こんな映画も公開されていたのか。知らなかった。今という時代は、作られる映画のあまりの量に見る側が対応し切れないでいるというのが現状だろう。劇場公開作品だけでも膨大なのに、配信作品は無尽蔵。これはそんな中の1本。ジャスティン・ティッピング監督のデビュー作である。だけどとても手堅い。新人とは思えない。
ロサンゼルスに住む15歳の黒人少年の話。大人しくて女の子みたいな彼だが、仲良し男子はいる。いつも3人でつるんでいる。ふたりはカッコいいスニーカーを履いてるけど、彼はみすぼらしい靴しかないから女の子にもモテない。だから絶対新しいカッコいいスニーカーを買う。
貯めたお金をすべて使って真っ赤のNIKEのカッコいい靴を手に入れた。これでバッチリだ。だけど、虐めっ子たちに靴を奪われる。泣き寝入りするしかない。相手は人殺しさえ厭わない野獣のような男である。さぁ、どうすればいい?
こんなふうに書くとなんだかお話は児童映画みたいだが、実はかなりハードな映画である。靴ひとつを通して殺し合いすら辞さないアメリカの現実が描かれる怖い映画なのだ。こんな映画が平然と作られる。まるでドキュメンタリーみたいなタッチで。そこには子どもたちが置かれた過酷な現実が背景にある。こんな映画がインディーズ・シーンから生まれてきたのだ。とても興味深い。