ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

23年5月に読んだ本

2023-06-01 12:31:38 | 読書

5月は13冊、GWの週が2冊、最終週が1冊と失速しました。
本屋大賞のノミネート本から3冊。

◆汝、星のごとく(凪良 ゆう)
本屋大賞受賞作&第168回直木賞候補作。
前半は「木綿のハンカチーフ」展開(古っ!)。瀬戸内海の田舎町で互いに腐れ親に振り回される境遇の櫂と暁海は恋人同士になるが、櫂は東京で成功し、母を捨てられず島に残った暁海との遠距離恋愛はやがて破綻する。
後半はどうなるんだろうとハラハラドキドキ、結果的にはキツい話ながらも月並みといえば月並み、でも一気に読ませる文章力はあって、なるほどだから直木賞じゃなくて本屋大賞なんだと納得。自分は最期まで自分の人生を生きようと思った。

◆光のとこにいてね(一穂 ミチ)
うーん、「百合」と一言では片づけられない二人の関係!
裕福な医師の家庭に生まれ、女子校に通う結珠と、貧相な団地で少し頭のおかしなシングルマザーと暮らす果遠が、強くひかれあいながらも、小二、高一と家庭の事情になすすべもなく出会いと別れを繰り返す。29歳で思わぬ再会を果たした二人は最初はぎこちなくも徐々に距離を縮めていくが、、、
境遇は真逆なようで変な母親に支配されているところは一緒、深く心がつながったややコミュ症気味の二人の運命やいかに!?という感じの、本屋大賞3位もうなづける読み応えのある作品。

◆方舟(夕木 春央)
2022年の文春ミステリ1位をはじめ4大ミステリのみならず、本屋大賞にもノミネートされた作品。かなり期待して手に取ったが、裏切られなかった。
山奥の謎の地下施設に閉じ込められた10人、脱出するためには一人が犠牲にならなければならない究極のクローズドサークルで起きる殺人事件。じりじりとした展開から圧巻のどんでん返し!
それにしてもこの犯人、不慮の事態からとっさにここまでのことをやってのけるなんて、、すごいの一言、面白かった。

◆おいしいごはんが食べられますように(高瀬 隼子)
芥川賞受賞作にしてはとても読みやすい作品。どの登場人物も職場にいそうな人ばかりだが、二谷さん、優柔不断ですねー。芦川さんのような女性とつい関係を持ってしまうのは男性として理解できるが、そのままずるずるいくかなー。結婚したら地獄のような食生活が待っているのに。一方で会社で唯一まともな押尾さんとも成り行きで二股をかけかかったくせに、彼女が誤解から窮地に陥ってもを庇おうともしないなんて、人として全く共感できない主人公。
芦川さんや無能な上司のおじさん方を含め、自分が嫌いなタイプの人ばかり出てきて、ストレス溜まりました。

◆ゴリラ裁判の日(須藤 古都離)
面白ければなんでもありのメフィスト賞受賞作品だけあって、確かに面白かった。
もし類人猿に人間並みの知能があってもヒト(ホモサピエンス)でなければ人権はないのか、人並みの知能を持つローズと普通のゴリラの彼女の夫は何が違うのか。一見馬鹿馬鹿しい話の中でも、人権とは何かを考えさせられた。

◆完全なる白銀(岩井 圭也)
デナリ、あの植村直己さんが遭難したマッキンリーですよね。エスキモーのリタ・ウルラクが女性初の冬季単独登頂を果たすも上村さん同様下山中に消息不明になってしまう。登頂を詐称とする報道に、彼女の名誉のために、友人である日本人の緑里と幼馴染のエスキモー、シーラが山頂を目指す。つかみは少女が抱いた無鉄砲な夢と友情、そして環境問題、読みやすい、迫力の描写に引き込まれます。

もう6月、もうじき「カドブン」「ナツイチ」「新潮文庫の100冊」、各社の文庫本フェアが始まってしまいますが、最後のあがきで2022年の選本から5冊。

◆生のみ生のままで (上・下) (綿矢 りさ・集英社文庫)
うーん、「百合」では片づけられない、魂が呼び合ったとでも言うのか、運命の二人のお話と、好意的に受け取りました。
上巻では彩夏の肉食女子ぶりに関係を持ってしまったノンケの逢衣だが、7年ぶりの再会に、今度は逢衣が献身的、積極的にアプローチ。ようやく身体を重ねた時の緊張した様子がリアルで、男女のセックスとは違う美しもエロい描写、いやいや、良いものを読ませていただきましたって感じ。

◆神招きの庭 (奥乃 桜子・集英社オレンジ文庫)
中国風王宮ファンタジー。神が人型で実在する複雑な設定に序盤は世界観を読み解くのに苦労したが、特殊設定ミステリーと思って後半は一気読み。シリーズものになっているみたいですね。二藍と綾芽の関係の先行きが気になります。

◆あの夏、二人のルカ (誉田 哲也・角川文庫)
離婚して名古屋から谷中の実家に戻ってきた女性(やがて名前は沢口遥と判明)と、同じ谷中のギターのリペアショップの店主・乾滉一と知己になる。一方で佐藤久美子は学校の仲間と結成したJKバンドの活動にのめり込んでいく。この3人が語り部。タイトルの「二人のルカ」のうち一人はバンドのマネージャー的役割の真嶋瑠香で、もう一人のルカはたぶん沢口遥と想像がつくが、JKバンドに遥にというメンバーはいない???バンド名とショップ名のルーカス???やがて明かされる高3の出来事の顛末、誉田さん、うまい。一気読みでした。

◆短編アンソロジー 学校の怪談 (織守 きょうや,櫛木 理宇,清水 朔,瀬川 貴次,松澤 くれは,渡辺 優・集英社文庫)
名前を見れば知っている作家さんのあるある学校の怪談アンソロジー。櫛木理宇さんのはちょっと意味不明というか、それなのにぞわっと怖かった。

◆アタラクシア (集金原 ひとみ・英社文庫)
うーん、金原さんの小説はなんともえぐい。普通じゃない夫婦が3組、由依はメンヘラ気味の夫・圭をほったらかして悪びれるところなく瑛人と不倫、瑛人の同僚の英美はこんなはずじゃなかったと周囲に毒をまき散らし、真奈美はDV夫となかなか別れられないまま不倫を繰り返す。英美は上手くいかないのは自分のせいではないと思ってんだろうなー。周りの人は自分の鏡なんだよ。一番わからないのはやはり由依だよね。妊娠して態度を豹変させたことも、行き当たりばったり過ぎる。なんか癖になる、ひきこまれる小説。

◆高家表裏譚6 陰戦 (上田 秀人)
若き日の吉良上野介のお話も早や第6巻。ヒール役の印象が強い人物だが小説内では大活躍の好青年、五摂家筆頭の若き近衛家の当主と義兄弟の契りを交わしたかと思えば、ついに後水尾上皇とその中宮、後西天皇とまで謁見を果たしてしまう。戦国の世が遠くなり、武士は官僚となり、各々の思惑、陰謀が渦巻く当時の政治の世界の描写が面白い。討ち入りどころかまだ家督も継いでいない吉良三郎、この小説、はたしていつまで続くのか。

◆四元館の殺人 ―探偵AIのリアル・ディープラーニング (早坂 吝)
シリーズ3作目。上木らいちシリーズもだけど、早坂さんのミステリって、「そんなの分かるわけないじゃん」みたいな奇想天外なトリックが多いよね。建築基準法とかどうしちゃったんだみたいな。
それはそうとして、やはりVOFANさんの表紙絵はカワイイ。
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