7月24日、本を返しに御代田の図書館に行ったときに借りたのが、
「淳之介流-やわらかい約束」(村松友視著 河出書房新社)だった。
そのときには借りたい本があった。
浅田次郎の「終わらざる夏」を読みたかった。
その本は5月の頃、書棚にあることを確認していた。
読みたいと思いながら、別な本を借りていた。
ところが7月になってNHKラジオの「新日曜名作座」で「終わらざる夏」の第1回を聴いた。
この番組は、出演者が西田敏行・竹下景子の2人だけというラジオドラマです。
それを聴いて、無性にその小説が読みたくなった。
図書館に行くと「終わらざる夏」がなかった。
おそらくそのラジオを聴いた人が借りているのかな?
今、オリンピックのためラジオドラマは中断している。
オリンピックが終わるとまた番組は再開する。
興味のある方は聴いてみて下さい。
「終わらざる夏」がなかったので書棚をなんとなく見ていたらこの本があった。
吉行淳之介という作家の名前を久しぶりに見たような気がした。
私が20・30代の頃、吉行淳之介の小説をよく読んでいた。
この人の世界が好きだった。
ところが40代になってからまったく忘れてしまっていた。
懐かしさもあってこの本を借りました。
村松友視の本は、「時代屋の女房」という小説しか読んだことがない。
いい印象であったことは覚えている。
「吉行淳之介とは何者?」
というところからこの本は書き始まっている。
「高名な作家、性を描いた小説家、銀座でモテた男、官能の求道者、花柳小説の系譜、美男子の文士…」
この本は、村松友視が中央公論社で発行している文芸誌「海」の編集者として、
吉行淳之介の担当者になってから、吉行淳之介のことを見続けて書いたものです。
本を読んでいて、こういう2人の関係はいいな、と思った。
村松友視は、吉行淳之介の本質の芯と関わっていると感じたのは、「やわらかい約束」ということだった。
私が吉行邸を訪問したとき、このところ体のぐあいが思わしくなくて、すでに約束してある仕事を
こなすのに四苦八苦……といった意味合いのことを言われていた。そこで原稿を書いてもらうの
は不可能に近いと判断した私は、ホコ先を変えて野坂氏との対談に依頼を切りかえたのだった。
ところが、野坂氏はこの頃旺盛な活躍ぶりを示していた。元気な野坂さんとの対談は、体力的に
しんどいという気がしたのか、私の申し出に吉行さんは「うーん」とうなってから、
「じゃあその対談のはなし、やわらかい約束にしておこうか」
と言った。やわらかい約束とは何ですかと問うと、固い約束ではないということ、という言葉が返
ってきた。ここで、私は「やわらかい約束」という吉行淳之介流に出会ったのだった。
それから私は、村松友視の語る「淳之介流」にはまっていった。