例年は200冊くらい読むのだけど、21年は少し少なくって149冊。その中から、面白かったもの、感動した本を10冊選んでみました。特に順位は付けていませんが、ほぼほぼ印象が強かった順に並べています。
◆アマテラスの暗号(伊勢谷武)
これはねー、とにかく古代史好きの心に刺さりました。まさに日本版「ダヴィンチ・コード」、古代史のラビリンスを楽しく彷徨わせていただきました。
日ユ同祖論は知ってましたが、トンデモ本の類と決めつけていました。でも渡来人集団の秦氏がユダヤ系というはありえない話ではない、ユダヤ人ならしぶとく何世紀も祖先の記憶や習慣をとどめておくだろうから、日本の文化や政治に深くかかわった秦氏がユダヤの風俗、習慣をもって日本人のDNAの中に入り込んだということも実際あったのかもしれない。
古代史、神話の解釈はいろいろできてしまうので、この本も説の一つとして受容は可能って思ってしまう。
そのアイディアをミステリー仕立ての小説にしたのも良い。それでいて歴史のことに関しては解説や写真がふんだんに取り入れられおり、いちいちググる手間が省けてよかった。
個人的には文句なしの21年のNO.1!
◆ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンス)
20年の「このミス」翻訳部門の2位作品だけど、ミステリーというカテゴリーでは収まらない、すごい小説だった。
両親に見捨てられ、地域住民から差別されて、湿地と共に生きる孤独な少女の成長物語と、近隣の沼地で起きた青年の殺人事件の捜査が交互に進む。やがてふたつのストーリーは交差し、湿地の少女が事件の容疑者として逮捕されるのだが、、
湿地の自然の中で展開される生命の適者生存、自然淘汰と、その中で育った少女の逞しさと用心深さ、凛とした生き様がすごい。ミステリー部分も、最後の法廷の場面とどんでん返しが用意され、すごい。
◆六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成)
21年の「このミス」「ミステリが読みたい!」8位、「文春ミステリー」6位作品だけど、この作品も普通の小説としても十分面白い。
人間だれしも良いところと悪いところを持っている。自分に対しても、他人に対しても、悪いところをスルーして良いところを見ようとする姿勢って大事。自分を好きになることを通じて他人も好きになれるんじゃないかな。波多野くんも葛藤の末自分の悪いところを封じ込めたってことか。
今年の本屋大賞にもランクインしてほしい作品。
◆小説家になって億を稼ごう(松岡圭祐)
実際に小説を大量生産し、億を稼ぐ松岡さんの小説の書き方のノウハウ本。煽りの効いたタイトルですが、中身は意外に真面目で、特に第一部の小説の書き方は大変面白く読ませていただいた。
実際にこの通りの手法で小説を2本したため、カクヨムに投稿してみた。自分としてはよく書けたと思ったのだが、全くと言っていいほど評価されなかった。💦
◆りゅうおうのおしごと14、15巻(白鳥士郎)
ライトノベルからはこの1冊、新刊が出るたびに楽しみに読んでいます。
八一は銀子を選びあい等は失恋してしまうというほろ苦いハッピーエンドかなと思わせておいて、14巻で事態は急変、八一の前からあいと銀子が消えてしまう波乱の展開。八一の元には天衣が寄り添うがそこはさすがにツンデレお嬢様、八一への対応が一味違います。
でも、この小説の面白さはラブコメ部分ではない、将棋に対する熱量!あいは東京のジンジンとたまよんの元で覚醒の予感、供御飯さんら脇役の思いも心を揺さぶる。
もう15巻だけどずるずる続いている感じは全然しない。「りゅうおうのおしごと」はいつも熱い。
◆心淋し川(西條奈加)
今は谷根千と呼ばれる界隈、近くに東大ができて文化の香りがする町になったが、明治の初期までは江戸のはずれ。
どぶ川沿いに自然発生的にできた集落を題材にした短編連作が6編。訳ありでここに流れ着いた人たちのしんみりとした、「人生、大変だけど、それほど悪くもないんじゃね」と思わせるお話がそれぞれ味わい深い。
各話で脇役だった差配さんが主役になる最後の「灰の男」が謎解き、伏線回収になっていてうまい。さすがの直木賞受賞作。
◆ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー(ブレイディみかこ)
格差と移民問題が織りなす、日本人にはなかなかに実感がわきにくい複雑な英国の階級社会構造と、それに真摯に向き合う教育現場の実態を、日本人の母とそのハーフの子供の視点で描いた良作。
日本はほぼ単一民族国家だけど、グローバル化の波はそれを許さない。一億総中流とか言われていた時代もあったけど、徐々に社会が多様化しつつある。我々も排他的な国民性を改め、多様化を受けいれられるように意識を改革していかねば。
◆そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ)
18年の発刊時に単行本を図書館で借りて読んで、良い話だなーと思った。その後、本屋大賞を受賞、映画化ととんとん拍子で出世?した。映画が思いのほか感動的で、でも「あれ、こんな話だったかな」と思う部分あり、改めて文庫本を再読。
やはり細部は映画のための演出がたくさんあったけど、でも根底に流れるやさしさみたいなところは変わらない。継父による虐待とか、悲惨なニュースも多い中、大半の市井の人はこの小説に出てくるような優しい人と思いたい。
◆ひらいて(綿矢りさ)
「勝手にふるえてろ」のよしかもだけど、綿矢さんの描く痛いヒロインのぶっとびぶり、告白できないのに手紙は盗めるんですね。順序というか、価値基準がめちゃくちゃで面白いです。同性愛者でもないのにカラダを使って美雪を誘惑、目的のためには自分を傷つけることなどいとわないそのめちゃくちゃぶり。夜の教室のシーン、100%引かれるとわかって、そこまでやりますか。でも美雪には情が移っちゃったのかな。二人には、本性ごと受け入れてもらえたみたいで。
でも、ここまでやってしまっては、大人になってから「あれは青春のイニシエーション」で済ませられるのかな。
◆法廷遊戯(五十嵐律人)
楽しみな作家さんが登場しました。
伏線の無辜ゲームと美鈴に対するストーカー行為、が、第二部でなるほどとつながります。終盤にきて急にペースアップ、まだ最後に何かあるだろうと思ったのですが、ラストもうまくまとまりました。「このミス」等のランクインは伊達じゃない、面白かった。次回作も期待してます。
21年はいまいちだったけど、今年はバリバリ読んで、面白い本にたくさん出合いたい。
◆アマテラスの暗号(伊勢谷武)
これはねー、とにかく古代史好きの心に刺さりました。まさに日本版「ダヴィンチ・コード」、古代史のラビリンスを楽しく彷徨わせていただきました。
日ユ同祖論は知ってましたが、トンデモ本の類と決めつけていました。でも渡来人集団の秦氏がユダヤ系というはありえない話ではない、ユダヤ人ならしぶとく何世紀も祖先の記憶や習慣をとどめておくだろうから、日本の文化や政治に深くかかわった秦氏がユダヤの風俗、習慣をもって日本人のDNAの中に入り込んだということも実際あったのかもしれない。
古代史、神話の解釈はいろいろできてしまうので、この本も説の一つとして受容は可能って思ってしまう。
そのアイディアをミステリー仕立ての小説にしたのも良い。それでいて歴史のことに関しては解説や写真がふんだんに取り入れられおり、いちいちググる手間が省けてよかった。
個人的には文句なしの21年のNO.1!
◆ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンス)
20年の「このミス」翻訳部門の2位作品だけど、ミステリーというカテゴリーでは収まらない、すごい小説だった。
両親に見捨てられ、地域住民から差別されて、湿地と共に生きる孤独な少女の成長物語と、近隣の沼地で起きた青年の殺人事件の捜査が交互に進む。やがてふたつのストーリーは交差し、湿地の少女が事件の容疑者として逮捕されるのだが、、
湿地の自然の中で展開される生命の適者生存、自然淘汰と、その中で育った少女の逞しさと用心深さ、凛とした生き様がすごい。ミステリー部分も、最後の法廷の場面とどんでん返しが用意され、すごい。
◆六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成)
21年の「このミス」「ミステリが読みたい!」8位、「文春ミステリー」6位作品だけど、この作品も普通の小説としても十分面白い。
人間だれしも良いところと悪いところを持っている。自分に対しても、他人に対しても、悪いところをスルーして良いところを見ようとする姿勢って大事。自分を好きになることを通じて他人も好きになれるんじゃないかな。波多野くんも葛藤の末自分の悪いところを封じ込めたってことか。
今年の本屋大賞にもランクインしてほしい作品。
◆小説家になって億を稼ごう(松岡圭祐)
実際に小説を大量生産し、億を稼ぐ松岡さんの小説の書き方のノウハウ本。煽りの効いたタイトルですが、中身は意外に真面目で、特に第一部の小説の書き方は大変面白く読ませていただいた。
実際にこの通りの手法で小説を2本したため、カクヨムに投稿してみた。自分としてはよく書けたと思ったのだが、全くと言っていいほど評価されなかった。💦
◆りゅうおうのおしごと14、15巻(白鳥士郎)
ライトノベルからはこの1冊、新刊が出るたびに楽しみに読んでいます。
八一は銀子を選びあい等は失恋してしまうというほろ苦いハッピーエンドかなと思わせておいて、14巻で事態は急変、八一の前からあいと銀子が消えてしまう波乱の展開。八一の元には天衣が寄り添うがそこはさすがにツンデレお嬢様、八一への対応が一味違います。
でも、この小説の面白さはラブコメ部分ではない、将棋に対する熱量!あいは東京のジンジンとたまよんの元で覚醒の予感、供御飯さんら脇役の思いも心を揺さぶる。
もう15巻だけどずるずる続いている感じは全然しない。「りゅうおうのおしごと」はいつも熱い。
◆心淋し川(西條奈加)
今は谷根千と呼ばれる界隈、近くに東大ができて文化の香りがする町になったが、明治の初期までは江戸のはずれ。
どぶ川沿いに自然発生的にできた集落を題材にした短編連作が6編。訳ありでここに流れ着いた人たちのしんみりとした、「人生、大変だけど、それほど悪くもないんじゃね」と思わせるお話がそれぞれ味わい深い。
各話で脇役だった差配さんが主役になる最後の「灰の男」が謎解き、伏線回収になっていてうまい。さすがの直木賞受賞作。
◆ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー(ブレイディみかこ)
格差と移民問題が織りなす、日本人にはなかなかに実感がわきにくい複雑な英国の階級社会構造と、それに真摯に向き合う教育現場の実態を、日本人の母とそのハーフの子供の視点で描いた良作。
日本はほぼ単一民族国家だけど、グローバル化の波はそれを許さない。一億総中流とか言われていた時代もあったけど、徐々に社会が多様化しつつある。我々も排他的な国民性を改め、多様化を受けいれられるように意識を改革していかねば。
◆そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ)
18年の発刊時に単行本を図書館で借りて読んで、良い話だなーと思った。その後、本屋大賞を受賞、映画化ととんとん拍子で出世?した。映画が思いのほか感動的で、でも「あれ、こんな話だったかな」と思う部分あり、改めて文庫本を再読。
やはり細部は映画のための演出がたくさんあったけど、でも根底に流れるやさしさみたいなところは変わらない。継父による虐待とか、悲惨なニュースも多い中、大半の市井の人はこの小説に出てくるような優しい人と思いたい。
◆ひらいて(綿矢りさ)
「勝手にふるえてろ」のよしかもだけど、綿矢さんの描く痛いヒロインのぶっとびぶり、告白できないのに手紙は盗めるんですね。順序というか、価値基準がめちゃくちゃで面白いです。同性愛者でもないのにカラダを使って美雪を誘惑、目的のためには自分を傷つけることなどいとわないそのめちゃくちゃぶり。夜の教室のシーン、100%引かれるとわかって、そこまでやりますか。でも美雪には情が移っちゃったのかな。二人には、本性ごと受け入れてもらえたみたいで。
でも、ここまでやってしまっては、大人になってから「あれは青春のイニシエーション」で済ませられるのかな。
◆法廷遊戯(五十嵐律人)
楽しみな作家さんが登場しました。
伏線の無辜ゲームと美鈴に対するストーカー行為、が、第二部でなるほどとつながります。終盤にきて急にペースアップ、まだ最後に何かあるだろうと思ったのですが、ラストもうまくまとまりました。「このミス」等のランクインは伊達じゃない、面白かった。次回作も期待してます。
21年はいまいちだったけど、今年はバリバリ読んで、面白い本にたくさん出合いたい。
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