まねき猫舎

ぬか漬け

「お嫁入りの時に実家から持ってきた宝物ですよ」と、
77歳になる知り合いのおばあちゃんが、
大切そうに見せてくれたのは“ぬかどこ”でした。
ほんのり小麦色で、蓋をあけた瞬間周囲に
プンと発酵臭が漂います。
その“ぬかどこ”を去年の暮れ分けてもらいました。

死なせないように、冷蔵庫で大切に保管し
毎日毎日かき混ぜていると、
「何事も過保護はいけませんよ。
うちの“ぬかどこ”は、ちょっとやそっとじゃ
へこたれませんから。
濡れた手で扱わなければ
後は放っていても大丈夫です」
と、きっぱり一言。

先日、ぬかの補充方法を習おうと電話すると
「まだまだ何もしなくてよろしい。
今はたくさん漬けることが大切ですよ。
もし加えるなら、夏前に
お料理であまった生姜をひとかけですね。
わぁ~おごちそうがきたって“ぬかどこ”が喜びますよ。
でも、過保護はいけませんからね」

そして、
「“ぬかどこ”は、お漬物を漬けるだけじゃないんですよ。
コミュニケーションの道具でもあるんですよ」
とおっしゃいました。

初めて手にするぬかどこ。
どうしていいか分からないから、分けていただいた方へあれこれご質問。
一昔前ならお姑さんでしょうか…。
まだまだ早い、もうぼちぼち生姜をいれましょうとか、
いろいろ教えてもらいます。
それを繰り返してゆくうちに、嫁と姑、若い人とご年配の方の
会話が増えて仲良くなってゆくのだそうです。

人間関係も漬けてゆく“ぬかどこ”。
古い“ぬかどこ”が美味しくて強いのは、
それだけ多くの人達の歴史がつかっているからでしょうね。

その夜、キュウリを漬けながら、
“ぬかどこ”の一員になれた喜びをかみしめました。
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