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映画・演劇のレビュー

『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』

2007-06-02 07:39:45 | 映画
 シリーズ完結篇は3時間に及ぶ大作。もともと長い映画だったが、回を追うごとにどんどん長くなるのは、ファンにとっては嬉しいことだろうが、(少しでも長く幸せに浸りたいしね)映画自体のクオリティーは確実に落ちていく。中身が薄いし、テンポも悪い。まぁ、デート・ムービーなんでそれなりに楽しめたらいいのかもしれないが。

 もちろん、こんな嫌らしいことを書くために、1週間ぶりの映画に、この作品を選んだんではない。仕事でクタクタだったので、楽しい時間を過ごしたかったのだ。映画は娯楽である、という初心に帰り、まず楽しいだけの時間が送りたかった。何も考えずハラハラドキドキするためには、こういう健全で、ノーテンキな単純アクションが一番ではないか、と思ったのだ。

 なのに、あまり楽しくないのはなぜだ?まず、総論から行こう。今回はずっとチャンバラしてるだけの映画になったのが最大のミス。さらには、これはボーイ・ミーツ・ガールだったのに、恋のさや当てが、どうでも良くなり、中途半端な騙しあいばかりで、爽やかさがない。だいたいお姫さま役だったはずのキーラ・ナイトレイがミラ・ジョボビッチばりの女戦士になってしまって、もうヒラヒラのドレスとか着てくれないのは残念だ。華やかさがなくなり、汚らしい海賊ばかりがウロウロする映画になっている。紅一点というのはミスマッチの面白さを産む。そんなこともこのスタッフは忘れてしまったんだろうか。ヒットしたらなんでもありになり、大事なことを忘れてしまうらしい。

 オープニングはワクワクした。さぁ、始まるぞ、という気分にさせられる。処刑される人たちが海賊の歌をうたい始めるシーンである。その後のキーラたちが、シンガポールのチョウ・ウンファに会いに行くシーンもドキドキするし、なかなか楽しめる、と思ったのに、そこまでである。ここからが、だるい。死んでしまったジョニー・デップを生き返らせるために、旅に出るシーンから、彼が出てくるまでが長い。さらには出てきたシーン。こういう腹芸はしつこくて鼻に付く。一人芝居を延々見せられて退屈。ここでバランスを崩してしまい、みんなと再会した後も、現実の世界に戻るまでが単調すぎて、この辺から、この映画には乗れなくなる。

9人の伝説の海賊たちを集めた集会から、クライマックスに至るまでが、つまらないのは、彼らの敵がそんなにも強くないからだ。だいたい9人の海賊がいまいちで、こんなことなら主人公3人組だけで充分立ち向かっていける。そう思わせたらその時点でこの映画の負け。

 前回のラストで、デップを死なせてしまうという『スタ・ウォーズ 帝国の逆襲』以来の第二弾定番路線を見せてくれ今回に期待させたのに、これでは何でもありの安直映画でしかない。もともとこのシリーズはストーリーが場渡り的でいいかげんなのだが、せっかく2本撮りしたんならもう少し台本を練り直しすべきである。行き当たりばったりで、奥行きがなく、せめてテンポがよかったら、なんとかなったのにそれもない。これだから、3時間になったのだ。ちゃんと編集しなさい。派手な見せ場もずっと続くとただの日常になってしまう。

 せっかく超大物俳優チョウ・ユンファを迎えたのに、彼の見せ場が中途半端で、さらには早々に死んでしまうし、あきれた。ユンファとデップの対決をクライマックスにしないのなら、彼を呼ぶ必要はない。

 オーランド・ブルームって主役だったはずなのに、気が付けば、忘れてしまうくらいに影が薄く、ラストで10年振りに帰って来る雄々しい姿すら嘘っぽく見えるという始末だ。

 ストーリーの単純さ、「滅び行く海賊たちへの哀歌」というテーマがどうでも良くなるような展開、この映画の失敗はその2点に尽きる。途中からは眠気との戦いになるとは、思いもしなかった。

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