PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

リカバリーフォーラム2012

2012年08月10日 17時49分16秒 | イベント告知

精神科のリハビリテーションは、年々その姿を変えつつあります。
かつてリハビリテーションは、医師の指示の下でなされていました。
医療行為としての医学的リハビリテーションが、やはりメインでした。

リハビリは、徐々に施設へ、地域へ、社会へと裾野を拡大して展開されていきました。
現在では、PSWなどによる心理社会的リハビリテーションに重点は移りつつあります。
リハビリテーションは与えられるものでなく、当事者が自ら行うものになっていきました。
田中英樹さんはこれを「他動詞的性格から自動詞的性格に転換」したと表現しています。

それとともに、新しい用語や考え方が精神科の臨床現場にも浸透してきました。
アドヒアランス、リカバリー、リジリエンスといった言葉たちです。
とりわけ「リカバリー」概念は、従来のリハビリテーション概念を組み替えました。
当事者を主体とした支援の、新たなパラダイムを提示する中核概念と言って良いでしょう。

リカバリーは、原状復帰をめざす「回復」という意味にとどまりません。
たとえ障害や症状があっても、自身を再定義し、希望のある生活を続けていくこと。
社会の中で、自分の人生をあらためて自身の力で生きる「再生」という意味を持ちます。
ディーガンやリッジウェイの定義に習えば、人生の再構築のプロセスと言えるでしょう。

1990年代以降、日本でも随分広まった「リカバリー」ですが、
リカバリーという用語の日本語訳は、未だに定訳がありません。
しいて言えば、回復と再生の両面をもつ「回生」ということになるのでしょうか?

「回生」は、リハビリテーション医の上田敏さんが、かねてより語っていた言葉です。
上田さんには、専門職大学院で「人間理解」という授業を担当して頂いています。
その教科書が『回生を生きる~本当のリハビリテーションに出会って』(三輪書店)です。
脳卒中に倒れた社会学者の鶴見和子さんと語られる、生き方の創造がテーマの本です。

精神保健領域でも、リカバリー体験が、多くの当事者によって語られるようになりました。
大きな集会でご本人によって語られる言葉もありますが、文字で綴られた言葉もあります。

一方で、非言語的なメッセージを見事に伝えてくれる画像もあります。
地域精神保健福祉機構(コンボ)の雑誌『こころの元気+』の表紙モデルの方たちです。
その人のことを知らなくても、リカバリーを体現した笑顔が、そこにあります。
「デジカメが趣味」と標榜している僕から見ても、見事に表情を捉えたいい写真です。

今年もまもなく「リカバリー全国フォーラム2012」が行われます。
初日最初の舞台には、『こころの元気+』読者モデルの当事者の方たちが登場します。
僕は当日メインホールの進行責任の裏方なので、舞台の袖から見つめる形になりますが。
それぞれの方が語る「リカバリー」を、耳を澄ませて心に刻みつけたいと思っています。


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リカバリー全国フォーラム2012
「これから10年のビジョン
~精神保健福祉医療領域の社会運動とリカバリーフォーラムの役割~」

2012年8月24日(金)~25日(土)
帝京平成大学 池袋キャンパス

4回目を迎えるリカバリー全国フォーラムは、毎回1,000人を超える参加者により、2日間にわたり「日本の精神保健福祉サービスを”当事者中心”に変革するために」をメインテーマに開催されています。
回を重ねる中で、当事者・家族・精神保健福祉関係者・市民など職種・所属を超えた仲間が全国から集い、活発な議論を行う場として定着してきました。
今回のテーマは、「これから10年のビジョン;精神保健福祉医療領域の社会運動とリカバリーフォーラムの役割」。
当事者活動や家族支援、根拠に基づく実践プログラム(EBP)、アンチスティグマ、そしてリカバリーフォーラムの「これから10年」について語りあいましょう。
全国の皆さまのご参加を心よりお待ちしています。

■日程:2012年8月24日(金)~25日(土)(2日間)

■会場:帝京平成大学 池袋キャンパス
(JR山手線、西武線、東上線、丸の内線、有楽町線、副都心線「池袋駅」下車10分)

■主催
特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構(コンボ)
財団法人精神・神経科学振興財団

■定員:1,200名

■企画・実行委員会
高橋清久(財団法人精神・神経科学振興財団):委員長
相澤和美(東京・地域精神看護ケアねっと)
有村律子(NPO法人全国精神障害者団体連合会)
伊澤雄一(NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会)
伊藤順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
宇田川健(NPO法人地域精神保健福祉機構)
内山澄子(NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会/もくせい舎)
大島巌(日本社会事業大学)
大橋秀行(NPO法人POTA)
加藤大慈(横浜市立大学附属病院精神科)
加藤真規子(NPO法人精神障害者ピアサポートセンターこらーるたいとう)
金子鮎子(NPO法人全国精神障害者就労支援事業所連合会)
佐伯隆史(横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門)
寺尾直宏(NPO法人千葉県精神障害者家族会連合会)
仲野栄(社団法人日本精神科看護技術協会)
広田和子(精神医療サバイバー)
福井里江(東京学芸大学)
福智寿彦(愛知県・すずかけクリニック)
藤野英明(横須賀市議会議員)
古屋龍太(日本社会事業大学)
増川信浩(WRAPファシリテーター)
行實志都子(文京学院大学)
四方田清(社団法人日本精神保健福祉士協会)

■運営委員会・事務局
中村三保子(帝京平成大学)
中村玲子(帝京平成大学)
大井孝(帝京平成大学)
城田晴夫(帝京平成大学)
原口晋一(帝京平成大学)
古屋龍太(日本社会事業大学)
四方田清(順天堂大学)
行實志都子(文京学院大学)
鴻巣泰治(埼玉県立精神保健福祉センター)
松田裕児(成田市社会福祉協議会)
三木良子(東洋大学)
宮坂勇(NPO法人全国精神障害者地域生活支援協議会)
桶谷肇(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)
寺本育男(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)
秋山裕海(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)
久永文恵(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)
大山早紀子(日本社会事業大学)
園環樹(株式会社シロシベ)
二宮史織(国分寺すずかけクリニック)

■プログラム

◆8月23日(木)17:30~
◇前夜祭
本邦初公開! イタリアのテレビ放映で大ヒットドラマの上映会
「昔あるところに「精神病院Mattoの町」がありました」

◆8月24日(金)
◇オープニング(10:00~)
企画委員長あいさつ
高橋清久(財団法人精神・神経科学振興財団)

◇トークライブ(10:15~)
新しい自分の発見~1枚の写真が何かを変える~
「こころの元気+」表紙モデルの皆さん
市川左千子、内海章友、加藤勉、川北誠、小松達也
澤田優美子、白石和子、新村朋子、仲田亜由美

◇記念講演(13:00~)
「アメリカにおけるピア活動~その発展と将来への可能性」
講師:マシュー・フェデュリーチ
(コープランドセンター事務局長/全米ピアスペシャリスト協会理事)

◇分科会(15:15~)
1)リカバリー宣言2012
トークライブ出演者の皆さん、
増川ねてる(WRAPファシリテーター)、福井里絵(東京学芸大学)

2)みんなで丸くなって話そう、リカバリー~医療の場でリカバリーを育てるには~
相澤和美(東京都・地域精神看護ケアねっと)、大橋秀行(NPO法人POTA)、他

3)ピア活動により切り開く新たな地域移行
古屋龍太(日本社会事業大学)、中越章乃(神奈川県立保健福祉大学)
三石麻友美(埼玉県・さいたま市見沼区障害者生活支援センターやどかり)、他

4)地域における家族支援のあり方を考える
贄川信幸(日本社会事業大学)、大島巌(日本社会事業大学)、他

5)IPS(個別就労支援とサポートモデル)
~働くことのストレス・働けないでいることのストレス~
香田真希子(目白大学、NPO法人コンボACT-IPSセンター)
池田真砂子(こみっと)、大島みどり(障害者就職サポートセンタービルド)、
IPS利用者の皆さん、他

6)アンチスティグマとリカバリー
井筒屋勝巳(NHKディレクター)、原昌平(読売新聞大阪本社)
石川勲(NPO法人ミュー)、寺尾直宏(NPO法人千葉県家族会連合会)
高橋清久(財団法人精神・神経科学振興財団)、宇田川健(NPO法人コンボ)

7)デイケアにおけるリカバリー
医療法人福智会(福智寿彦、金澤秀夫、本間貴宣、笹川佑記)

8)権利擁護とリカバリー
四方田清(日本精神保健福祉士協会)、松田裕児(成田市社会福祉協議会)、他

9)リカバリーの視点から薬を使いこなす
藤井康男(山梨県立北病院)、佐藤光展(読売新聞医療情報部)、
小松正泰(川崎市精神障害者家族会連合会「あやめ会」前会長)、吉尾隆(東邦大学薬学部)
加藤玲(新宿区精神障害者家族会「新宿フレンズ」)

10)学校MHL(メンタルヘルリテラシー)教育によるそれぞれのリカバリー
上松太郎(学校MHL教育研究会)、幸村幸男(神奈川県立精神医療センター芹香病院)
柿沼紀子(横浜舞岡病院)、鎗田英樹(帝京平成大学)、
李戴徳(NPO法人コンボ、学校MHL教育研究会)

11)精神の疾患を持つ人と共に生きていく家族が欲しい支援は?
山崎修道(東京都医学総合研究所)
小笠原勝二(東京都西多摩精神障害者家族会「西多摩虹の会」)
粕谷嘉子(東京都世田谷区精神障害者家族会「世田谷さくら会」)
島本禎子(東京都杉並区精神障害者家族会「杉並家族会」)
野村義子(東京都調布市精神障害者家族会「調布かささぎ会」)

◇情報交換/交歓会(18:00~)
(参加費別途1000円:従来の立食パーティーとは異なる形で企画進行中!)

◆8月25日(土)

◇シンポジウム(9:30~) 
「これから10年のビジョン
精神保健医療福祉領域の社会運動とリカバリーフォーラムの役割
~NPO法人コンボがめざす活動との関連から~」
シンポジスト
磯田重行(福岡・地域活動支援センターぷらっと)
岡田久実子(さいたま市もくせい家族会)
伊藤順一郎(国立精神・神経医療研究センター)
高橋清久(精神・神経科学振興財団)
大島巌(日本社会事業大学)
司会
後藤雅博(新潟・南浜病院)
宇田川健(NPO法人コンボ)

◇分科会(13:00~)
12)WRAP~元気回復行動プラン
全国のWRAPファシリテーターたち:Rie(神奈川県)、まみ(千葉県)、あおりん(愛知県)、大川(北海道)、石ちゃん(千葉県)、かねこちゃん(千葉県)、ねてる(千葉県)

13)当事者と一緒に考えるリカバリーと看護
若林幸子(こころの森)、東美奈子(相談支援事業所ふあっと)
若林隆志(海星病院)、安田香里(海星病院)

14)働く仲間と語り合おう~働くためのアイデア集~
「働く人のミーティングCAT」メンバーによる実行委員

15)ACT(包括型地域生活支援プログラム)を立ち上げて
~苦労もあるけど、やればできる!~
増子徳幸(NPO法人リカバリーサポートセンターACTIPS/訪問看護ステーションACT-J)
野々上武司(NPO法人とらいあんぐる)
岡崎公彦(岡崎クリニック)、久永文恵(NPO法人コンボACT-IPSセンター)

16)ピアサポートの部屋~ピアサポ、知ろう・語ろう・始めよう!~
有村律子(NPO法人全国精神障害者団体連合会)、藤野英明(横須賀市議会議員)
加藤道広(おたすけclubぴあかん)
松井道久(青梅精神障害者ピアサポートグループぶーけ)
渡口泰子(ドリームファクトリー)、宇田川健(NPO法人コンボ)

17)IMRで自分らしく生きる~自ら決めるリカバリーゴール~
IMRを実施したデイケアのメンバー、
横浜市立大学精神科リハビリテーションチーム(星竜平、中村正子、内山繁樹、渡辺厚彦、藤田英美、武井寛道、水野直武、加藤大慈、他)

18)家族による家族学習会
横山恵子(埼玉県立大学)
飯塚壽美・岡田久美子・佐藤美樹子(さいたま・もくせい家族会)

19)家族もリカバリー
土屋徹(Office夢風舎)

20)精神保健医療福祉システムとリカバリー
~「Mattoの町」をなくすために私たちにできること~
伊藤順一郎(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
福井里江(東京学芸大学)

21)東日本大震災~これまでとこれから~
渡部裕一(宮城県仙台市:原クリニック)
西みよ子(福島県南相馬市:NPO法人あさがお)
駿河孝史(宮城県盛岡市:こころの元気サロン@宮古)
後藤雅博(新潟県新潟市:南浜病院)

22)あなたはあなたの人生の主人公~仕事に活かした長所と配慮について学ぼう~
リカバリーキャラバン隊:中原さとみ(桜ヶ丘記念病院)、飯野雄治(稲城市役所)
渥美正明、岡本さやか、中村孝

◇クロージングセッション(15:45~)

■参加申し込み
FAXまたは郵送でのお申込をご希望の方は、「リカバリー全国フォーラム事務局」まで、申込書をお送りください。
申込用紙は開催案内(パンフレット)の8ページ目です。
なお、電話でのお申込はお受けいたしませんので、あらかじめご了承ください。

■参加費
事前参加登録割引は、8月10日で締め切りとなります。
当日参加登録費は、一般9000円、学生5000円、家族3000円、当事者2000円です。

■お申込・お問い合わせ先
〒272-0031 千葉県市川市平田3-5-1 トノックスビル2F
NPO法人コンボ内 リカバリー全国フォーラム事務局
TEL: 047-320-3870 FAX: 047-320-3871
EMAIL: RF@comhbo.net / URL: http://comhbo.net