プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

阿南準郎

2016-09-25 09:30:45 | 日記
1957年

三塁のコーチス・ボックスから水原監督が顔をふせ、クチビルをかみしめ、重い足をひきずりながら一塁側のダッグ・アウトに帰って行く。その横を広島の全選手がダッグ・アウトをとび出してマウンドにかけよる。巨人最後の打者岩本が三振にうちとられた一瞬だ遊撃を守っていた阿南もとぶようにしてマウンドに急ぐ、そして長谷川の右手をおしいただくようにして喜びの言葉をかけた。一点リードされた八回二死二塁、巨人の切り札藤田から右翼席へ逆転の2ラン・ホーマーを打って広島に勝利をもたらした殊勲者阿南はヒーローの珍客といってもいいほどこれまであまりパッとした活躍をしていない「低目の外角球、ストレートだった。藤井さんをかえしさえすればいいと思ってシングル・ヒットをねらっていた。藤田の球はそれほど威力がなかった。2-2と条件は悪かったが、不思議に打てるような予感がした」と自信のほどを披露してくれる大分県の佐伯鶴城高から西野スカウトにひっぱられ広島入りして二年目。これまでは守備だけの選手だったが、最近金山選手などのアドバイスで高目のボールに手を出さないようになってから打撃にもどうやら自信が出て来たという。これがプロ入り二本目の本塁打。四人兄弟の長男。父は佐伯市役所に勤務している。名前は「アナン」と読む。五尺六寸五分、十七貫五百、右投右打、二十歳、背番号50。
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高橋重行

2016-09-25 09:03:18 | 日記
1965年

「ゆうべ午前二時まで眠れず、やっと眠ったと思ったらもう朝の九時ごろには目がさめてしまった。いやんなっちゃった」これは前日、この日の先発をいいわたされて緊張したからではなかった。このところ原因はわからないが、毎晩寝つきが悪く、寝起きがいいそうだ。そんな睡眠不足気味の翌日、今シーズン三度目の完封価値をやってのけた。「眠れないわりにはからだの調子がすこぶるいいんです。そのため変化球にたよらず、ストレート中心の力でぐいぐい押しました。それが自分でも気持ちがいいほどアウトローへ決まりました」高橋は汗ひとつなく、まだまだ続投できそうなケロッとした顔をしていた。「ここのマウンドはとても投げやすいんです。調子が悪いとき、この球場へやってきて投げるとふしぎに調子がよくなる。それほどぼくはこのマウンドが好きなんです」マウンドの傾斜がなだらかだからだろうか。昨年、スワローズを5勝1敗とカモにしていたが、ことしはこの日の完封勝ちを入れて2勝2敗。「ことしの産経にはこれまでよく打たれ、防御率も二・五七と悪かったので、きょうははじめから仕返しをしてやるつもりで投げました」それも完ぺきなピッチングでカタキをとった。「少しできすぎの感じがします。こんな投球をしたつぎの試合のピッチングは大事なんです。気をつけなければ・・・」つぎの登板は阪神戦か中日戦。どちらにしてもロードであることは間違いない。高橋はマクラが堅いと夢ばかりみて眠れないというクセがある。遠征先の旅館のマクラはたいていモミガラ入りの悪いヤツ。「だからぼくはこんなことを考えたんです。遠征先の各旅館に高橋用マクラを置いておくことにしたんです。きのう二個千円の、中がラバーのやわらかいマクラを三つ買ってきました。こんどの遠征からこれをもっていって旅館に置いておくことにします」

天知俊一 高橋のピッチングはテンポが早い。きびきびとしたモーションで、連発式に投げ込んでくる。オーバースローの速球派おどろくほどのスピードはないが、コントロールがいい。ヒザの辺によく決まる。そのうえに数多くの変化球をもっている。シュートもいいがスライダーも鋭い。もっとも効果的なのは落差の大きいややスピードを落としたカーブ。産経打者はこのカーブにタイミングが合わず、下位打者はきりきり舞いさせられた。三安打は許したが、安打らしいのは九回の丸山の一本だけ、全然あぶなげのない堂々としたピッチングであった。それにしても産経打者は気力がない。また高橋に対するくふうもなかったようである。高橋のあの早いテンポに調子を合わせて打つ手はない。あのテンポをくずしにかかれば高橋のリズムにのった快調のピッチングにも狂いが出たかもしれないのである。無四球の奪三振9。みごとな高橋のピッチングであった。
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