習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ルワンダの涙』

2007-03-04 23:59:31 | 映画
 94年ルワンダで起こった大虐殺。100万人もの人々が犠牲になったという20世紀最大規模の殺人なのに僕たちはその現実を知らない。去年『ホテル・ルワンダ』を見た時の衝撃は大きかった。新聞でそんな事があったことは、知識として知っていたかもしれないが、それは遠いアフリカの出来事でしかなかった。

 引き続いて今年も同じ話を別の場所から、別の視点で描いたこの映画が公開され、もう一度あの現実に向き合う機会を持てた事に感謝している。1本の映画で語り尽くせるものではない。

 ツチ族とフツ族の内紛は、大統領の乗った飛行機が墜落したところから始まる。これをクーデターだと察知したフツ族による無差別殺人。しかし、このクーデターが事実なのかは、はっきりしない。それはたんなるきっかけに過ぎない。民族間のわだかまりが何らかのきっかけを欲したのだ。その犠牲になり民兵たちに殺されていく無力な人々。ツチ族というだけで皆殺しにしていく。

 こんな馬鹿なことが、この20世紀の終わりに現実に起きていたのだ。民族間の紛争は今も絶えない。エミール・クストリッツアが繰り返しユーゴの内紛を映画にしてきたが、彼の傑作群とは、全くテイストが違い、あまりにストレートなメッセージが見ていていささか鼻につくが、こういう真面目な映画が、作られることには大きな意義がある。これはまず事実を伝えるための映画なのだ。そのことを第一に考えたならこのやりかたは正しい。

 外国人の視点から描いたこともこの映画をシンプルにし、成功させている。『ホテル・ルワンダ』はどうしても美談のようになってしまった一面もあった。支配人の英雄的行動を追っていくことで、映画を少し甘いものにしてしまった。しかし、今回は第3者の視点を確保したことにより、ドキュメンタリー的な展開も可能になり、感傷的にはなってない。ただ、映画としては奥行きがない。事実の羅列の域を出ない。ここで何があったのかを、もっと深く掘り起こして欲しかった。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『さくらん』 | トップ | 日英現代戯曲交流プロジェク... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
見ました。 (nakayamar)
2007-03-06 07:09:19
いろんな意味で、観るべき作品ですね。
返信する
ルワンダ (h.ito)
2007-04-18 20:37:55
初めまして、本「生かされて」読みました。
映画でも見たいのですが方法分かりますか教えてください
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。