週末芝居を3本見た。映画も1本。さらに昨日2本見て、本もこの4日で3冊読んでいる。この本が4冊目だ。だから、このブログに書くネタには事欠かない。というか、溜まっているというのが本音だ。でも、時間がなくて今まで何一つ書けないでいた。月、火曜日は今は一応仕事に行っているから、無理だし。ようやく今この時間パソコンに向かうことができた。で、まだあと40ページほど読み切っていないこの本のことをまず書いている。
これは瀬尾まいこらしいハート・ウォーミングだ。少し不思議なお話だけど、ファンタジーではない。これはちょっとした心の問題だからだ。本格的に2学期が始まって、この2日、わりと真面目に授業をした。雑談ばかりで済ませたいところだけど、仕事なので、一応は教材をこなしていく。あまりやる気はない。というか、好きなようにやっている。今は昔と違って他の先生たちとちゃんと足並みはそろえるけど、いつもなんだかなぁ、と思う。古典とかで文法とかはどうでもいいと思っているから、ついついそこで手を抜く。そんなことより、お話の余白を読むことのほうが面白い。昔の人はどうしてこんなことをしたのか。それを今の感覚で読み解くのが古典の醍醐味だ。だから、いつもいいかげんな話ばかりしてしまう。夏休み前、1年の現代国語の読書感想文の宿題で今年の課題図書になった『その扉をたたく音』を紹介した。別に課題図書でなくても瀬尾まいこは勧める。でも、なんだかうれしくて、読んでね、と言ったのだがあまり期待していなかった。昨日宿題のチェックをしていて、この本をちゃんと読んで感想を書いている生徒を発見。それだけでなんだか幸せな気分になる。
この小説の主人公は普通の男の子だ。普通過ぎてそんな自分に自信がない。でも中学時代、エスパーと呼ばれ調子に乗っていた。人の心が読めるのだ。相手が何を思っているのかが見えてくる。だから、相手の望むように対応してみる。すると当然感謝される。おれの(わたしの)気持ちがわかってくれるのはおまえ(あなた)だけだよ、と。でも、果たしてそれは特殊能力だったのか。大学生になった彼は、バイト先で心を閉ざしたままの女の子と出会う。なのに、今回は彼女の心が読めない。
これはとても小さなお話なのだ。平凡なのを恐れ目立たないように小さくなって生きてきた彼が、心を開くまでの物語。(たぶん。まだ最後まで読んでないので断定はできないけどおおむねそうだろう)大学のキャンパスで河野さん(中3の時、彼が初めて心が見えたきっかけを作った人)と、バイト先で常盤さん(先に書いた心を閉ざした女性)と過ごす。このふたりに学友の香山(一緒にマラソンを走る)とバイト先の口の悪い店長を加えて合計5人のお話。
人と出会い、関係を育てることで、少しずつ成長していく。そんなあたりまえのことが描かれる小説なのだけど、そのあたりまえがとても難しい。誠実であればあるほど、相手に対して距離を取ってしまう。怖いのだ。嫌われるのが。だから、あえて親しくしないなんていう選択すらある。でも、それでは生きていけない。寂しい。だから、何とかしなくてはならない、と思う。主人公の梨木匠はそんな男の子だ。
大学生だけど、子供のころから変わらない。今、一応はとても幸せな日々を過ごしている。そんな日々のスケッチだ。繊細だけど、鈍感。天然だけど、気が弱い。心と体はちぐはぐで、危うい。そんな彼が大好きな人たちを(無意識に、だけど)助けたいと思う。そうすることで(結果的に)彼自身が助けられる。心優しく、温かい。そんな物語に癒される。