『さよならオレンジ』の岩城けいの第2作。前作ほどの衝撃はないけど、オーストラリアで過ごすことになった12歳の少年の1年間を通して、異文化の中で適応することの困難、そこから見えてくる新しい風景が、リアルなものとして伝わってくる。
きれいごとにはならない。いじめられ、居場所を失い、もがき苦しみながら、少しずつ自分の存在意義を見出していく真人の姿が、現地と全く適応出来ず、心を壊していく母親との対比で描かれる。徐々に家族が壊れていく中で、彼は力強く成長していく。
ラストで、「ぼくはここにいたい」と強く願う彼の姿が胸に痛い。自分の居場所を見出して、ここにいていいのだ、と、ここにいるべきなのだと、意思表示する少年がまぶしい。
とても素直にこの作品は読める。作者の主人公への距離感がいいからだ。適度の距離を取りながら、彼の1年間を見つめていく。感情移入を強要しないのは、この場合適切だ。今まで生きてきた環境とはまるで違う場所に置かれ、戸惑いながら適応していく姿を静かに描く。そのスタンスがいい。