ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

今読むと恥ずかしい本 「赤頭巾ちゃん気をつけて」

2010-12-28 01:23:54 | 読書
といっても、別にエロい本ではなくて、昔夢中になって読んでいたけど、今改めて読み返してみると、この本に夢中になっていた自分の若さが恥ずかしくなる本のこと。
高校の同窓生30人くらいでメーリングリストを作ってメールのやりとりをしているのですが、最近、柴田翔の「されどわれらが日々」からこの話題になりました。
他にも、庄司薫、サリンジャー、ヘッセの「車輪の下」などの名前が出ましたが、自分的には、やはり庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」が一番恥ずかしいかな。

「赤頭巾ちゃん気をつけて」は、都立日比谷高校3年生の庄司薫クンを主人公とした私小説です。
当時の日比谷高校と言えば東大合格者数日本一の名門高校、学生運動のあおりを受けて東大入試が中止になった69年に東大法学部を受験する予定だった薫くん、彼なりに「大学には行かない」という決意をするわけですが、誰にもその真意を理解してもらえない。
足の爪をはがし、愛犬が死に、幼馴染のガールフレンドとけんか状態、次々と不幸に見舞われる薫くんが、悩み、考えて決意したことは、強くて優しい男になろうということだった。。。

薫くんは、いわゆる全共闘世代よりも少し下の世代。
学生運動などとは無縁のいい子で、、勉強もスポーツもなんとなく出来てしまういやったらしいほどの優等生、白衣の下が全裸の女医さんにも、やりコンでも何もしないほどの優柔不断で人畜無害、でもしっかりと地に足をつけて生きようとしている。
時代の転換期、学生運動や文学や芸術や女?に夢を追って、挫折して、逃げたり、開き直ったり、そういう人たちだらけの馬鹿馬鹿しい世の中で、それでもしっかり強くてやさしい男の子になって自分の周囲の人を幸せにしてやろうと決意する男の子の話、簡単に言うとそういう小説でした。

読み返してみて、恥ずかしいことは恥ずかしいけど、でも今でも共感する部分もかなりあります。
突っ走って挫折する人達の欺瞞的な部分、そういうことが見えてしまうから、そういう人たちに馬鹿にされても、距離感を持って自分の頭で考えているところ、とでもいうのかな。
学生運動とか、東大入試中止とか、日比谷高校とか言われると本当に時代を感じますが、あの時はあの時で、真っ只中にいた人にとっては、時代の、価値観の大転換期だったのでしょう。
私は薫くんのそのまた下の世代ですが、薫くん同様、時代の中心にいる若者達ををなんとなく外から見て、反対するでもなく、どっちかと言うと応援してて、でもなんか違うかなとも思ってました。
あの世代の人たちは、やたらと難しい方に熱く考える人たちで、その人たちと比べて我々の世代は「無気力、無関心、無責任」なんて言われてましたが、そんな自分たちでも、今の人に比べると、いや今の自分と比べてすら随分と物事を難しく考えていたような気がします。

常識的なこと、前向きなこと、楽観的なこと、行動的なこと、地に足が着いていること、かっこつけないこと、いきがらないこと、社会で強くやさしく生きていくうえで大切なことって、本質的にすごくシンプルなんだなって、大人になってやっと分かってきました。




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2 コメント

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Unknown (KAZU)
2010-12-28 08:31:03
読みましたね。
シリーズ最初の「赤頭巾ちゃん」は高校3年生だったかな。
あるクラスが文化祭の劇で上演したのがきっかけでした。
いわゆる薫くんシリーズ、新作が出て文庫本になるのを待って全部読みました。
単行本を買うだけの小遣いがなかった頃のことでした。

第2作目の「白鳥の歌なんて聞こえない」の最後のところは圧巻でドキドキしました。
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Unknown (RASCAL)
2010-12-30 10:32:10
KAZUさんも庄司薫、読まれてましたか。
「白鳥の歌なんか聞えない」は、由美ちゃんがどきどきでした。
あの頃は、由美ちゃんのことを「なんて素敵な子なんだろう。」と思ってたのですが、今になって考えるとちょっと、、、
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