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遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
あなたの絵は 朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国の あのふるさとの夕灼の色
あなたの胸をそめている 父や母の愛の色だ
どうか恨まないでほしい
どうか咽かないでほしい
愚かな私たちが あなたたちがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく 五十年も経ってたどりついたことを
どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを
遠い見知らぬ異国で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれた かけがえのないあなたたちの生命の時間だけだ
無言館を訪ねて
窪島 誠一郎 館主
母が長野から帰宅した。
いつ以来だろう、母からプレゼントをもらうのは。
あなたになら未来を託すことができる、と添えられたメッセージと
二冊の本だった。
8月15日、感慨深く拝読しようと思います。
そして、彼ら画学生のためにも、灯篭を流したいと思います。