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映画・演劇のレビュー

濱野京子『碧空の果てに』

2012-10-13 07:59:32 | その他
 こんなファンタジー小説を読むのは僕の趣味ではない。だが、作者は濱野京子さんだから、それだけで、借りてきてしまった。最初はさすがに抵抗があったけど、だんだん話しの中に引き込まれてきた。やはり、彼女は信用ができる。

 とある小さな国のお姫様が、自由を求めて旅に出て、ある国にやってくる。彼女は自分が女である、というそれだけのことで縛られていることが、嫌でしかたない。男はあんなに自由になのに、女である自分はあらゆる束縛を受けざる得ない。家を出て、男のフリをして放浪の旅に出る。(『リボンの騎士』みたいだ)彼女がやってきたそこは民主的な自治区で、選挙で首長が選ばれる。彼女はその国の首長に心魅かれる。簡単に言えばそんな感じの話。だが、とてもよくできているのだ。ファンタジーだから、という理由で避けるのはよくないなぁ、と改めて思う。いいものは、何であろうと、いい。それだけの話なのだ。

 濱野さんは、このお話を通して、政治について、話す。それが、人間の生き方へとつながる。大きな話と、小さな話が等価に綴られ、それらが、融合する先にドラマのテーマがちゃんと見えてくる。

 ファンタジーの定番で、恋愛もので、読んでいてやはり、気恥かしさは隠せない。だが、少女趣味のただの夢物語というわけではない。大事なことは、夢見ることではなく、損得なんか関係なく自分の意思で、立ち、生きるという姿勢だ。主人公の少女は凛として、男たちに隷属するのではなく、反対に男たちを引っ張っていく。でも、それは逞しいのではなく、(確かに彼女は男勝りで、男以上の力持ちで、聡明で、だけど)ただ自分に正直なだけ。そこがいい。

 終盤、急展開になるから、これは続編への布石か、と思ったがそうではない。ちゃんとこの1冊で完結する。図書館で見たときは、3冊並んでいたので、3部作だということはわかっていたけど、1冊ずつが、それぞれ独立しているようだ。最近は、最初から連続ものの大河ドラマが、多いから、こんなふうに、終わるとそれだけで、なんだか気持ちがいい。



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