すべては起こるべくして起こり、
最も抵抗ない道を波に乗って進んでいくように感じられる。
目まぐるしくさまざまな出来事が起こっても
何もしていないように感じられる。
老荘思想ではこれを『しないこと、not doing』
あるいは、無為と呼んでいる。
シャーマンズボディより
生理がいつもよりすこし早めに体を浄化する。
タイ自体の天候は悪くはないものの、
早朝の頭痛と頚椎痛は日本よりひどい状態に陥ってしまっている。
そういえば、なのだ。
というか、やはり、とでも言うべきか。
オリエンタルホテル・バンコクが火災だとホテル従業員から聞いた。
日本人観光客も煙を吸って軽症だというものの、
病院に搬送されたらしい。
確かに、サイレンの光が未明に窓外を走り去っていき、
私は彼を思ったのだ。
まさに彼自身の仕事がそれだからだ。
予感は裏切らず、やはり私の行く場所や行こうとしていた場所、
行ってきた場所に何かが起こる。
オリエンタルには火災が起こる数時間前、
夕食後に立ち寄ろうとしていたことを、ふと今思い出した。
南房総のシャーマンは言うだろう。
あなたは守られていますから、大丈夫ですよ、と。
今日は明日の手術に備え、
彼とシンクロしている私自身が落ち着く時間を過ごそうと予定した。
早朝エステへ行き、その後、ホテル近くにあるネイルサロンへ、
外側が美しく仕上がった頃、手術を控えている彼から
「千疋屋の巨峰を美味しくいただきました」というお礼のメールが届いた。
それは術前ではなく、術後の、下を向いたままでも食べられるように、
店の人にすぐに食べられるように下準備してもらっていたのだ。
美味しく食べてくれたのなら満足です、と返信に宛てた。
思っていたよりも落ち着いた印象を持て、私も安心できた。
BANYAN TREE HOTELの最上階にある
OPEN RESTARANTへ行き、
夜景を見ながら食事をした。
急に動悸が激しくなり、私は会社の方々よりも一足先にホテルへ戻った。
というのも、ドレスコードも会話も日本人の恥をさらすようで、
手術前日の彼を静かに思う時間には相応しくない、
そう思ったのが動悸の理由だろう。
私たちの席近くで商談をしていた日本人には怪訝な表情を浴びせられ
私は謝罪するしかなかったのだから。
こんな素敵な場所で、下ネタ以外の会話ができない人たちは
私だって軽蔑に値する。
いや、いい年齢を重ねているのに、と思うのだ。
セックスの数だけを生きがいのように、
女を物同然に扱い、排出することに取り憑かれてしまっている人たちは
私には動物以下に見えてしまうのだ。
先進国の性のしわ寄せも、それ以外の国の女性が行っているとしたら、
私は同じ女として、正直言葉がないのだ。
彼らはかわいそうなことに、満足するセックスを、
愛する女と交わした経験がないものと想像容易い。
あと数時間後に開始する手術に備え、
私も準備をするとしよう。
そして、彼や彼を執刀する主治医のチームは奇跡をもたらすだろう。
彼の笑顔が浮かぶ。
ありがとう、という声が聴こえる。