あけましておめでとうございます。
12月は13冊読みました。
まずは年末恒例のミステリーランキング、「このミステリーがすごい!」等にランクインした本を5冊。
◆あと十五秒で死ぬ (榊林 銘)
「このミス」12位、「本格ミステリー」10位作品
初読みの作家さん、予想外に面白かった。
15秒をkeywordにした短編「十五秒」「このあと衝撃の結末が」「不眠症」「首が取れても死なない僕らの首なし殺人事件」、猫の姿の死神やら、首の交換が可能な島やら、特殊な条件下の本格ミステリー。
個人的には「このあと衝撃の結末が」が好き。
◆インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー (皆川 博子)
「このミス」18位、「ミステリが読みたい」7位作品。
三部作の最終話とのことだったが私はシリーズ初読み、そのせいか、はたまたあまりなじみのない米国の独立戦争が背景になっていたからか、状況を理解するのにけっこう苦労しました。
ミステリーとして読むか、時代小説として読むか。日本も蝦夷、アイヌの問題があるので人のこと言えないけど、白人の異民族支配ってのは何とも苛烈ですなあ。
◆六人の嘘つきな大学生(浅倉 秋成)
今年の「このミス」「ミステリが読みたい!」8位、「文春ミステリー」6位作品だけど、普通の小説として読んでも十分面白い。
人間だれしも良いところと悪いところを持っている。自分に対しても、他人に対しても、悪いところをスルーして良いところを見ようとする姿勢って大事。自分を好きになることを通じて他人も好きになれるんじゃないかな。波多野くんも葛藤の末自分の悪いところを封じ込めたってことか。本屋大賞にもランクインしてほしい作品。
◆蒼海館の殺人 (阿津川 辰海)
今年の「このミス」5位、「文春」「読みたい!」「本格」でも10位以内にランクインした作品。
この人の本格過ぎるところがちょっと苦手で、そこまでやる犯人の動機が見合っていないよねと思ってしまう。
クローズドサークルでの殺人事件、館ものだけど今回は館そのものに現実離れしたからくりがあるわけではなく、ヒューマンドラマと言うか、昨年の「紅蓮館」よりはかなり面白く読めました。
◆蝶として死す: 平家物語推理抄 (羽生 飛鳥)
時代ミステリー、それもホームズ役が平頼盛とかなり珍しい設定で、歴史好き、ミステリー好きにはたまらない。栄枯盛衰、一門のの存続をかけて権謀術数渦巻く貴族や武家の世界、歴史解釈も平清盛、源頼朝等のキャラ設定も興味深く、面白く読ませていただきました。
引き続き挑戦中のカドフェス2021から4冊。
◆ぼっけえ、きょうてえ (岩井 志麻子)
明治中期の岡山県の、それも時代から取り残されたような、どうしようもなく貧しい寒村を舞台にしたホラー小説。土俗的で、無知で、迷信深くて、こんなところだったらこういうことも起きるかなとおもわせるような、何かが匂ってくるような短編集でした。
◆祈りのカルテ (知念 実希人)
著者お得意の医療ミステリー。連作の短編が5編。主人公で探偵役の研修医・諏訪間が医療現場では日常系?の謎解きに挑む。主人公も担当医も、犯人?の患者さんもいい人ばかりで、安心して読める一作。
◆いつかの人質 (芦沢 央)
最初は失踪した妻を探す気の毒な夫として登場した江間礼遠、その異常さが徐々に際立ってくる。面白くて一気読み。芦川さんのミステリーは外れがない。
◆不連続殺人事件 (坂口 安吾)
「へー、あの坂口安吾が、こんな作品も書いていたんだ」というのが第一印象。
登場人物が多すぎて、最初は整理しながら読もうという意気込みを持っていたのだが、3,4人目の殺人辺りから細かいことはどうでもよくなって、ただただ面白く読ませていただきました。戦後間もないころの推理小説と言うと横溝正史のおどろおどろしさの印象が強いのですが、これはなかなかに軽妙で面白い。傑作と思う。
その他に話題作を4冊
◆君の顔では泣けない(君嶋 彼方)
男女入れ替わりといえば、古くは「転校生」、最近では「君の名は」やTVドラマの「天国と地獄」があるが、最後まで元に戻らないのは珍しい。古典ネタをうまく消化したというか、多少の物足りなさは感じるものの、お気軽にさっと読めてそこそこ面白いお話にはなっている。
◆そして、バトンは渡された (瀬尾 まいこ)
18年の発刊時に単行本を図書館で借りて読んで、良い話だなーと思った。その後、本屋大賞を受賞、映画化ととんとん拍子で出世?した。映画が思いのほか感動的で、でも「あれ、こんな話だったかな」と思う部分あり、改めて文庫本を再読。やはり細部は映画のための演出がたくさんあったけど、でも根底に流れるやさしさみたいなところは変わらない。継父による虐待とか、悲惨なニュースも多い中、大半の市井の人はこの小説に出てくるような優しい人と思いたい。
◆コロナと潜水服(奥田英朗)
奥田さんらしい軽妙なタッチの、ファンタジー色ありの短編集。楽しく、さらっと読めました。
◆神の悪手(芦沢 央)
「弱い者「神の悪手」「ミイラ」「盤上の糸」「恩返し」、将棋に纏わる短編集、芦沢さんというとホラー・ミステリーの印象が強いので、ごつごつした勝負の世界の話はちょっと意外でした。将棋にも造詣が深いんですね。
表題作は傷害致死絡みで芦沢さんらしくて良かった。
12月は13冊読みました。
まずは年末恒例のミステリーランキング、「このミステリーがすごい!」等にランクインした本を5冊。
◆あと十五秒で死ぬ (榊林 銘)
「このミス」12位、「本格ミステリー」10位作品
初読みの作家さん、予想外に面白かった。
15秒をkeywordにした短編「十五秒」「このあと衝撃の結末が」「不眠症」「首が取れても死なない僕らの首なし殺人事件」、猫の姿の死神やら、首の交換が可能な島やら、特殊な条件下の本格ミステリー。
個人的には「このあと衝撃の結末が」が好き。
◆インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー (皆川 博子)
「このミス」18位、「ミステリが読みたい」7位作品。
三部作の最終話とのことだったが私はシリーズ初読み、そのせいか、はたまたあまりなじみのない米国の独立戦争が背景になっていたからか、状況を理解するのにけっこう苦労しました。
ミステリーとして読むか、時代小説として読むか。日本も蝦夷、アイヌの問題があるので人のこと言えないけど、白人の異民族支配ってのは何とも苛烈ですなあ。
◆六人の嘘つきな大学生(浅倉 秋成)
今年の「このミス」「ミステリが読みたい!」8位、「文春ミステリー」6位作品だけど、普通の小説として読んでも十分面白い。
人間だれしも良いところと悪いところを持っている。自分に対しても、他人に対しても、悪いところをスルーして良いところを見ようとする姿勢って大事。自分を好きになることを通じて他人も好きになれるんじゃないかな。波多野くんも葛藤の末自分の悪いところを封じ込めたってことか。本屋大賞にもランクインしてほしい作品。
◆蒼海館の殺人 (阿津川 辰海)
今年の「このミス」5位、「文春」「読みたい!」「本格」でも10位以内にランクインした作品。
この人の本格過ぎるところがちょっと苦手で、そこまでやる犯人の動機が見合っていないよねと思ってしまう。
クローズドサークルでの殺人事件、館ものだけど今回は館そのものに現実離れしたからくりがあるわけではなく、ヒューマンドラマと言うか、昨年の「紅蓮館」よりはかなり面白く読めました。
◆蝶として死す: 平家物語推理抄 (羽生 飛鳥)
時代ミステリー、それもホームズ役が平頼盛とかなり珍しい設定で、歴史好き、ミステリー好きにはたまらない。栄枯盛衰、一門のの存続をかけて権謀術数渦巻く貴族や武家の世界、歴史解釈も平清盛、源頼朝等のキャラ設定も興味深く、面白く読ませていただきました。
引き続き挑戦中のカドフェス2021から4冊。
◆ぼっけえ、きょうてえ (岩井 志麻子)
明治中期の岡山県の、それも時代から取り残されたような、どうしようもなく貧しい寒村を舞台にしたホラー小説。土俗的で、無知で、迷信深くて、こんなところだったらこういうことも起きるかなとおもわせるような、何かが匂ってくるような短編集でした。
◆祈りのカルテ (知念 実希人)
著者お得意の医療ミステリー。連作の短編が5編。主人公で探偵役の研修医・諏訪間が医療現場では日常系?の謎解きに挑む。主人公も担当医も、犯人?の患者さんもいい人ばかりで、安心して読める一作。
◆いつかの人質 (芦沢 央)
最初は失踪した妻を探す気の毒な夫として登場した江間礼遠、その異常さが徐々に際立ってくる。面白くて一気読み。芦川さんのミステリーは外れがない。
◆不連続殺人事件 (坂口 安吾)
「へー、あの坂口安吾が、こんな作品も書いていたんだ」というのが第一印象。
登場人物が多すぎて、最初は整理しながら読もうという意気込みを持っていたのだが、3,4人目の殺人辺りから細かいことはどうでもよくなって、ただただ面白く読ませていただきました。戦後間もないころの推理小説と言うと横溝正史のおどろおどろしさの印象が強いのですが、これはなかなかに軽妙で面白い。傑作と思う。
その他に話題作を4冊
◆君の顔では泣けない(君嶋 彼方)
男女入れ替わりといえば、古くは「転校生」、最近では「君の名は」やTVドラマの「天国と地獄」があるが、最後まで元に戻らないのは珍しい。古典ネタをうまく消化したというか、多少の物足りなさは感じるものの、お気軽にさっと読めてそこそこ面白いお話にはなっている。
◆そして、バトンは渡された (瀬尾 まいこ)
18年の発刊時に単行本を図書館で借りて読んで、良い話だなーと思った。その後、本屋大賞を受賞、映画化ととんとん拍子で出世?した。映画が思いのほか感動的で、でも「あれ、こんな話だったかな」と思う部分あり、改めて文庫本を再読。やはり細部は映画のための演出がたくさんあったけど、でも根底に流れるやさしさみたいなところは変わらない。継父による虐待とか、悲惨なニュースも多い中、大半の市井の人はこの小説に出てくるような優しい人と思いたい。
◆コロナと潜水服(奥田英朗)
奥田さんらしい軽妙なタッチの、ファンタジー色ありの短編集。楽しく、さらっと読めました。
◆神の悪手(芦沢 央)
「弱い者「神の悪手」「ミイラ」「盤上の糸」「恩返し」、将棋に纏わる短編集、芦沢さんというとホラー・ミステリーの印象が強いので、ごつごつした勝負の世界の話はちょっと意外でした。将棋にも造詣が深いんですね。
表題作は傷害致死絡みで芦沢さんらしくて良かった。
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