全国に地蔵尊は多けれど 海中に鎮座する
御座の地蔵尊は 唯一だろう
地蔵尊は 諸人救済の大慈悲を持っておられる
御仏で 信仰は 平安時代から
鎌倉時代に掛けて盛んだった
御座の石仏が ある時 老人が午睡中の夢枕に立ち
「我は御座の地蔵菩薩 古来から因縁を感じ
このところに姿を現ず 至心に祈願せんものには
誓って腰より下の疾病を治すべし 我が海水の浸す
処にありて諸人のために 常に代わりて
苦忠(くげん)を洗浄せん 必ずや高所に移すことなかれ」と
これを伝え聞いた村人は 迷いの雲が晴たように
地蔵尊に帰依(きえ)し 病苦の平癒を御仏の
慈悲にすがった
後世前立地蔵を献じ 腰から下の病に苦しむ婦人
子宝が欲しい人 安産を祈る人 生理に苦しむ人
それぞれ 願いをかけ 救いを求めて
日参をしている
特に 海女は腰を冷やす仕事 漁の行き帰りに
お参りしている