煎茶道というのをご存知でしょうか。私は恥ずかしながら、つい最近まで全く知りませんでした。茶道といえば、お抹茶だけと思っていたわけですが、今回、去年までヒューストンにいて帰国したばかりの友人が架け橋となって、煎茶道東阿部流の家元はじめとする先生たちの一行が、煎茶道を広めるためにヒューストンを訪問されることになり、はじめてその存在を知りました。総領事館公邸をはじめ、ライス大学などで御点前を披露されることになったわけですが、その忙しい日程の中、わざわざ我が家にも来て頂だき、友人たちにも集まっていただいて、二百年以上も続いているという日本の伝統美をしっかり堪能させていただきました。
我が家のファミリールームのソファを動かして友人からお借りした畳二畳を真ん中に敷きました。正客(5人)の位置や、御点前のときの座る方向など、いろいろと決まりがあるようで、先生方は我が家にいらしてから、かなりあれこれと畳の位置を変えて準備をされていました。手前右側のソファに座って背中を見せているのが正客になります。
これは盛り物というのだそうですが、花だけでなく、その季節折々の身近な野菜なども一緒に飾るのだそうで、なんだかとってもかわいらしい。
ここでいれたお茶が正客にふるまわれます。
残りの客にはかげだしと言って、別のところでたてたお茶がふるまわれるわけですが、この最初のお茶のおいしかったこと!!!あんなにまろやかな甘味のあるお茶をいただいたのは、生まれて初めてでした。
お茶は2度ふるまわれるのですが、その間に御乾菓子をいただき、それから2番茶をいただきましたが、これがまた味がぜんぜん違う。でも、この2番茶くらいの味なら、なんとか私でもいれられるかな。
とにかく、着物姿でビシッと背筋の伸びた先生たちは、きびきびと無駄のない動きで、その動線も美しく、私もあんなふうに動けるのなら、着物を着てみたい… 「あぁ~、日本っていいわよねぇ~」とみんなでため息。こうして考えると、日本にはほんとうにすばらしい伝統美がたくさんあります。日本にいるときは、当たり前だったようなことも、異国の地で振り返ってみると、「あぁ、よかったなぁ」って思うこともたくさんです。
この煎茶道はお抹茶の茶道と違い、昔から文人たちが自分たちの身近なものを回りに飾って、楽しく会話をしながらたしなんだお茶ということで、我々も質問をしたり、説明を聞いたりしながら、和やかな時間を過ごさせていただきました。昔の人はテレビもコンピュータもなかったけれど、きっと今よりもずっとおしゃれで、ゆったりとした時間を楽しんでいたのだろうなぁ、と、あのまろやかなお茶の味を思い出しながら、遠い昔を想像してみました。
(Houston)