『君の膵臓がたべたい』の月川翔監督最新作。菅田将暉と土屋太鳳が主演。あり得ない行動をするとんでもない問題児と他人のことには一切興味のない女の子。そんなふたりがたまたま出会い、関わりを持つことになる。例によってこれも人気少女マンガの映画化らしい。
映画はあり得ないような無茶を提示するけど、そこにある彼の少年のままの純粋さが後押しする。これでも大丈夫なのだと。少女の頑なさも、なにもそこまで、と思うけどそんな極端だからこそ、このお話は成り立つ。
一見すると、いかにもな設定の定番ラブストーリーのようなのだが、実はこれがなかなかの「くせもの映画」なのだ。荒唐無稽な設定を用意しながらそこに普遍的な人生の真実をちゃんと散りばめてある。
バカバカしいと思いつつ、見ているうちにそのことに、「あっ」と、気付かされる瞬間がある。例えばこういうところ。主人公のふたりがケンカする。少女は、後で反省して明日学校で謝ろうと思う。だが、翌日から少年はもう学校に出てこなくなる。行方不明になる。そこから高校生活の後半、1年半は彼が不在のまま、時を過ごすことになる。
この時間がずっと続くと思うなよな。明日はもうそこにはいないかもしれない。今日の続きの明日があると信じていた。でも、そんなこと確実なことではない。
とんでもない3年間のお話だ。でも、こんなふうにして3年間を過ごせたならいい。高校入学から始まり卒業まで。そして、数年後の今。夢のような学園ドラマなのだけど、そこにある心地よさはある種の真実を指し示す。突然彼がいなくなり、そして、もう戻ってこないとしても、それすら受け入れて行くしかない。後悔しても戻れない。なかったことになんか出来ない。そんな当たり前のことをこの映画は教えてくれる。そして、それを乗り越えたとき、再び幸せが戻ってくる。そんなドラマを図式としてではなく、ある種の真実として説得力を持って描いてくれるのだ。つらくても頑張ったから、未来はあなたの前に広がる。そして、信じたからこそ、かなえられる。
こういう青春映画はいくつもある。だけど、ほんとうにキラキラした映画はほんの一握りだけだ。これはそんな奇跡の1本である。
ただし、この春、なぜか、このレベルの映画が3本もあったのも事実で、先行する『ちはやふる 結び』『坂道のアポロン』に続いて、これで3本目になる。今年の春はなんだかすごい。