色濃く咲いた冬の薔薇、 エミール・ガレの薔薇に似て、 夏の花とは明らかに違う。 花数も少ないが、 木枯らしに耐え、 葉も赤みをさして強さをみせる。 初夏の軽やかさにくらべ、 凝縮された芳香を放つ。
静かな風情だが 大いなるものを秘めているようだ。 薔薇の下で… 何かが起きる。
…偽善の花よ、 無言の花よ… (グールモン)
薫りだけ残し… て。
旅先で買った薔薇のポプリは、 半分だけ容器にあける。 いつもの習わし。 のこりは何年も飾り棚の 上段に置かれ、いつまでも袋の中。 口をわざと緩くして、扉を開けるたびにふわり、 香りが飛ぶ。 古びた思い出の懐かしい雰囲気までたちのぼらせ、 袋の中で熟成し、 黴びるはずの風景も刺激も、 純度を増している。
忙しい冬の日に、 なんども開け閉めをして、 風圧に流れ出るカオリをそっと愛でる。 乾燥しても失わない植物の匂い。 褪せた色のトウヒも混じって、 アンの物語りまで運んでくる。