チャン・イーモウの最新作。彼にとっては初の3D映画、ということらしい。なんだか意外だけど、そうなんだ。『HERO』とかたくさんのアクション大作を作っているから、3Dなんてもう何度もしているような気がしたけど。
日本では昨年の『妻への旅路』(これはこれで悪くはない昔ながらの地味な佳作だけど)に続く新作。すさまじい超大作映画。しかも彼はこの前に『楊貴妃』という作品も作っていたようだ。実に精力的に映画作りに勤しんでいる。でも、なんかもう昔日の面影はない。中国政府御用達監督に成り下がり、若かりしころの反骨の作家魂は失った。
数年前、中国に行った時、映画館で彼の新作が公開されていて大ヒットしていたけど、見なかった。南京大虐殺をテーマにした歴史大作で、悩んだけど、字幕なしでは僕には難しいかも、と、日和ってしまい、他の映画にした。(ジェット・リーの3Dアクション映画にした)あの時はとても悔やんだ。だって、あの映画は今も日本では未公開のままなのである。映画は見るべき時に見なくてはチャンスはない。
そんな、こんなで、今回のアクション大作は、公開直後のTOHOシネマズ梅田で見た。(公開から7日で劇場規模が縮小され、しかも小さなスクリーンでしか見れなくなるからだ)3番スクリーン(400席ほど)の大画面で映画を堪能した。いやぁ、派手でバカバカしく、お金をかけた映画だった。しかも、主演は『ボーン・アイデンティティー』シリーズのマット・デイモンだし。ハリウッド大作仕様の中国映画超大作。
もっと重厚な歴史大作なのかと思ったら、ただの怪獣映画だった。でも、3Dの特色を最大限に生かそうとした見世物映画で、きっと本国の中国では絶賛されて大ヒットを記録したのではないか。103分と短めの作品でアクションしかない。お話は皆無。まぁ、それはそれで潔い。だが、これがあの『紅いコーリャン』で颯爽とデビューして時代の寵児になった巨匠の仕事なのか、と思うと、なんだかなぁ、という思いは拭えない。
ヒロインのきれいなお姉さんはカッコいいけど(コン・リーの昔からチャン・イーモウは美人に目がない)脇を固める豪華キャストがかわいそうなくらいに見せ場がない。アンディ・ラウはまだましだけど、他はなんのために呼ばれたのか、と思うほど影が薄い。それはマット・デイモンも同じだ。あくまでもメインは派手なビジュアル。SFXの粋を集めた驚異のスペクタクル。そこに尽きる。役者は添え物。確かに凄いとは思うけど、なんだかなぁ、である。