若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

大企業への悪罵で「公務員バッシングの正体」を片付けてしまう愚かさ

2012年05月08日 | 政治
共産党の『しんぶん赤旗』で、「公務員バッシングの正体」という連載記事が掲載されていた。この連載の存在をここで知り、検索してみたところ、全文をネット上で見つけることができた。

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(1)市民の不満そらす世論操作

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(2)財界奉仕者への転換を狙う

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(3)「全体の奉仕者」の意味は

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(4)全国民への攻撃 見抜いて


「どこが公務員バッシングの『正体』なんか?」とツッコミをしたくなるような、底の浅い記事。大企業への妬みを繰り返すだけで、「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」という公務員への批判に対し、的確な反論がなされていない。

・84万人から30万人に削減された(→郵政や大学が公社化・法人化しただけ)
・災害時、公務員はこれだけの活躍をした(→平時における給料額の根拠にならない)
・大企業は利益を上げている(→公務員の厚遇を正当化する理由にならない)

「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」に反論するのであれば、「普段から公務員はこれだけ有用な仕事をしている」を論じなければならない。特に、公務員は会社員と違って、会社の売り上げからでなく、納税者の負担から給料が支払われているため、納税者に公務の有用性を納得してもらう必要がある。だが、多くの納税者は、公務の有用性、税負担の妥当性に納得していない。だから「公務員バッシング」が起きているのだ。

仮に財政状況が黒字で予算が潤沢にあったとしても、公務の有用性と公務員への給料が見合ったものでなければならない。好景気で黒字財政でも、公務員の不相応な厚遇は許されない。ましてや、財政が厳しく、与野党とも増税を企図している状況で、公務員バッシングが無い方が不自然だ。


さて。

この連載の冒頭で、「公務員=貧困者の敵神話」ということが言われている。これは、事実に基づかない「神話」なのだろうか。

私はそうは思わない。例えば、補助金について、この連載では大企業への補助金のみが批判対象となっている。しかし、大企業に限らず中小企業への補助金、あるいは中央政府から地方自治体への補助金、関税という名の生産者への補助金などなど、様々な形で行政が行う再分配は、効率性・生産性の劣る業種や企業を延命させる。その結果、実質賃金は下がり、雇用の総数も減る。

補助金を初めとする再分配は、補助対象以外の全ての人を貧しくしてしまう。警察・消防・自衛隊といった者以外の、中央官僚・都道府県庁職員・市町村職員は、再分配という(補助対象者以外の)全ての人を貧しくする業務に従事している。そういう点で、「公務員(中央官僚・都道府県庁職員・市町村職員)=貧困者の敵」なのだ。

上で、私は

>「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」に反論するのであれば、「普段から公務員はこれだけ有用な仕事をしている」を論じなければならない。

と述べた。
ここで、再分配はマイナスの効用の方が大きい、という点を考慮すると、「主に再分配事業に従事する公務員に給料を払うことは、1円であっても高すぎる」ということになる。盗人に追銭をするようなものだ。広く強制的に税金を集めて回り、特定の個人、団体へ利益を誘導する公務員。そういった再分配に従事する公務員を擁護する共産党の論調は、全国民への宣戦布告といっていい。

「奪って配る」を生業とする公務員に、「各人の努力のうえに助け合い、連帯し合う社会」「壊されてしまった日本の社会や人間同士の関係」を築きなおすことはできない。
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