タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

ショック!高校家庭科教科書に痛恨のミス!

2024年01月27日 | Weblog
東京書籍の文部科学省検定済教科書「家庭総合 自立・共生・創造」(2東書・家総307)に、和食の説明でとんでもないミスがありました。この教科書(2東書・家総307)は平成28年から今年頃まで使用されていたので、令和6年度からの高校生は新しい教科書で習うからいいのですが、今の大学生や新人社会人の方は間違った教育を受けているので、このブログをよくよんで間違いを訂正してください。

間違いの部分は175頁の下記記載「ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食の特徴」」の左から2番目の「栄養バランスに優れた健康的な食生活」という部分と「一汁三菜を基本とする食事スタイル」の部分です。写真を引用したのでご覧ください。

このブログでこの2年ほど繰り返し言っていますが、ユネスコは一汁三菜なんて登録せず、様々な形態があるとして登録しています。またユネスコは和食を健康的なんて一言も言っていません(詳しくは前回の投稿をご覧ください)。

しかも表の下には、江原絢子先生の論文に基づいてこの表を作成したと書いてありましたので、実際にその論文を読んだら、江原先生は、和食の特徴が一汁三菜だなんて一言も書いていませんでした!ねつ造レベルの出来事で呆然となってしまいました。著作権の関係で江原先生の論文の全てを掲載出来ませんので、一部分を紹介しますが、これこの通りです。


 武家の供応食(お客様へのおもてなし料理)の本膳料理というのがあり、本膳料理は普通は複数のお膳で出される料理だが、その中の「一の膳」と呼ばるパーツが一汁三菜だったと明記されています。
 つまり、一汁三菜は「お客様向け特別料理の中の、さらに、メインディッシュの部分だ」ということになります。一汁三菜は普段自分が食べる料理のことではありません。
 日常食は大名レベルでも一汁一菜か二菜で、飯・汁(すまし汁や味噌汁など)・菜(おかず。魚など)・香(漬物)を食べたと記されています。

 なお、一の膳は3つのお膳からなります。まず1つめがお茶や菓子ののったお膳でこれを先にお客様に召し上がっていただきます。宴会ではお酒も出します。お茶もお菓子も召し上がった後で、2つめの飯と汁となますなどののったお膳を召し上がっていただきます。そして3つめが焼き物(焼き魚などですね)のお膳となります。この3つのお膳で一汁三菜というご馳走が形成されます。
 こんなパーティー料理を召し上がったことがある方はおそらく100人に一人もいないと思いますがいかがでしょう。こんなパーティー料理が和食の基本ですか?食育で有名な服部某先生は農水省の食育では「和食に回帰して日頃から和食の基本である一汁三菜を食べるべきだ」と唱えていますが、こんな料理を準備するなんて私たち主婦には無理ですよ。

 なんで服部先生も文部科学省も農水省もこうやって歴史を偽造するんでしょうか。「どうせだれもユネスコのホームページの英文を読まないだろう」と高をくくっていたのですか。また、東京書籍と文部科学省は江原先生に謝るべきではないでしょうか。


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ユネスコは和食をどうして無形文化遺産に登録したのか。

2024年01月14日 | Weblog
1月11日の読売新聞で、海外での和食レストラン増加はユネスコが和食を無形文化遺産に登録したことが契機であるかのような文章が書かれていましたが、ミスリードを招く文章で残念です。今回、改めてユネスコが和食を登録した経緯を詳しく書きます。
特に、現在日経夕刊で連載中の土井先生も、ユネスコ登録経緯について少々誤解して学士会講演会を開いたので、木曽功先生著の「世界遺産ビジネス」(小学館新書)などを参考に、詳しく紹介します。

 まず、登録された和食が農山村など地方に残る消えつつある伝統的家庭料理であることは、このブログで繰り返し書いた通りです。
ところがですね、実は10数年前、ユネスコ登録のために国内で組織されたNPO法人の「日本料理アカデミー」は京都の料亭「菊乃井」を中心に組織されたもので、目的も実は、高級料亭の「日本料理」を登録することでインバウンドを狙ったものでした。
 なぜなら2010年にフランスの美食がユネスコの無形文化遺産に登録されてフランス料理業界が活気づいたからです。この登録は当時のサルコジ大統領が活発なロビイング活動をして、ユネスコ担当者が嫌がるなかで無理矢理押し通されたものでした。それで、日本の高級料亭も、フランスがそうくるなら日本も・・・と考えたのです。
 この菊乃井の村田吉弘さんらが農水省と文化庁に声をかけて、最初は和食ではなく、「美味しくて身体に良い日本料理」を登録しようとしたのです。

 このときに国内でもパブコメが行われ、一部の消費者は、「日本食といえば日本料理というイメージを植え付けて、伝統的な日本食がカルシウムや脂質・タンパク質が非常に少なく不健康だった事実を隠うそうとしているのではないか」と反発する動きもあったそうです。しかし日本政府側がうやむや言って押し切ったと聞いております。

 しかしいずれにせよ、日本料理アカデミーと政府側のこの働きかけは失敗寸前に陥りました。ユネスコ側としては保護しなければ滅びそうな文化を登録したかったのです。
それなのにサルコジ大統領(当時。)らの熱心な圧力に屈してフランス料理をいやいや登録するはめになったものですから、日本料理にも冷たい態度でした。そこで、日本政府側はユネスコのパネルミーティング専門家のアジア枠に日本人の愛川紀子氏を送り込みました。パネルミーティング専門家はくじ引きで選ばれるので、くじ運が良くて入れたそうです。愛川さんはユネスコ専門家同士がとんでもないことを話しているを耳にします。「(日本料理はすでに)大ブームで商業的に成立している。無形文化遺産で保護する必要はない」と。

はい、ここで繰り返しますよ。ここ近年いろいろな新聞・雑誌で、ユネスコが和食を無形文化遺産に登録したから和食ブームが起きたんだという情報が流されています。しかしそれは完全なミスリードなのです。登録される前から、ユネスコの皆さんたちも、すでに日本の料理は世界中で人気でレストランも世界各地に出来ているし保護する必要がないと考えていたのです。
嘘だーというあなたのためにもう一つ情報を。日本料理はまず1980年代に北米でスシが大ブームになり、やがて、1990年代後半になると世界各地で日本食レストラン(スシやラーメンやどんぶりものなど様々な料理です。)が開かれるようになりました。しかし、現地人などが店主をやって、現地の好みの味付けに変えられたので、これを快くなく思った日本政府(農水省)は、2006年に「海外日本食レストラン認証制度」を導入して、「正しい日本食」を海外に広めようとしました。ところがこれを知った世界中の国々から、食文化は各地に広まるうちにそれぞれの国の文化に合わせた味付けに変わるもので、それを止めさせようとするのはまるで警察かお前らは!と叫んで「スシポリス!!」と揶揄したのです。確かに日本人が食べているビーフカレーやナポリタンなんかを見れば、インド人もイタリア人もびっくりですからお互い様です。

農水省はこのスシポリスという批判に、振り上げた旗を降ろしました。しかし、海外で生じている「日本食レストランブーム」に対してはなんとしても「正しい日本食」を広めたい。だから菊乃井さんの提案に賛成して、ユネスコ登録に力を入れようとした訳です。

それで、あとはいままでブログに書いた通りですが、愛川さんの機転のおかげで、ユネスコには、和食とは正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものであると説明し、おかげでユネスコ側もそんならと登録した訳です。
繰り返しますが、ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも健康に良いとも一言も書かれていません。

ユネスコの登録URLをご覧ください。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコ側の登録文書翻訳をあえてもう一度掲載します。

「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」
     身体に良いなんてどこにも書いてないでしょう。
(原文はこちら)
「Washoku is a social practice based on a set of skills, knowledge, practice and traditions related to the production, processing, preparation and consumption of food. It is associated with an essential spirit of respect for nature that is closely related to the sustainable use of natural resources. The basic knowledge and the social and cultural characteristics associated with Washoku are typically seen during New Year celebrations. The Japanese make various preparations to welcome the deities of the incoming year, pounding rice cakes and preparing special meals and beautifully decorated dishes using fresh ingredients, each of which has a symbolic meaning. These dishes are served on special tableware and shared by family members or collectively among communities. The practice favours the consumption of various natural, locally sourced ingredients such as rice, fish, vegetables and edible wild plants. The basic knowledge and skills related to Washoku, such as the proper seasoning of home cooking, are passed down in the home at shared mealtimes. Grassroots groups, schoolteachers and cooking instructors also play a role in transmitting the knowledge and skills by means of formal and non-formal education or through practice.」」

身体に良いという文章は、日本政府側が提出したノミネーション文書の中の文です。ユネスコはそれについてはイエスともノーとも言っていません。
ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけ。」です。
文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている土井さん、あなた国際機関の仕組みを知らないですね?

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

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食育で宗教行事が駄目なら五節句も駄目よ。

2023年12月01日 | Weblog
ある管理栄養士さんが「食育ではクリスマスを取り上げてはいけない。クリスマスはキリスト教だから、食育では宗教行事より五節句を指導した方がいい。」とXで言っていたそうです。
ダブルスタンダードなので腹を抱えて笑いました。だって五節句って、宗教行事ですよw

中国の陰陽五行説という古い宗教に基づいて端午の節句(5月5日)や七夕(7月7日)や重陽節(9月9日)などをお祝いしたのが五節句ですよ。
特に七夕は中国の神話が起源です。キリスト教は駄目だけど中国の宗教ならいいの?
ふーん。食育の目的はやっぱり、洋風を廃絶することで日本文化を中国文明の末端にすることかしら(笑)

ちなみに、日本で祝っているクリスマスはキリスト教と全然違うため
宗教から切り離して解釈すべき一つの行事になっています。

イチゴショートのクリスマスケーキは日本人の発明(これは過去のブログに既出)。
日本ではキリストの誕生なんてお祝いせず、プレゼント交換しご馳走を食べる日ですよ。
勉強の為にプロテスタント教会でクリスマスを見学させてもらったことがありますが、サンタさんもプレゼントもなんにも有りませんでした。
聖書を読み賛美歌を歌い厳粛に執り行うのがキリスト教のクリスマスで、日本人が一般的に知っているクリスマスとは全然別物でした。

だから、私たちがやっているクリスマスは、日本人がアレンジした「遊び」です。それを食育に取り上げるのは、宗教色が無いから全く問題無いと思いますよ。

むしろ、七夕様で中国神話の神様の名前を教えたり、端午の節句で菖蒲を薬草として用いる厄除けの方がよっぽど「中国の古代宗教に基づく呪詛的要素」が大きいと言えるでしょう。
食育から宗教的要素を取り除きたいなら、五節句の指導は止めたら?日本が中国の下っ端になる前に。

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和食国民会議が「ユネスコに一汁三菜が登録された」と誤解を流している。

2023年11月08日 | Weblog
本当に残念です。いままでこのブログで何度も紹介したとおり、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」は、一汁三菜ではないし日常的和食でもないし、ユネスコは和食が健康的とは認めていません(あくまでも日本側がプローザル文書に健康的であると書いて申し込んだだけですので、ユネスコ側では健康的であるかどうかは判断していません)。いままで数回に分けて、ユネスコのホームページと、実際の日本のプローザル文書の翻訳などをひいてこのブログで説明してきました。

ユネスコが登録したのは、正月の伝統的おせちなどの絶滅寸前文化のことです。おせちはデパートなどの新作創作料理を購入する人が増える一方で、地域の伝統的な食べ方は絶滅寸前なので、そのような「消えそうな文化」を守りたいからユネスコ側は登録したのです。

しかし「一般社団法人和食文化国民会議」という団体が、ホームページと宣伝動画を介して、ユネスコに登録されたのは一汁三菜で身体に良いのだという誤解を広めています。
例えば、ここに引用したホームページ画像(https://washokujapan.jp/mini_washoku_lesson/info-20211216/)をご覧ください。
頁タイトルが「ユネスコに登録された「和食」とは?」とあるのが肝です。


この動画のvol.1では、ユネスコに登録されたのは「絶滅の危機があると考えられる和食」であることをさかさに解釈して「和食文化は消えつつある!」と叫んでいます。すぐに詭弁だとわかりますよね。逆は真ならずです。しかし番組では「和食は消えつつある!このままだと深刻な事態です!皆さんもっと和食を食べましょう」と視聴者をあおり立てて、続くvol.2の動画で、和食の基本は一汁三菜だからこれを食べましょうと勧めているのです。

ユネスコ登録の和食と、非登録和食(一汁三菜や日常的和食など)を視聴者が混乱するように意図的な頁作りをするなんて、ユネスコの関係者がこの頁を見たら激怒するでしょう。(ユネスコ関係者に通報しようかな♪)

私自身は日常的な和食も好きですが、ユネスコに登録された和食と私たちが普段食べている和食は異なるものです。国民会議の内容は、世界に対しても、私ら和食好きの日本人に対しても、和食の意味を意図的にしっちゃかめっちゃかに解釈して侮辱しているようにさえ見えます。

ところで、ユネスコ本部の委員会から生まれてユネスコと協調活動しているICOMOS(国際記念物遺跡会議)の 「神宮外苑再開発事業撤回に向けた緊急要請」について、多くの日本人は無視しています。ユネスコの有形文化遺産保護関係者が日本の景観の美しさをたたえて保存したいと言っているのにそっちは無視を決め込んで、和食だけ万歳万歳しているのってなに?こんな態度ばかり取っていたら「日本人はいいとこだけつまみ食いのダブルスタンダード民族だ」と冷たい目で見られますよ。同じ日本人として全く恥ずかしいことです。

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「和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたから**が流行した」は大げさ。

2023年09月24日 | Weblog
前回の山下さんの番組は録画したので後で見て感想を言おうと思います。その前に、日経の9月16日の記事が間違っているので、指摘しなければなりません。記事のタイトルは「瓶ラムネは過去のもの?」。ラムネのガラス瓶が不足しているという記事です。

この文章の最後に、ラムネ生産量が増えたのは欧米への進出に成功したからだと書いています。そこまではいいのですが、問題なのは、欧米に進出したきっかけは「和食」が2013年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことで欧米で日本独自の食品が注目されるようになったからだとしている部分です。それ、違いますよ!

英語圏のネットをいろいろなタームで検索しましたが、「ユネスコの無形文化遺産ニュースを聞いてラムネに関心を持ちました」なんて話は見つかりません。もしかしたら数十億人の外国人のうち100人ぐらいはそういう人もいたかもしれないけどせいぜいその程度です。

海外でラムネが人気になったのは、まず第一に、独特なボトルの形(コッドボトルと言います。)と開け方が海外のソーシャルメディアで話題になったためです

その形がそんなに受けるの?と思った方に、一例を紹介します。登録者が9万人いる英語圏ユーチューバーの「1D10CRACY」さんは7ヶ月前にHow to open Japan Soda called Ramune Drink. Why the funny bottle?という動画を公開して705万回再生されています。彼の動画ではBantaを紹介するのも64万回再生されています。
Banta(またはGoli)は、インドのコッドボトル清涼飲料水です。英語圏ウィキペデイアによるとイギリス支配当時からインドに広まったそうで、Bantaの風味は日本のラムネとちがいますが、日本の場合と同様にお祭りに欠かせないドリンクなのだそうです。

コッドボトル飲料は、現在では日本とインドの2カ国だけで販売されているんですよ。
要するに日本文化だからというよりも、「面白い開け方をする瓶だから試して見たくなる」なのです。

しかも、先ほど紹介したラムネ動画へのコメントで、一部の視聴者が「この瓶はもともとヨーロッパで発明されたんだよ」と指摘しています。そうなんです。イギリス人のHiram Coddさんが1872年に特許を取った瓶なのです。発明当時は欧米各国に広まったのですが1892年に金属の王冠でボトルの蓋を閉める方法が発明されたため、コッドボトルは消えていったのでした。イギリスでは1800年代のコッドボトルが収集家のアイテムになっているほど貴重なのです。つまり「僕ら欧米人の間で消えた伝統が、なぜか日本に残っている」というところも面白がられるポイントです。

もう一つ、ラムネ人気を担ったのは1980年代以降に大量に欧米に輸出された日本アニメやマンガです。ラムネを飲むシーンが描かれたため欧米の子供たちが飲んでみたいと思い、数年後には青年や成人になり、一部の人は来日したり何らかの理由でラムネを手に入れました。そこで改めて、欧米の伝統の味「炭酸水」とよく似た美味しい炭酸飲料だと確認し、ネットなどで情報共有して話題をじわじわ広めたのがゼロ年代頃以降です。ユネスコよりずっと早くから欧米でこうして人気のベースが作られたのです

また、ラムネは様々な味がありますが、ベースは大正時代に日本人が「欧米伝統の炭酸水」をまねて作ったものです。レモネードという言葉がなまってラムネになりましたが、味はレモネードをまねせず、その代わり欧米で日常的に飲まれる炭酸水をベースに甘い味と香りをつけ、のどに心地よい飲み物にしたのです。だから欧米のリピーターがついたのです。

そして、ラムネ消費が拡大した最大の理由は 「アベイラビリティ(手に入るようになった)」これにつきます。欧米のソーシャルメディアが話題に取り上げても、欧米で売ってなければ、「来日しないと飲めません」になる。日本のメーカーや輸出商社が、欧米スーパーとの契約に成功したから、世界中のスーパーでラムネが手に入るようになりました。

これがきっかけで、「わざわざ日本にいってまで飲みたいとは思わないけど1980年代や90年代の子供時代にアニメでみたあの飲み物はどんな味なのか試してみたいな」「インターネットで一部の人が面白くて懐かしい瓶のドリンクがあると言っていたので気になるな。でも探してまで買いたいとも思わないな。」とぼんやり思っていた層にも届いたのです。それで飲んでみたら欧米人にも受ける美味しい味だったのでまた近所のスーパーで買いたい、とリピーターがついた。この「アベイラビリティ」こそがラムネ売り上げに最大の貢献をしています。

新聞社さん、最近やたらと「ユネスコの和食登録が原因で日本の食品が人気」と話をでっち上げるのはなんでですかね?そんなにまでしてユネスコの話を作り上げなければならない理由でもあるんですか? どこかの政治家か官僚にそう言えとお叱りを受けているんですか?本当のところを教えて欲しいものですね。

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山下惣一先生が身土不二に疑問を持った理由。

2023年09月21日 | Weblog
NHKが近々、農民作家の故山下惣一先生の特集番組を放送するそうです。
NHKは生前から山下先生が好きでしょっちゅう登場させてたからなあ~。
心配なのは、番組予約画面で、「身土不二を唱えた山下さん」、って趣旨を言っているところです。

身土不二ねえ。あれ、食養会が発明してそのスピンオフのマクロビオティックが精力的に広めた言葉なんですけどね、食養会もマクロビも身土不二を盾に「ミカンを食べるな!」って禁止しているんですよね。
だって、昔の東京人からみたらみかんは遙か遠方の和歌山や愛媛などから届くから。「地元の食品じゃないのを食べると病気になる。それが身土不二という言葉の意味。」って理屈だったんですよ。

ましてや山下先生は佐賀県唐津市のミカン農家。身土不二なんて言葉は商売上の天敵ですよ。

山下先生は「身土不二の探求」という本で、この言葉のうさんくささも正直に記してます。仏教の身土不二(しんどふに)と食養会の身土不二(しんどふじ)は本来関係ないのに仏教と混合されたことや、それではもともと仏教の方ではどういう言葉なのか、などを調べた労作です。(ただ、今では彼の調査不足の点も明らかになっています。)
山下さんは身土不二について、魅力的だけどきわどい言葉と懸念も抱いていました。他のエッセイや講演などでは、韓国の農協幹部が食養の説に魅力されて韓国に広めようとしたけど、日本人が創作した言葉だなんて言う訳にいかないもんだから「我が国には中国伝来の身土不二の伝統がある、地元以外の食品を食べると病気になるという中国の伝統だ」と作り話を創作して韓国の辞書に載せたアカン経緯や、そんな韓国初発のでたらめな説を信じた日本で身土不二ブームが起こった、という、実にきな臭い裏事情も正直に語っています。
NHKの番組紹介欄に書かれているような単純に「唱えていた」というのとは山下さんの本音からはずれています。

山下先生も草葉の陰で歯がゆく思っているのでは。どういう番組になるのか期待と不安が入り交じってます。

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ユネスコ無形文化遺産に登録された和食は一汁三菜でない。発酵食品も強調してない。

2023年08月30日 | Weblog
朝倉書店といえば信頼できる書店だったはずなのですが、朝倉農学大系5「発酵醸造学」(北本勝ひこ編)p8の次の記述は明らかな間違いです。

引用「2013(平成25)年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルなどが特徴とされる。和食にとって、醤油、味噌、みりん、それに日本酒などの伝統的な発酵食品はなくてはならないものである。」

違います。ユネスコに登録された和食は、正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものです。ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも発酵食品はだし(昆布や椎茸などの非発酵型のものも多い。)とともに並列で紹介されているので、特に発酵食品に重きを置く内容ではありません。

北本先生の文章は明らかに何か誤解しています。

ユネスコに日本政府(文化庁と農水省)が実際に登録した文章はこちらのURLから読めます。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコのホームページの概要とノミネーション文書は英文です。英語は苦手という方のため翻訳を以下、紹介します。

まず、ホームページの概要記述をgoogle翻訳したもの。
「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」


続いてノミネーション文書のうち、和食の説明をしている部分(画面の左から英語版pdfをダウンロードして、マイクロソフトの機能で自動翻訳。和食に関連する個人の名前、登録者の住所や電話番号などの情報はカットしました。また、「土双」は屠蘇の間違いと思われます。)

B. 要素の名前
和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

B.2. 該当するコミュニティの言語およびスクリプトの要素の名前 (該当する場合)
和食; 日本人の伝統的な食文化 -正月を例として-

C. コミュニティ、グループ、または該当する場合は関係する個人の名前
(省略)

D. 要素の地理的位置と範囲
この要素は、州の領土全体で実践されています。
基本的な共通点を持つが、北日本の北海道から南日本の沖縄まで多様性に富み、地理的条件の多岐にわたることや歴史的背景の違いに対応している。多様な魚介類や農産物、山菜などを活用することで、地域に多様性が生まれ、日本各地に特有の伝統的な食文化が地域の人々に育まれてきました。


E. 連絡窓口
(省略)

1. 要素の識別と定義
(省略)

(一) 要素を見たことも経験したこともない読者に紹介できる要素の簡単な要約説明を提供します。

WASHOKUは、食品の生産、加工、調理、消費に関連する包括的なスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用に密接に関連する自然を尊重する本質的な精神に関連しています。WASHOKUは、日常生活の一部として、また年中行事とのつながりを持って発展し、自然環境や社会環境との人間関係の変化に応じて常に再現されています。
和食に関する基本的な知識、社会的、文化的特徴は、日本人が世代から世代へと受け継がれる伝統に没頭し、アイデンティティと継続性を再確認する新年の儀式で典型的に見られます。新年のお祝いの和食は 、各州が独自の歴史的および地理的特異性を持っていることを考えると、地域的に多様性に富んでいます。人々は来年の神々を歓迎するためにさまざまな準備をします。餅を叩いたり、美しく装飾された料理「おせち」「雑煮」「土双」など、それぞれが象徴的な意味を持つ新鮮な食材を使った特別な料理を用意しています。これらの料理は特別な食器で提供され、家族が共有したり、コミュニティメンバーがまとめて共有したりして、人々の健康と社会的結束を確保します。これは、高齢者がこの社会的実践に含まれる意味を子供たちに教える機会を提供します。
和食は、伝統的でバランスのとれた食事を共有することで、日本人がアイデンティティを再確認し、家族やコミュニティの結束を育み、健康的な生活に貢献するために、日常生活の中で重要な社会的機能を持っています。


(二) 要素の担い手と実践者は誰ですか?
(省略)

(三) 要素に関連する知識とスキルは今日どのように伝達されていますか?

家庭料理の適切な味付けやその精神的・健全な側面など、要素に関する基礎的な知識や技術を「おふくろの味:家庭料理」と呼びます。彼らは両親や祖父母から家で彼らの子孫に受け継がれました。地域の高齢者は、自分たちの食文化を若い世代に伝えてきました。これらの精神的で健全な側面、文化的知識とスキルは、食事の時間とイベントを一緒に共有しながら、 主に口頭の伝統と実践によって伝達されてきました。
草の根グループはまた、公式および非公式の教育(学校や料理教室での伝統的な食文化の講義など)または体験の提供(地域の特産品のデモンストレーションや提供など)を通じて、知識とスキルを子供や若い世代に伝えます。
また、学校の先生は、生徒に伝統的な食文化を体験する機会を提供することで、学校のカリキュラムや学校給食の要素に関する知識やスキルを伝達しています。
料理インストラクターは、料理学校や都市の文脈でのいくつかのイベントでそれらを送信します。
また、元素の専門知識・技能を実習生に伝承 し、見習い制度を通じて元素の専門知識を一般社会に伝達することに貢献しています。
これらの知識や技術は、多様な文化の流入や技術開発などの社会環境の変化に応じて常に再現されていますが、その根底にある精神と機能は引き続き浸透しています。したがって、この要素は日本人にアイデンティティと継続性の感覚を提供します。


(四) その要素は今日、そのコミュニティにとってどのような社会的および文化的機能と意味を持っていますか?

日本人は、他の日本人が消費し、先祖が享受していた文化的、社会的、栄養的に適切な食事を共有することで、帰属意識を高め、日本人としてのアイデンティティを再確認します。 例えば 、お正月の特別食によく使われる餅やだし、発酵調味料の味や香りは、日本の伝統的な食生活の象徴であり、日本の伝統やアイデンティティを再確認する貴重な機会となっています。
社会的および文化的機能の観点から、この要素は、非常に高齢者や障害者を含む家族やコミュニティ間の家族的および社会的結束を促進します。新年のお祝いのためのご飯を叩くなど、地域連携や相利共生による様々な行事のための食事の準備は、連帯感や親睦を強める一例です。 食事の時間を共有し、自然の恵みのある食材を一緒に鑑賞することで、人々は家族やコミュニティのメンバーの絆を強めます。このように、 和食原料の生産において農家が共有する連帯の精神など、社会関係資本の発展の基礎を築いてきました。
また、日本人の健康生活、長寿、肥満予防にも貢献しています。米、魚、野菜、山菜など、自然を基盤とした様々な食材や地元産の食材を摂取する必要があるため、栄養的にバランスが取れており、日本人にとって文化的に意味のある食事です。 また、濃厚な旨味のあるだしや発酵調味料に関する知識と実践は、動物性脂肪の代替により、カロリー摂取量の低減や肥満予防に貢献します。

(以下略)

以上で翻訳はおしまいにしますが、ユネスコが受け取った上記文章はあくまでも日本政府側がノミネーションで主張した文章なので、ユネスコは健康面の効果を確認して居ません。ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけよん。」です。文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている馬鹿がいたら、それは国際機関の仕組みを知らない方でしょう。

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

最後に一言。皆さんもちゃんと原文に当たってね。


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朝日新聞の「発酵ブーム」記事の疑問点

2023年07月16日 | Weblog
2023年7月9日朝日新聞デジタルに、実に興味深い記事が掲載されました(11日には本紙にも掲載されています)。発酵食品ブームを牽引していると自称する「小倉ヒラク」さんが、発酵ブームはうれしいけど、発酵食品でナショナリズムを喚起して政治利用しようとしている動きがあるので特に農水省当たりには目配りしてくれ、と書いているのです。

ヒラクさんは「安易に民族的精神性や「日本スゴイ」に結びつけるのは危険です。」と指摘し、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された時に「独自性が過度に強調され」たと書いています。そのユネスコ登録文書にも記載された新鮮な食品を最小限の加工で食べる伝統(=刺身や煮物、焼き物、酢物などが該当します。)は、明治以降の「作られた伝統ではないか」と主張しています。

確かに和食をナショナリズムの高揚に結びつけてはいけません。その点は賛成します。
しかしヒラクさんには申し訳ないけど、ヒラクさんの文章には大きな誤解が含まれているし、彼の人脈を見ると彼の発言に隠された本音が見えてきます。
 先に人脈の方を指摘しましょう。その方がわかりやすいから。

 ヒラクさんは①2010年に東京農大名誉教授の小泉武夫氏の元で学び、②スピリチュアル系右寄りニセ科学で大変有名な「マクロビオティック」の信奉者に支えられてマスコミの寵児になった人物です。

 小泉氏は東京農大教授時代の2001年に「食の堕落と日本人」という本を書き、その内容は完全に洋風の食事を「堕落」として否定する本でした。和食を食べない日本人は堕落しており正しい日本人は和食を食べなさい、洋食を止めなさい、という本です。おやおや、最近のどこかのナショナリズム喚起政党の発言内容とそっくりですよ。小泉氏のこの本は大ヒットしました。農水省より前からナショナリズムを喚起・利用していた訳です。
 その小泉氏の弟子であるあなたが何を言うのかと問いたい。

そして、小泉氏は雑誌ソトコトでのスローフード連載で「食の総理大臣」という称号を授かって、和食こそが正しい、と右寄りの説を唱え続けたんですよ。誌上で総理大臣ごっこしながらなんて、ナショナリズムの発露ではありませんか。

 ソトコトは当時スピリチュアルもよく載せていたので、スピリチュアルなマクロビ人脈が小泉氏の知己になって行きました。もともとマクロビは「米をたくさん食べることが正しい。洋風の食品は避けなさい。」と民族的精神性を重視する発想だったので、ますますそういう人が小泉氏のファンになりました。
 
 で、②なんですけど、ヒラクさんは自分自身のブログでも自伝を記して、「最初のターニングポイントは、2011年以降。環境や自分の生活環境に不安を抱える人たちが発酵に持つようになりました。僕の講座に参加する人で一番多いのはこの人たち。マクロビや菜食主義の実践者」((https://hirakuogura.com/?p=7419 参照 2023年7月16日))と述べました。つまりマクロビに向かって足を向けて寝られないほどマクロビに恩義を受けているのがヒラクさんだと判明。
 ほかにも有名な和風自然化粧品の「あきゅらいず」の広告対談では、ヒラクさんはマクロビで有名な中島デコ氏と対談して、女性の間で知名度を上げました。

対談広告から引用しましょう。
「【中島デコ×小倉ヒラク対談#1】美肌の秘訣は、毎朝の味噌汁と「好き」を極めること2016.11.18 ある晴れた日、千葉県いすみ市にある「ブラウンズフィールド」で、発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが料理研究家の中島デコさんを訪ねました。ヒラクさんは、「大人すはだ」の運営元である「あきゅらいず」の創成期のメンバー。デコさんも5年ほど前に「あきゅらいず」の代表である南沢典子さんに出会い、以来お付き合いが続いています。」((http://otonasuhada.jp/dialogue_deco_and_hiraku_1/ 参照 2023年7月16日)) 

①に話を戻すと、小泉氏は洋食否定運動を開始してしばらくして、農水省からお誘いがあり、様々な検討会講演会で、日本は世界一の発酵の国!と「日本スゴイ!」を連発して、農水省の食育分野で広く活躍したのですよ。
 ヒラクさん、あなたの師匠が農水省を踏み台に食育で「日本スゴイ」を散々広めておきながら、今更「麹を使ってナショナリズムをやってる農水省には目配りを」って他責するなんて恥ずかしくないのですか?農水省がナショナリズム的な思想に傾倒するようになったのなら、それはあなたの師匠のまいたタネではないでしょうか。

 さて、ヒラクさんが朝日記事に書いた説「「正しい和食」は生鮮な食材を使用するという説は明治時代にねつ造された伝統だ、なぜなら和食は発酵大国だからだ、明治時代に食の廃仏毀釈が行われたため、ねつ造されたんだ」という趣旨のトンデモ発言も、食文化論を分かってないようです。

 そもそも「正しい和食」と言ってるのはだれ?そうやって「麹や発酵食こそ正しい日本の伝統」と言ってナショナリズムをあおっているのはヒラクさんですよ!

 「和食」の定義は文脈や場面によって異なるというのが、多数の食文化研究者の共通的考え方です。あの第一人者の熊倉功夫先生でさえ、書く媒体によって定義を使い分けているため、時々自己矛盾することを言っていますよ。私自身もブログで何度も「和食」は文脈によって様々なパターンがあるため定義が難しいと指摘しています。「正しい和食」があるという考え方を共有しているのは、むしろヒラクさんとヒラクさんの師匠の小泉氏ではありませんか。
 
 「正しい和食」は無いが、他国(欧米や中国韓国など)との差異はあります。特徴という言葉でも言い換えられるでしょう。そして、外国人に「日本の食の特徴は?」と問われた時に、「発酵食品です」と言ったら相手に差異を説明しにくいものです。いくら「日本は発酵食品大国で麹が麹が」と言ったところで、諸外国にも似た文化があるからです。似た文化を説明しても特徴ではありません。

似た文化を「特徴だ」と言い張ると、例えばこんなわびしい結果になります。
「麹?ああ、うちの国のクモノスカビ文化を取り入れようとして失敗した結果ですよね?うちの国は堅い穀物を生のまま粉砕して固める技術があったから、餅麹(クモノスカビを穀類にはやしたもの)ができたんですよね。日本にはその技術が無かったから米を蒸して菌類を生やすしか方法が無かったわけだけど?」
「麹?ああ、うちの国も発酵食品大国で、パンにビールにワインにチーズ。コウジは身体に良い?はあ、それを言ったらチーズも身体に良いけど。コウジは美味しい?ビールも美味しいよ。・・・あなた自分の物差しで話してない?」

このように発酵文化は和食の特徴としては不適切です。発酵以外の何かを特徴として明確に説明が出来ないと、日本はどこかの国の属国扱いされかねません。そこで明治時代に、洋・中・韓との違いを明示できる特徴として、新鮮な食材を最低限の加工度で提供するのが日本の食文化の特徴だと気づき指摘したわけです(例えば刺身、煮物、焼き魚、貝の吸い物、おひたしなどです)。これらの調理法は明らかに他の文化体系と異なる事実です。正しさの押しつけでもねつ造でもありません。

ユネスコ無形文化遺産に和食が登録された時に、新鮮な食材を使うのが和食の特徴だとされたのは当然です。大陸文化等と決定的に違うところを説明出来ないなら、ユネスコが登録するはずもない。それなのにヒラク氏は、こうした大陸との差異の指摘をねつ造だ、「独自性が過度に強調され」ていると言っているのです。残念な方だと思いました。

先に、ヒラクさんはマクロビ仲間を大事にしなければならない立場に置かれていることを指摘しました。しかもマクロビは漬物が大好きです。マクロビ擁護のために、「新鮮な食材を食べる日本の伝統」はねつ造だと主張しているのではありませんか?
しかも小泉氏やマクロビが散々盛り立てた「日本スゴイ」を役所の責任に押しつけて、「日本のコウジスゴイ!」って宣伝するなんて・・・良心がとがめませんか。


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海外抹茶ブームの陰で国産抹茶の危機が。

2023年06月25日 | Weblog
近年欧米諸国で抹茶が大ブームです。火付け役になったのは大手カフェチェーン店などの抹茶ラテと言われています。その結果、ドリンクやお菓子などを美しい緑色に染められると、抹茶が大人気です。日本の高級抹茶は高値で輸出され業界はうれしい悲鳴だそうです。しかし、英語圏の情報を検索していて、大きな問題が生じつつあることに気が付きました。抹茶生産者も多分まだ知らないと思いますので、急いで紹介します。ぜひ対応急いでほしいと思います。

4,5年前からアメリカなどでは、バタフライピー茶をブルー抹茶、ドラゴンフルーツの粉末をピンク抹茶と命名して売り出す企業が現れています。このため、アメリカのお茶ブログでは「ブルー抹茶は抹茶ですか?」と言うQ&Aを設けているページさえあります。(答えはもちろんノーです。)

幸いまだ英語圏ウキペディアでは、抹茶はあくまでもチャノキの粉末に限られるとしています。しかし、すでにInstagramではバタフライピー茶をブルー抹茶として紹介する動画が1,000,000回再生されているケースもあります。
このまま放置すると、数年以内に英語圏では「マッチャ」は単に「赤や青や緑などカラフルな色を飲み物やお菓子などに与える色素」という意味に変換することでしょう。

日本の茶業界が適切に対応しないと、「マッチャは植物性色素の総称であり、その中に緑色のチャノキ粉末も含まれる」となるでしょう。和食の大好きな私としては、このようにお茶の位置づけを矮小化する誤解が広まる可能性を危惧しています。


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「漬物を食べて野菜不足が解消出来る」の嘘。

2023年06月13日 | Weblog
6月3日の朝日新聞be「食のおしゃべり」欄に良い記事が載っていました。タイトルは「漬物で野菜摂取量アップ?食塩取り過ぎに注意」です。
この記事によると、農林水産省が4月末に「漬物で野菜を食べよう!」という取り組みを発表していたが、どうも科学的におかしな内容なんだそうです。
そもそもそんな取り組みがあるなんて知らなかったので農水省ホームページを調べたら確かにやっていた。
 農水省によると、日本人の野菜摂取量は、厚生労働省の策定した目標値より70グラムほど少ないので、このたび漬物で野菜を食べるように勧めることにしたそうです。チラシを用いて各種イベントでもっと漬物を食べようと訴える、ということです。農水省の言い分では「生野菜70グラムは、梅干しなら35グラム、福神漬けなら33.6グラムで済むので、漬物は少量で健康に良い」という説なんですが、ちょっと待ったああああ!それ、間違いですよ。

 まず、朝日新聞の指摘を書いてから、次に私の付け足し情報を書きます。
 朝日新聞の指摘では塩分取り過ぎになるのが心配だということです。「食塩の過剰摂取は高血圧の要因で、ひいては脳卒中や腎臓病を招く恐れがあります。胃がんとの関係も指摘されています。日本人にとって最重要の栄養課題なのです。」ということで、日本高血圧学会の三浦克之滋賀医科大教授にも伺ったところ、日本人の食塩摂取量の約10%が漬物からだったという研究結果もあり、学会でも高塩分の漬物をひかえるよう奨励していたのに、農水省のメッセージは「国民を混乱させる危険性があります」ということでした。三浦教授の指摘は非の打ち所もない事実です。

 そこへ私からも追加情報を投下します。
 農水省のそのチラシでは「漬物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、乳酸菌などを含みます」といかにも漬物は身体に良いように誤解するキャッチフレーズを書いて居ましたが。それ、大げさなんですよ!
 実際に最新版の八訂日本食品標準成分表で、調べてみました。
 農水省は福神漬け33.6グラムを取れば生野菜70グラムに相当すると言うので、皮をむいた大根生サラダにマヨネーズ(全卵)10グラムをかけて食べた場合とで栄養価を比較しました。驚きましたよ。サラダの方が葉酸やカリウム・マグネシウムなどのビタミン・ミネラルが多いのでした。塩分は福神漬けは1.7グラム、マヨネーズサラダなら0.2グラム。後で述べるけど福神漬けにはほとんど乳酸菌が入ってません。これらを総合的に判断すれば、サラダの方が健康にいいことはすぐわかります。(ちなみに農水省は福神漬け33.6グラムの食塩量を1.1グラムと少なく表示してましたが、特別に減塩な製品では?)

 福神漬けだけでは信じられないというあなたに、キュウリの例も挙げましょう。
 キュウリは浅漬けなら56グラム食べるだけで生キュウリ70グラムに相当し、食塩量は0.8グラムだと言う農水省。
 でも実際に八訂で塩漬けキュウリと生キュウリ70グラムに全卵マヨネーズ10グラムをかけたサラダを比較したら、サラダの方がほとんどのビタミン・ミネラル量が勝っている上に食物繊維量はほぼ同じ、それで塩分は塩漬けが1.4グラム、サラダは0.2グラム。
どう考えてもサラダの方が良い。それに塩分量が農水省側は大甘表示なのはなぜでしょう。

それでも信じられないという方のために、キュウリの古漬け(食品成分表では醤油漬けに相当)とキュウリマヨネーズサラダを比較したら、これもビタミンやミネラルがサラダの方が多いんですよ。
 なんで漬物より生の野菜の方がいいのでしょう。それはね、漬物にすると、つけ汁にビタミンやミネラルが溶け出て失われるからです。身も蓋もない話ですね!!

 いやいや、漬物には乳酸菌があるじゃないかー!!と叫ぶそこのお姉さん。それも誤解なんです。農水省のチラシでは、19種類の漬物を写真入りで紹介していたんですが、業界関係者など見る人が見れば、メーカーや製法が分かるんですよ、ふふふ。農水省さん、国民をなめないでちょうだいな。写真を見る限り、確実に乳酸菌がたくさん含まれているのはたった一つ、キムチだけです。キュウリ・大根・キャベツ・なすなどの浅漬けも掲載されてますが、これらはメーカーが乳酸菌を添加しない限り、それほど発酵しないうちに出荷されるので、乳酸菌の健康効果はほんのお気持ち程度です。漬物から取るよりヨーグルトから取る方がたっぷり乳酸菌がとれますよ。

 チラシ写真のきゅうりの「古漬け」は某有名メーカーのだとすぐ分かるんですが、会社さんの為に名称を伏せます。この漬物は中国で塩づけしたキュウリを輸入して、国内で殺菌した調味液に付け直しているので、乳酸菌はほとんどありません。「干し大根の古漬け」「カブの浅漬け」「福神漬け」「野沢菜の浅漬け」「しそ漬けきゅうり」「生姜の浅漬け」「らっきょうの古漬け」も同様に、殺菌した甘酢や調味液(酢、塩、醤油、砂糖、うまみ調味料などの混合液)につけ込んで味をしみこませた商品なので、乳酸菌はほとんどありません。乳酸発酵している漬物と調味漬物では色やつやが違うので写真で分かります。
 奈良漬けはというと、あれは5回ぐらい漬け床を取り替えているし、販売する直前にも漬け床を水で完全に洗い流してから新鮮な調味酒かす(業界用語で「化粧かす」と言います)を塗って出荷しています。こういう行程で何度も乳酸菌をこそげ落としているので、健康にメリットがあるほどの乳酸菌は含まれないと考えられます、

 さて、漬物は塩辛いのでつい水を飲み過ぎたり食が進んでしまいます。おなかの中でかさばって早く満腹する野菜サラダやうすい味付けの煮野菜の方がダイエットにもいいでしょう。また、漬物は輸入原料が多く使用されています。日本国内の漬物の多くは、中国産野菜(大根、キュウリ、柴漬け、梅干し、ニンニク、なす、しょうがなど)を塩漬け加工して輸入し、日本国内で調味液などに漬け直しています。また、キムチは韓国産や中国産が多いです。
本当に日本の農業を応援したいなら、漬物を変に勧めるのはよろしくないのではないでしょうか。農水省さん。


訂正と補足(6月16日)・奈良漬けの漬け替え回数を5~10回と書きましたが、現在は4~5回が主流です。お詫びして訂正します。・上記の農水省のチラシの中に梅干しが紹介されていますが、梅干しの漬ける前の姿は野菜でなく果実(青梅の実)です。青梅の実は毒があるため決して生で食べないでください。青梅は、梅酒にするなどの適切な加工を経て毒を消してからでないと食べられません。このチラシは生で食べるより漬物にした方が効率よく食べられると主張する内容なので、このままだと生の青梅が食べられると消費者に誤解されのではないでしょうか。

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