ふるさとでは薬師堂を守っていた。 いつのころか、先祖に目を患うひとがあって建てたのだそうだ。 江戸時代かも。 いとこは17代目、いつできたか、知ってるのだろうか…
幼心に「めめ」と書かれた板切れがとても気になった。 絵馬はたくさんかかっていて、「めめ」「めめ」めめ… と、にらみながら、どこまでも追いかけてくるのだった。
4月8日は灌仏会カンブツエ・花祭りの日。御堂の屋根をさまざまな花で葺いた。桶のなかに安置した小さな仏像に、甘茶を柄杓で灌ソソぐ。 この甘茶とは、ユキノシタ科のアマチャを乾燥したもので、麦茶のような色をしているが、とても甘い。目に効くといわれていたけれど。実際、余所のおばあさんが眼元に付けているのを見たことがある。なぜ釈迦降誕の日に(甘露の雨が降ったと伝えられる)、薬師様のおまつりをするのだろうか
祭りの日、近郷の家からお供え餅があがる。その半分はいただいて、のこりは半紙にくるんでお菓子を添え、お返しする習わしであった。祖父母に言いつけられて、近くだけは子供が届ける。 口上を述べ包みを渡すとすがすがしく思った。 どこからともなく花のかおりが漂う、懐かしい野良はずれの家。 暮れるまで駆けまわった。
心太トコロテン売りのおじさんも出て、それぞれ小鉢に突いてもらう。家でハチミツをかけて食べた。つるつる、つるっ! 早くも 初夏の香りがした。
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夏休みの午前中、薬師さまの座敷や濡れ縁で通学班の子がそろって宿題をする。6年生が低学年に教えた。境内の大きな銀杏の樹が影を落とし、扇風機など無くても充分涼しい。 竹藪にござを敷いての勉強会もあった。吸血鬼にやられっぱなしで遊び半分だった。
先生がときどき見まわりに来た。 反暑学習と言ったかな?
無憂華ムユウゲの木蔭はいづこ仏生会 杉田久女
花御堂もろびと散りて暮れ給ふ 日野草城
皆さまから頂きましたコメントをワードに残していましたので
ここに再現いたします。 ありがとうございました。
はじめまして (雲) 2006-04-10 20:02:50
暖かな、優しいお人柄が伝わってくるステキなブログですね。
足跡を残します。
本物の「花祭り」 (boa !) 2006-04-11 07:07:13
感動しました。ここにはそのためにする拵え物とは違った、
本物の「花祭り」があります。
ラグタイムさんの詩情ゆたかな物を捉える目の原点ですね。
辛い日々、薬師様にすがりたい想いが、花祭りの日に、
遠い神聖な記憶を呼んだのですね。
久しぶりに、清浄な空気を腹いっぱいに吸った気分です。
ありがとうございました。
どうぞよろしく (ラグタイム) 2006-04-12 10:32:46
雲さん はじめまして
光則寺の海棠や野草や茶花が花盛り… 目に浮かびます。
12月に出かけて、橘の直径1㎝くらいの実をはじめてみました。
お寺の花暦をいただきました。四季折々の野草のそよぎ、
すばらしいですね。
ありがとうございます (ラグタイム) 2006-04-12 10:51:33
本物boa!さん きっと赤がお似合い… 乗馬の名手
品のよい馨しき文章、ユーモアあふれるエッセイ、
かと思えばしみじみと、そして粋でたのしく教えて頂くことばかり
boa!さんのブログはこちらです ↓
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これから本物をめざしたい 贋蛙より