i-padの登場で、一気に電子書籍化が進むと予想されています。
本を出している出版社からすれば、確かに戦々恐々でしょうね。
紙への印刷物が、ディスク等のメディアに、とって替わるだけではないですから。
音楽CDの実売数が激減しているように、ダウンロードが当たり前になるでしょうし。
本という固形物が失われ、見えないデータが浮遊する世界になっていくのでしょう。
保管場所に困らず、いつでもどこでも読みたい本が読めるようになる。
本屋に行かなくても、ネット上でいくらでも新着書籍にアクセスできる。
バカにならない書籍代が安価になり、気楽にダウンロードできるようになる。
出版社という会社を通さなくても、誰でも文字にして発信できるようになる。
…そんな風に考えると、確かに一気に電子書籍化が進みそうな気もしてきます。
でも、一方で、本という価値は失われずに残るんだろうな、とも思います。
本というのは、単にデータを紙にプリントした印刷物ではないですよね。
本というのは、実に多くの人の関わりで製作されている、ひとつの作品です。
著者、編集者だけでなく、組版、装丁、製本、一冊作るのに実に多くの手間がかかってます。
書かれている中味はもちろん、実に良くできている、美しい本ってありますよね?
本に書かれている文字は、読む人のイメージを膨らませます。
活字の言葉に、読む人の生活経験が投影され、感情の琴線を揺さぶられることもある。
ネット上のメールやらブログやらは、どんどん言葉の意味が薄くなってる感じがあります。
自分にとって本当に大事にしておきたいものは、やはり形ある姿で残しておきたい。
手元に置いておきたい一冊、もう読まなくても捨てられない一冊って、ありませんか?
本に囲まれていれば、僕は幸せだった時期があります。
生まれて初めてしたバイトも本屋でしたし、学生時代最後のバイトも古本屋でした。
将来は、出版社の編集者になりたいと思っていた時期もありました。
でも、本を扱う仕事には、つかなくて良かったのかも知れません。
電子書籍化が進んで、本がどんどん無くなっていくのを見るのは、辛いと思います。
大学に職を移して良かったのは、自分の研究室が確保できたことです。
空間の確保って、誰にとっても切実なことですし、本の欠点は置き場に困ることですし。
読み終わった物でも、もう読まなくても、そばに置いておきたい。
そういった意味では、フロイドの言う肛門期を抜け出せていないのかも知れませんね。
本という形あるものの所有にこだわってる限り、僕は大して成長できていないのかも?
…でも、やっぱり本が好きですね(笑)