九人の作家たちが自ら選んだ段を使ってリライトするもうひとつの『源氏物語』である。かなり融通がきいて自由度が高い。そのまま現代語訳しただけのようなものから現代を舞台にして原作のエッセンスだけを残したオリジナルまで、アプローチはみんな違っている。『帚木』から『浮舟』まで9編が原典の順に並んでいるので、一応源氏物語のダイジェストにもなっている。ただ短編連作とはいえ個々のエピソードは完全に独立しているし、話がどんどん飛んでいくから(9帖のみなのだで)当然一貫した作品にはならない。源氏を知っているということを前提にして書かれてあるので、作品としての独立性もない。だが、それぞれの作家が自分の個性をしっかり打ち出しているので、おもしろい。ただし、町田康(『末摘花』)なんてちょっとやりすぎ。あんな下品な源氏ってないんじゃないの、と思った。出家した女三宮の独白として描かれる『柏木』が僕的にはベスト。こんな見方があるのかととても新鮮だった。
基本的にはオリジナルのストーリーにしっかり沿ったものの方が面白い。それをいかにアレンジするか。そこに仕掛けられたものが上手く機能すると魅力的になる。あまり原作と離れられるとつまらない。反対にあまりの原作通りでもつまらない。ということで、『夕顔』(江國香織)『須磨』(島田雅彦)そして『柏木』(桐野夏生)の3篇を押す。
異国の男相手の店から幼い少女が抜け出そうとする姿を描く角田光代の『若紫』が次点。ほかに松浦理英子の『帚木』、金原ひとみの『葵』、日和聡子の『蛍』、小池昌代の『浮舟』(これもよかった)の九篇。
基本的にはオリジナルのストーリーにしっかり沿ったものの方が面白い。それをいかにアレンジするか。そこに仕掛けられたものが上手く機能すると魅力的になる。あまり原作と離れられるとつまらない。反対にあまりの原作通りでもつまらない。ということで、『夕顔』(江國香織)『須磨』(島田雅彦)そして『柏木』(桐野夏生)の3篇を押す。
異国の男相手の店から幼い少女が抜け出そうとする姿を描く角田光代の『若紫』が次点。ほかに松浦理英子の『帚木』、金原ひとみの『葵』、日和聡子の『蛍』、小池昌代の『浮舟』(これもよかった)の九篇。