僕たちの好きな「ナルニア国物語」宝島社このアイテムの詳細を見る |
映画は先週末観て来ました。以下、原作も併せてネタバレ有りです。
原作愛読者としては、そのイメージを壊されるということもなく、スケール大きい作品に仕上がっていて満足でした。
特に、街灯の下でのルーシーとタムナスさんの出会いの件りが秀逸。原作者自身愛着を持っていた個所らしいし、ここで観客に引かれては後々台無しになると思うので、丁寧に描いてくれて良かったです。
ルーシィ役のジョージー・ヘンリーちゃん、予告等で観た時には、ちょっとイメージと違うかも…と思ったけど、わざとらしくなく上手かったし、末っ子らしさと同時に、後に「たのもしのきみ」と呼ばれる雰囲気も感じさせてくれました。
さて、ここで一言。
自分は、原作を読んでいない人にこの映画を語ってほしくありません。以上。
それはもう『指輪物語』の時以上にそう思います。
「子ども向き映画」ということを批判の理由とする人がいるようですが、まったく理解できません。
だって、そもそも原作が「或る時代のキリスト教圏(特に英国)の子どもたち」を対象に書かれた「児童文学」なんですよ。その他に何を期待するんでしょうか。
そこに原作の限界がある、ということなら、当然の批判としてまだ理解できますが。
今から原作を読もう、という方もいらっしゃるでしょうし、全七巻を読んだとしても、『旅の仲間』原作を読むより時間はかからないとは思いますが、それもお奨めしません。
こういうものには、それを読むに相応しい年齢というものがあって、ナルニアについては、小学生から中学一、二年までの間に読んでおかなかったら、まず面白くないと思います。
それもまた原作の限界と言えるかも知れませんが、それでいいのです。
と言う訳で、これから原作を覗いてみようか、という人には、むしろ今回上げた別冊宝島の方をお奨めしておきます。シリーズの大筋やキャラクターについて知るためならこれで十分でしょう。
アスランの死と復活が、キリストのそれの寓意であることは一目瞭然です。
エドマンドが象徴する「裏切り」の寓意、罪なき者が全ての罪を贖う犠牲となること、その「死」が徹底的に辱められたものであること等々は、キリスト教の教育を受けた自分にも説教臭く感じられた時期がありました。
その反面、キリスト教から見ての「異教」の神々や妖精や生きものたちが無節操(?)に出て来ることにも違和感を覚え、後に『指輪物語』を読むようになってから、しょせん『ナルニア』は子ども向き、とは私自身も思ったことです。
しかし、改めて原作を読み返して思うのは、「子ども向き」というのは批判の言葉にはなり得ないということでした。
子どもたちにとって、わくわく出来るけれど安心も出来る異世界冒険ものであると共に、それくらいの年代の子どもたちの不安や不満や心の揺れに寄り添ってくれるのが、ナルニア国物語シリーズの最大の美点だと、私は思っています。
『ライオンと魔女』では、エドマンドの屈折もさることながら、末っ子だということで兄姉たちに取り合ってもらえないルーシィの悲しさ(小さい子にとって、これは絶望そのものでしょう)、そして、そういうことを馬鹿にせず、ちゃんと向き合ってくれる、信頼できる「おとな」がいてくれるのがどれほど心強いか、ということを描いているからこそ、このシリーズは現在に到るまで、子どもたちに愛されているのだと思います。
『カスピアン王子のつのぶえ』の映画も制作開始されているそうですが、原作で好きだった、或ることをきっかけに「ピーター王」が復活するシーンがどんな感じになっているか楽しみです。
そしてリーピチープにトランプキン。こういう脇キャラたちが生き生きと描かれているのも『ナルニア』の魅力の一つでしょう。
全七作映画化は…できるのかなあ。
『さいごの戦い』のそれこそ最後の方は、いろいろな意味での「危険」をはらんでいるし、『馬と少年』を現代においてあのまま映像化するのは「政治的に正し」くないと言われそうだし。でも(原作の重大ネタバレ→)四人の大人バージョンやタムナスさん再登場は見たいし、実はラバダシもけっこう好きだし。
本当は早く『銀のいす』と『魔術師のおい』が観たいです。泥足にがえもん大好きだし、後者では(ネタバレ)カーク教授の秘密が明らかになるし。子どもの時、ちゃんと発行順に読んで、それを知った時にはやはり感動しました。
結局この映画は、私にとっては原作への愛着を復活させただけか?と言われそうですが、それはそれで意味あることだと思います。
アメリカで大ヒットしたのも、教会のバスで団体入場しちゃうからで、魔法使いのヒーロー{ハリー・ポッター}をけしからん、という超保守的クリスチャンでさえ、ナルニアには一切文句なし、むしろ奨励しているくらいです。私は十分満足しました。
春休み中は何かと慌ただしく、すっかりお返事が遅くなってたいへん失礼しました。
そうなんですよね。「だってナルニアってそういう話じゃないか!」って言いたくなるくらい的外れな批判が多くて閉口します。
でもヤフージャパン掲示板等は、指輪の時もそうでしたが「悪口のための悪口」と言うか、殆ど荒し目的のような批評(の名にも値しないけど)ばかりなので、真面目に受け止める必要もないと思っていますよ。
一方で、アメリカではそんなことに…どうもアメリカという国は、宗教や信仰に対するスタンスがヨーロッパ中世レベルのように感じられて、これも噂を聞くだけでも閉口することが多いです。