経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

電気ショックの 自動車産業 (上)

2021-08-25 07:33:33 | 自動車
◇ EV化に向けてトップ・ギア = 自動車を電動化する動きが、世界で加速している。最初にギアを入れたのはEUで、ことし7月14日に「35年にガソリン車、HV(ハイブリッド車)の販売を禁止する」と発表した。次いでアメリカも旗を上げる。バイデン大統領は8月5日「30年の新車販売の5割をEV、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)とする」大統領令に署名した。言うまでもなく、地球温暖化ガスの排出を抑制するための措置である。

世界最大の自動車市場である中国も、EV化に向けた目標を打ち出している。その内容は「35年までに新車販売の5割をEV、5割をHVにする」というもの。政府は中間的な目標として「25年にEVの生産500万台」も掲げた。中国の場合、ガソリン車やHVでは欧米や日本のメーカーに太刀打ちできない。そこでEV、特に小型EVで世界をリードしようという野心が秘められている。

EV化の流れは、加速することはあっても止まることはない。こう察知した自動車メーカーは、次々とEV化計画を発表している。たとえばGMは「35年までにすべての生産をEVに切り替える」方針。スゥエーデンのボルボは「30年までにEV専業メーカーになる」と発表。またドイツのフォルクスワーゲンは「30年までにEV用電池工場を6か所建設する」計画だ。

ここで注意すべき点が2つ。まず各国の政策が微妙にズレていること。たとえばEUでは35年になると、HVは売れなくなる。しかしアメリカでは5割までなら販売できる。これが日本のメーカーにとっては、悩みのタネになる。もう1点は、いくらEVへの切り替えが進んでも、電源がクリーンでなければ温暖化ガスの排出は減らない。この問題も、日本にとっては重荷になってくるだろう。

                          (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 上げ +237.86円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

驚くべき急増加 : 自動車の輸出

2021-06-18 07:30:22 | 自動車
◇ アメリカ向けは昨年の3.3倍に = 財務省は16日、5月の貿易統計を発表した。それによると、輸出は6兆2612億円で前年比49.6%の増加。この伸び率は41年ぶりの大きさだった。前年はコロナで世界経済が停滞していたので、その反動もある。しかし輸出額は、コロナ前の19年5月と比べても約7%増加した。一方、輸入は6兆4484億円で前年比27.9%の増加だった。この結果、貿易収支は1871億円の赤字となっている。

輸出を地域別にみると、アメリカ向けは1兆1045億円で前年比87.9%の増加。EU向けも6170億円で69.5%と大きく伸びた。アジア向けは3兆6386億円で32.5%の増加。そのうち中国向けは1兆3927億円で23.6%の増加となっている。品目別にみると、一般機械や電気機械なども増加したが、特に自動車の輸出が驚くほど急増した。

自動車の輸出は38万0314台で、前年比120.3%の増加。金額では7541億円で135.5%の増加だった。地域別ではアメリカ向けが2347億円で、なんと244.7%も増えている。EU向けも635億円、46.7%の増加。アジア向けは1490億円で68.9%の増加。うち中国向けは690億円で42.9%の増加だった。

すさまじい増加ぶりだが、その理由は何だろう。まずはコロナで低迷していた前年の反動。それにワクチンの接種で景気回復の見通しが高まったこと。さらにコロナ禍で公共交通機関を避ける風潮が高まり、自家用車への需要が強まったこと。アメリカでは品不足から新車の引き渡しが遅れており、中古車が引っ張り合いになっているという。こうした異常なブームの反動が、また恐ろしい。

       ≪17日の日経平均 =  下げ -272.68円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

新車が売れない理由は?

2019-12-05 08:09:50 | 自動車
◇ 消費増税の影響だけではない = 業界団体の集計によると、軽自動車を含む11月の新車販売台数は38万5859台で前年同月を12.7%下回った。内訳は普通車が23万8844台で14.6%の減少、軽自動車が14万7015台で9.4%の減少だった。消費税が10%に引き上げられた10月は前年比で24.9%も減少していたから、減少率は半分程度に縮小している。だが、それにしても販売不振は厳しすぎる。なぜ、売れないのだろう。

消費税が5%から8%に引き上げられたのは、14年の4月だった。そのときの販売状況は、4月が前年比5.5%の減少。5月は1.2%減少にまで戻している。それに比べると、今回の販売減少はやや異常なほどだ。政府はこうした需要の減退を防ぐために減税措置を講じたが、その効果もなかったと言えるだろう。

増税前の駆け込み需要は、たしかにあった。一般車でみると、8月が4.0%増、9月が12.8%増。軽自動車では8月が11.5%増、9月が13.2%増だった。10月以降、その反動が現われたことは間違いない。だが販売不振の理由は、それだけではなさそうだ。加えて複数の原因が、微妙に影響しているように思われる。

たとえば台風や大雨の影響。あるいは増税により生じた消費者の節約志向。また将来の生活に対する不安。さらに本格的なEV(電気自動車)の登場待ちや若者の車ばなれ・・・。一過性の天候不順を除けば、その他の要因は長引く可能性が大きい。世界経済の停滞で、輸出にも暗雲が。自動車業界は、消費増税を機に、下り坂に入ったのかもしれない。

       ≪4日の日経平均 = 下げ -244.58円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

悪路にはまった 自動車産業 (下)

2019-09-27 07:40:49 | 自動車
◇ 歴史的な転換期に突入? = 世界的な自動車販売の不振は、各国経済の鈍化が主たる原因だ。加えて国ごとに、固有の問題点も指摘されている。たとえばインドの金融不安によるローンの貸し渋り、中国の過剰になった個人の債務など。だが、それだけではなく現在の自動車業界は、歴史的にみて大きな転換点にさしかかったという見方も強まっている。

たとえば急速に発展してきたEV(電気自動車)化の問題。11年ごろから急増しており、18年には世界で140万台近くが売れた。ガソリン・エンジンに比べると電気モーターの構造は圧倒的に簡単で、異業種が新規に参入しやすい。それだけ競争は激しくなる。従来からの自動車メーカーは、むしろ不得手なバッテリーの分野で競わなければならない。

さらに自動運転の問題。技術開発は進んだが、完璧な安全性はまだ望めない。もし事故が起きると、メーカーの賠償責任はどうなるのか。事故を起こした車種の売れ行きは、致命的に減少してしまうだろう。ほかにもガソリン車についての排ガス規制。また車を保有しないシェアリングの普及。若者の車離れ・・・業界にとっては大問題が山積している。

T型フォードが発売されてから110年あまり。自動車産業は、多くの国にとって経済を支える主柱となった。メーカーだけでなく、部品や販売など関連産業も幅広い。その自動車業界がいま販売不振に悩んでいるが、これが一時的な現象なのか。それとも大変動が起こる前触れなのか。転換期に突入した可能性の方が強いと思う。

       ≪26日の日経平均 = 上げ +28.09円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

悪路にはまった 自動車産業 (上)

2019-09-26 08:36:56 | 自動車
◇ 日本以外は軒並み販売不振 = 世界中の自動車メーカーが、新車の販売不振に苦しんでいる。特に凋落が著しいのは、世界最大の市場である中国と、第5位のインド。ほかにアメリカやヨーロッパ諸国、東南アジアなどでも、販売台数の前年割れが目立っている。その原因はいろいろだが、共通点は景気が下降していること。そうしたなかで、日本だけが前年比プラスの傾向を保っている。

中国の8月の新車販売台数は196万台。前年比で6.9%の減少だった。これで前年割れは14か月連続。昨年は年間ベースで28年ぶりに前年を下回ったが、ことしも前年割れとなるのは確実とみられている。景気の減速で家計債務が増大していること。米中経済戦争への不安。さらに株価の下落などが原因だ。政府は交通渋滞を緩和するための発売規制を撤廃するなどの対策を講じているが、その効果はまだ現われていない。

インドの状態は、想像を絶するほどだ。7月の新車販売台数は前年比30%減、続いて8月も33%の減少となった。大手金融機関が債務不履行を惹き起こし、自動車ローンを借りにくくなったことが最大の原因。この結果、タタ自動車が4-6月期決算で最終赤字に転落。この1年半で、270の販売店が倒産した。世界のなかの市場規模も、ドイツに抜かれて4位から5位に落ちている。

アメリカの新車販売も、4-6月期は前年比1.5%の減少。EUは5月までで9か月連続の前年割れとなった。またインドネシアは7月に前年比17%の減少、マレーシアも26%の減少となっている。こうしたなかで、日本は7月が前年比4.1%、8月が6.7%と増加を続けている。ただ10月以降は消費増税の影響が、どう現われるか。見通しは難しい。

                               (続きは明日)

       ≪25日の日経平均 = 下げ -78.69円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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