しい方々のツッコミ承知で書いてみました。