11月は6冊しか読めなかったので、2か月分まとめての報告となります。12月は13冊読めたので、合計19冊。
挑戦中の新潮文庫の100冊から6作品・7冊。
9年連続で年内完読していたのですが、5冊持ち越しになってしまいました。
◆世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)(村上 春樹)
現実世界(といってもハードボイルドワンダーランドなのでかなり変)と深層心理の「世界の終わり」が交互に展開され、最初はなんだかよくわからない二つの世界が最後につながってくる。
現実世界で博士に脳内の回路を破壊され、肉体の死?植物人間状態?になってしまう私が、自らの深層心理の中の世界で、それでも前向きに生きていくということを選択するとか、そういう感じの物語なのか。それなりの感銘は受けたものの、どうも村上ワールドはよくわからない。
◆梟の城 (司馬 遼太郎)
ものすごく久しぶりの再読、結末は記憶していたが他はほとんど忘れていた。お得意の歴史小説ではなく、池波正太郎、柴田錬三郎風の時代小説、司馬さんも初期はこういう作品を書いていたのですね。
◆蟻の棲み家 (望月 諒子)
毒親と貧困の負の連鎖、加害者も被害者も、登場するのはどうしようもない奴ばかりの社会派ミステリー。本ボシはどっちか?二者択一と思わせておいてのどんでん返し。おもしろかったです。
◆マクベス (シェイクスピア)
福田恒存さんの歴史的名訳で読むシェイクスピアの四大悲劇の一つ「マクベス」。シェイクスピアは「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「夏の夜の夢」に続き4作目。ストーリーは極めてシンプル、魔女にそそのかされ、妻に背中を押されたマクベスが国王を弑逆し王位を簒奪、しかし良心の呵責に耐え切れず錯乱自滅する。訳者の解説がやたらと難しい。時は17世紀初頭、そして文学作品ではなくあくまで劇作、論じるのではなくもっとシンプルに楽しめばいいのでは。
◆狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (ラヴクラフト)
SFなのかホラーなのか?原文がそうなのか訳のせいなのか、それとも私の読解力の問題なのか、とても読みにくかった。冒涜的とか隠微とか形容されても実感わかないし。距離もフィートで言われてもピンとこないし。忍耐力をもって読み終えました。
◆暇と退屈の倫理学 (國分 功一郎)
確かに退屈って嫌だよなーとタイトルに惹かれ、序盤はとても面白かったのだけど、中盤のカントとかハイデッガーとかのあたりは理屈っぽ過ぎて、でも最後の最後の数ページの脳科学から導き出される結論がすっと腑に落ちて、読んでよかったんだけど、反面なんだったんだろーなーと思う部分もなくはなかったかな。
年末恒例、四大ミステリーにランクインした作品から3冊。
◆化石少女と七つの冒険(麻耶 雄嵩)
麻耶さんの作品は「隻眼の少女」以来2冊目だけど、うーん、これは前作を読んでいないとかなり難しいかも。やたらと文化部と殺人事件の多いペルム学園の古生物学部を舞台にした短編ミステリーが7編、殺人事件自体よりもホームズ役の少女まりあとそのまりあの推理をとある事情から邪魔するワトソン役の彰、さらにはそのライバル役の高萩の登場、最後の「禁じられた遊び」で尻切れトンボ感はあるものの何となく明らかになった真実にもやもやした読後感。
◆焔と雪 京都探偵物語(伊吹 亜門)
かつて「なあばすぶれいくだうん」というたがみよしひささんのコミックがありましたが、それを彷彿させる病弱なアームチェア探偵とタフガイ探偵のコンビもの。
大正ロマン?漂う古都で勃発する事件の真相、なにやら薔薇的な主人公二人の関係。なかなかに楽しめました。このミス15位、ミステリが読みたい!10位作品ですが、もう少し評価が高くともよかったのでは。
◆11文字の檻: 青崎有吾短編集成
青崎有吾さんのバラエティに富んだ短編集。恋澤姉妹と表題作が特に面白かった。そりゃ中学生が2週間で解いたパスワードの正解に「繁栄」「侵攻」はないよね。
その他話題になっている小説などを6冊。
◆成瀬は天下を取りにいく(宮島 未奈)
ダヴィンチのBook of the Year1位ということで読んでみた。
Going my wayな少女、成瀬あかりのキャラだけで読ませるご当地もの短編連作。あかり、男前でかっこいいです。個人的には「レッツゴーミシガン」のエピソードが好き。
◆ハンチバック(市川 沙央)
うーん、これは、あまりにもリアルで生々しい私小説。障害に限らず世の中には重いハンデキャップを背負った人がいて。我々はうっかりでも軽々しく「気持ち、わかるよ」とか言ってはいけないということですね。ハプバの投稿とか、ナーロッパとかソープのNN、NSとか、経験なしでここまで書ける、ネット読み込んでらっしゃいますねー。ここまで書いてしまいましたかという感のある、衝撃の第168回芥川賞受賞作。
◆ペニー・レイン 東京バンドワゴン(小路 幸也)
かんなちゃん、鈴音ちゃんが小3ということは十数年続いている?番外編も入れるともう20作近くなっているのでしょうか。安定のマンネリ、ですね。でも、いつの間にか登場人物が増えちゃって、、、
◆あわのまにまに(吉川 トリコ)
2029年、祖母の紺の葬式から始まる物語、ヒロインは母いのり、物語は語り部を変え、10年ずつ遡って、最後は50年前、祖母が祈りを産むところで終わる秘密を抱えた奇妙な形の家族の物語。時代を遡りにつれ、話はいのりとその幼馴染の杏一郎から、祖母の紺に移っていく。いのりはいつごろから自分の秘密に気が付いていたのだろうか、それゆえの杏一郎への態度?まあ、とにかく面白くページを繰れるお話でした。
◆縁切り上等! 離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル(新川 帆立)
「元彼の遺言状」以降、次々と軽妙な作品を書かれているg保立さん、もはや売れっ子作家の仲間入りですね。本作はミステリー要素はほぼなし、軽く読める、楽しいリーガル作品でした。
◆ハジケテマザレ(金原 ひとみ)
はて?なんでこの本を手に取ったのか記憶は定かではないが、前に読んだ「ミート・ザ・ワールド」と同様、普通の人がぶっ飛んだ人と出会って、戸惑いながらも殻を破ってキャラ変していくみたいな内容で、まあ面白かった。03年の芥川賞受賞からはや20年、金原さんも30代後半におなりかと思うが、現代の若者文化というか、そういうのの描写、お上手ですよね。このような作風になるとは、「蛇にピアス」からは想像つかなかったなー。
大河ドラマファンなので、集英社文庫の家康関連本を2冊。
■家康が最も恐れた男たち (吉川 永青)
大河ドラマ「どうする家康」っぽいキャラの家康が生涯の強敵を語る。例えば関ケ原は家康の作戦に石田光成が引っ掛かった的な見方をする史書もある中で、歴史の真実はこっち(挙兵を知っておたおたする家康)なんだろうなーという気がする。いろんな歴史解釈に自分の考えを重ねてみる、これだから歴史は面白い。
◆家康を愛した女たち (植松 三十里)
家康愛したというか、まあ、かかわりが深かった女性7名から見た家康像、ですね。築山殿、於大の方、北政所、阿茶の局は大河ドラマの配役に脳内変換して読みました。
◆教養としての歴史小説(今村 翔吾)
私はガチの歴史小説好きなのですが、若者の本離れに書く方も苦労しているんですね。最後の方は歴史小説の書き方みたいな内容になってました。私は司馬遼太郎ファン、フィクション部分の人物造形のうまさとノンフィクション部分の歴史考察の丁寧さがたまらない。
著者は木下昌輝さんや垣根涼介さんとともにエンタメよりの作家さんと思ってすいたのですが、歴史小説に対する愛とその知識の深さは筋金入りです。同じ直木賞でも著者の「塞王の縦」はエンタメ系でしたが、垣根さんの「極楽征夷大将軍」は王道の作品でした。両方書けば書けるんだ!
◆〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ(ウィリアム・マッカスキル)
利他主義や寄付行為には賛同するものの、それを効果的=効率のみを考えつことについてはちょっと、、、私は無差別に効率のみを考えるのではなく、自分の援助したいことに寄付したいかなー。日本と欧米の考え方の違い?搾取工場については企業のコンプライアンス・プログラムの問題、著者の見解はちょっと的外れかと。確かに安易に街頭募金や災害援助にお金を出すのではなく、支援先は吟味しないと。共感半分、懐疑的な部分半分。
挑戦中の新潮文庫の100冊から6作品・7冊。
9年連続で年内完読していたのですが、5冊持ち越しになってしまいました。
◆世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下)(村上 春樹)
現実世界(といってもハードボイルドワンダーランドなのでかなり変)と深層心理の「世界の終わり」が交互に展開され、最初はなんだかよくわからない二つの世界が最後につながってくる。
現実世界で博士に脳内の回路を破壊され、肉体の死?植物人間状態?になってしまう私が、自らの深層心理の中の世界で、それでも前向きに生きていくということを選択するとか、そういう感じの物語なのか。それなりの感銘は受けたものの、どうも村上ワールドはよくわからない。
◆梟の城 (司馬 遼太郎)
ものすごく久しぶりの再読、結末は記憶していたが他はほとんど忘れていた。お得意の歴史小説ではなく、池波正太郎、柴田錬三郎風の時代小説、司馬さんも初期はこういう作品を書いていたのですね。
◆蟻の棲み家 (望月 諒子)
毒親と貧困の負の連鎖、加害者も被害者も、登場するのはどうしようもない奴ばかりの社会派ミステリー。本ボシはどっちか?二者択一と思わせておいてのどんでん返し。おもしろかったです。
◆マクベス (シェイクスピア)
福田恒存さんの歴史的名訳で読むシェイクスピアの四大悲劇の一つ「マクベス」。シェイクスピアは「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「夏の夜の夢」に続き4作目。ストーリーは極めてシンプル、魔女にそそのかされ、妻に背中を押されたマクベスが国王を弑逆し王位を簒奪、しかし良心の呵責に耐え切れず錯乱自滅する。訳者の解説がやたらと難しい。時は17世紀初頭、そして文学作品ではなくあくまで劇作、論じるのではなくもっとシンプルに楽しめばいいのでは。
◆狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (ラヴクラフト)
SFなのかホラーなのか?原文がそうなのか訳のせいなのか、それとも私の読解力の問題なのか、とても読みにくかった。冒涜的とか隠微とか形容されても実感わかないし。距離もフィートで言われてもピンとこないし。忍耐力をもって読み終えました。
◆暇と退屈の倫理学 (國分 功一郎)
確かに退屈って嫌だよなーとタイトルに惹かれ、序盤はとても面白かったのだけど、中盤のカントとかハイデッガーとかのあたりは理屈っぽ過ぎて、でも最後の最後の数ページの脳科学から導き出される結論がすっと腑に落ちて、読んでよかったんだけど、反面なんだったんだろーなーと思う部分もなくはなかったかな。
年末恒例、四大ミステリーにランクインした作品から3冊。
◆化石少女と七つの冒険(麻耶 雄嵩)
麻耶さんの作品は「隻眼の少女」以来2冊目だけど、うーん、これは前作を読んでいないとかなり難しいかも。やたらと文化部と殺人事件の多いペルム学園の古生物学部を舞台にした短編ミステリーが7編、殺人事件自体よりもホームズ役の少女まりあとそのまりあの推理をとある事情から邪魔するワトソン役の彰、さらにはそのライバル役の高萩の登場、最後の「禁じられた遊び」で尻切れトンボ感はあるものの何となく明らかになった真実にもやもやした読後感。
◆焔と雪 京都探偵物語(伊吹 亜門)
かつて「なあばすぶれいくだうん」というたがみよしひささんのコミックがありましたが、それを彷彿させる病弱なアームチェア探偵とタフガイ探偵のコンビもの。
大正ロマン?漂う古都で勃発する事件の真相、なにやら薔薇的な主人公二人の関係。なかなかに楽しめました。このミス15位、ミステリが読みたい!10位作品ですが、もう少し評価が高くともよかったのでは。
◆11文字の檻: 青崎有吾短編集成
青崎有吾さんのバラエティに富んだ短編集。恋澤姉妹と表題作が特に面白かった。そりゃ中学生が2週間で解いたパスワードの正解に「繁栄」「侵攻」はないよね。
その他話題になっている小説などを6冊。
◆成瀬は天下を取りにいく(宮島 未奈)
ダヴィンチのBook of the Year1位ということで読んでみた。
Going my wayな少女、成瀬あかりのキャラだけで読ませるご当地もの短編連作。あかり、男前でかっこいいです。個人的には「レッツゴーミシガン」のエピソードが好き。
◆ハンチバック(市川 沙央)
うーん、これは、あまりにもリアルで生々しい私小説。障害に限らず世の中には重いハンデキャップを背負った人がいて。我々はうっかりでも軽々しく「気持ち、わかるよ」とか言ってはいけないということですね。ハプバの投稿とか、ナーロッパとかソープのNN、NSとか、経験なしでここまで書ける、ネット読み込んでらっしゃいますねー。ここまで書いてしまいましたかという感のある、衝撃の第168回芥川賞受賞作。
◆ペニー・レイン 東京バンドワゴン(小路 幸也)
かんなちゃん、鈴音ちゃんが小3ということは十数年続いている?番外編も入れるともう20作近くなっているのでしょうか。安定のマンネリ、ですね。でも、いつの間にか登場人物が増えちゃって、、、
◆あわのまにまに(吉川 トリコ)
2029年、祖母の紺の葬式から始まる物語、ヒロインは母いのり、物語は語り部を変え、10年ずつ遡って、最後は50年前、祖母が祈りを産むところで終わる秘密を抱えた奇妙な形の家族の物語。時代を遡りにつれ、話はいのりとその幼馴染の杏一郎から、祖母の紺に移っていく。いのりはいつごろから自分の秘密に気が付いていたのだろうか、それゆえの杏一郎への態度?まあ、とにかく面白くページを繰れるお話でした。
◆縁切り上等! 離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル(新川 帆立)
「元彼の遺言状」以降、次々と軽妙な作品を書かれているg保立さん、もはや売れっ子作家の仲間入りですね。本作はミステリー要素はほぼなし、軽く読める、楽しいリーガル作品でした。
◆ハジケテマザレ(金原 ひとみ)
はて?なんでこの本を手に取ったのか記憶は定かではないが、前に読んだ「ミート・ザ・ワールド」と同様、普通の人がぶっ飛んだ人と出会って、戸惑いながらも殻を破ってキャラ変していくみたいな内容で、まあ面白かった。03年の芥川賞受賞からはや20年、金原さんも30代後半におなりかと思うが、現代の若者文化というか、そういうのの描写、お上手ですよね。このような作風になるとは、「蛇にピアス」からは想像つかなかったなー。
大河ドラマファンなので、集英社文庫の家康関連本を2冊。
■家康が最も恐れた男たち (吉川 永青)
大河ドラマ「どうする家康」っぽいキャラの家康が生涯の強敵を語る。例えば関ケ原は家康の作戦に石田光成が引っ掛かった的な見方をする史書もある中で、歴史の真実はこっち(挙兵を知っておたおたする家康)なんだろうなーという気がする。いろんな歴史解釈に自分の考えを重ねてみる、これだから歴史は面白い。
◆家康を愛した女たち (植松 三十里)
家康愛したというか、まあ、かかわりが深かった女性7名から見た家康像、ですね。築山殿、於大の方、北政所、阿茶の局は大河ドラマの配役に脳内変換して読みました。
◆教養としての歴史小説(今村 翔吾)
私はガチの歴史小説好きなのですが、若者の本離れに書く方も苦労しているんですね。最後の方は歴史小説の書き方みたいな内容になってました。私は司馬遼太郎ファン、フィクション部分の人物造形のうまさとノンフィクション部分の歴史考察の丁寧さがたまらない。
著者は木下昌輝さんや垣根涼介さんとともにエンタメよりの作家さんと思ってすいたのですが、歴史小説に対する愛とその知識の深さは筋金入りです。同じ直木賞でも著者の「塞王の縦」はエンタメ系でしたが、垣根さんの「極楽征夷大将軍」は王道の作品でした。両方書けば書けるんだ!
◆〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ(ウィリアム・マッカスキル)
利他主義や寄付行為には賛同するものの、それを効果的=効率のみを考えつことについてはちょっと、、、私は無差別に効率のみを考えるのではなく、自分の援助したいことに寄付したいかなー。日本と欧米の考え方の違い?搾取工場については企業のコンプライアンス・プログラムの問題、著者の見解はちょっと的外れかと。確かに安易に街頭募金や災害援助にお金を出すのではなく、支援先は吟味しないと。共感半分、懐疑的な部分半分。
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