このSF小説は凄い。SFなんてめったに読まない僕が言っても説得力はないかもしれないけど、しかも、ここに描かれた世界観を半分も理解できてないけど、難しくてよくわからないなりに、でも、そのすさまじさはちゃんと伝わってくる。圧倒的なイマジネーションの世界だ。
短編連作なのだが、すべてがつながっている。1つめの『海の指』を読みながら 難解すぎて、止めようか、と思ったけど、わからないなりに、首をひねりながら読む。2本目からはなれてくる。まぁ、話がわかりやすくなったのかもしれないけど、読み方もわかってきたからだ。『星窓』の世界観はわかる。そこから覗く世界、という図式はこれらの作品集の基本構造だ。次の『♯銀の匙』からはアリスを主人公にした連作になる。やがて、間宮潤堂という怪人との対話を描くこの作品集のタイトルである『自生の夢』に行き着く。あの『羊たちの沈黙』を思わせる。そして、その描こうとするものは、ラストの『はるかな響き』に引き継がれ、きれいに完結する。
そこにはネットの先にある崩壊した未来がリアルに描かれていく。モノリスの謎に迫る。『2001年宇宙の旅』の続編とでも言うべき作品だ。