特定秘密保護法の運用状況をチェックするとして設置された議会内の機関に、衆参両院の情報監視審査会があります。
秘密保護法は防衛や外交などの4分野で、情報漏えいが「国の安全保障に著しい支障を与える」と政府が判断すれば、特定秘密に指定できることになっています。
しかし、これでは判断基準が曖昧のため、政府が思い通りに判断する余地があり、監視機関として衆参両院に審査会が設置されました。
ただし、衆参両院とも与党議員が多数を占めるため、与党議員が政府の意向をくんで監視が甘くなる、と指摘されていたのですが、いきなりその弊害が出ました。
2015年12月22日、参院の情報監視審査会が国会内で会合を開き、この中で民主党は国家安全保障会議(NSC)と警察庁が2014年に指定した特定秘密のうち2件の提示を求める動議を提出しました。
ところが、自民、公明両党は
「政府の説明で十分理解できる」
と主張し、反対多数で否決したのです。そりゃ、あんたらは与党だからそう言うでしょう。ちなみに、国会の審査会で特定秘密の提示要求の動議を採決したのは初めてのことです。
これで、重要な資料・記録ほど、中身も見ないで政府の説明だけで特定秘密にされてしまうという慣行ができてしまいました。
2件の特定秘密は、NSCの「2013、14両年に4大臣会合の審議を経て確認した議論の結論」と、警察庁の「14年までに警察が行った安全保障に関する外国政府との情報協力の実施状況」です。
民主党は特にNSCの記録について、
「NSCの議事録の一部が特定秘密に指定されているが、範囲が適切か確認したい」
などと提示を求めたのですが、採決では民主党と維新の党の委員計3人が賛成しましたが、自民、公明両党の委員4人が反対しました。
衆議院でもこの両党が一致して反対すれば、見もしないで特定秘密に指定される人数割りになっています。
国家安全保障会議(NSC)は内閣に設置され、国家安全保障の重要事項を審議する機関であり(国家安全保障会議設置法1条)、首相の政策決定や政治的決断のサポートを行います。
今回、このNSCに関しては首相、官房長官、外相、防衛相で構成される四大臣会合の議論に関する内容が問題となりました。
四大臣会合は他国を武力で守る集団的自衛権を行使するか決めるNSCの司令塔的な組織だけに、特定秘密の指定状況について国会が厳しく監視する必要があるのです。
ところが、衆参でねじれ現象が起きたとして、参院の情報監視委員会で中身を見せろということになっても、政府に対する強制力がないのです。
このように、衆参両院がその中身も見ないままに、政府の言うがままに特定秘密となり、闇に紛れてしまう。
やはり、特定秘密保護法をちょうどよく運用するなど無理なこと。この法律自体を廃止することを目指すしかありません。
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ほんとに何度見てもひどい法律だ。
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特定秘密提示要求を否決 参院の監視機能 疑問
参院情報監視審査会は二十二日、国会内で会合を開いた。民主党が特定秘密保護法に基づいて二〇一四年に指定された特定秘密のうち二件の提示を政府に求めるよう主張したが、採決の結果、自民、公明両党の反対多数で否決された。提示の是非をめぐり採決されたのは初めて。今後も与党の反対で政府への提示要求が拒否されるようなら、国会の監視機能に疑問符が付く。
審査会の金子原二郎会長(自民)は否決の理由について「民主党は『実際の文書を見て確認したい』と主張した。だが、自民、公明両党が『提示を求める必要はない』と反対した」と記者団に説明した。審査会は自民、公明の与党と、民主、維新の党の野党二党で構成するが、維新も特定秘密の提示を求めた。
金子氏によると、民主党が提示を求めたのは国家安全保障会議(NSC)と警察庁の特定秘密一件ずつ。NSCに関しては四大臣会合の議論に関する内容。四大臣会合は他国を武力で守る集団的自衛権を行使するか決める組織だけに、特定秘密の指定状況について国会が厳しく監視する必要がある。警察庁については、警察が実施した安全保障に関する外国政府などとの情報協力業務に関するものだった。
秘密保護法は防衛や外交などの四分野で、情報漏えいが「国の安全保障に著しい支障を与える」と政府が判断すれば、特定秘密に指定できる。判断基準が曖昧のため、政府が思い通りに判断する余地があり、監視機関として衆参両院に審査会が設置された。
しかし、衆参両院とも与党議員が多数を占めるため、与党議員が政府の意向をくんで監視が甘くなるのでは、との指摘が出ていた。 (中根政人)
特定秘密、提示を否決 参院審査会、民主の要求に与党
12/23 05:00、12/23 10:39 更新 北海道新聞
特定秘密保護法の運用状況をチェックする参院情報監視審査会は22日、国会内で会合を開き、民主党が国家安全保障会議(NSC)と警察庁が2014年に指定した特定秘密のうち2件の提示を求める動議を提出した。自民、公明両党は「政府の説明で十分理解できる」と主張し、反対多数で否決した。国会の審査会で特定秘密の提示要求の動議を採決したのは初めて。
2件の特定秘密は、NSCの「13、14両年に4大臣会合の審議を経て確認した議論の結論」と、警察庁の「14年までに警察が行った安全保障に関する外国政府との情報協力の実施状況」。民主党は「NSCの議事録の一部が特定秘密に指定されているが、範囲が適切か確認したい」などと提示を求めた。採決では民主党と維新の党の委員計3人が賛成したが、自民、公明両党の委員4人が反対した。
審査会の金子原二郎会長(自民)は「詳細は保護措置の関係で話せない」と記者団に説明。民主党の大野元裕委員は「秘密指定に疑義がある以上、提示を要求するのは当然だ。中身についての審議すらさせない状況はおかしい」と述べた。
参院審査会は11月の会合で、外務省などが指定した特定秘密3件の提示要求を全会一致で議決。政府は今月3日の会合で提示した。
政府の特定秘密保護法の運用をチェックする参院情報監視審査会は22日、特定秘密の詳しい開示をめぐり、初の採決が行われた。民主党が国家安全保障会議(NSC)と警察庁の特定秘密各1件の詳細の開示を求める動議を提出したため。採決では自民、公明両党の反対多数で否決された。
NSCの特定秘密は2013〜14年に開催した会議の結論に、警察庁分は14年までに警察が行った外国政府との情報協力業務に、それぞれ関するものだった。審査会ではこれまで、特定秘密のチェックを全会一致で進めてきた。
[時事通信社]
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