ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

きたやまおさむ・よしもとばなな『幻滅と別れ話だけで終わらないライフストーリーの紡ぎ方』2012・朝日出版社

2024年07月11日 | 心理療法に学ぶ

 2018年のブログです

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 きたやまおさむさんとよしもとばななさん(なぜか、ひらがなです)の対談である『幻滅と別れ話だけで終わらないライフストーリーの紡ぎ方-並んで海を眺める心でいっしょに考える!』(2012・朝日出版社)を再読しました。

 この本は少し前に読んだつもりだったのですが、もう6年が経っていました。

 去年、ある臨床心理士さんがご自身のブログでこの本をほめておられていて、気になっていたのですが、やっと読めました。

 あらためて読んでみて、やはりいい本です。

 東日本大震災の少し後での対談で、お二人の軽妙なお話の中にも、冷静な分析が混じっていて、勉強にもなります。

 いろいろ考えたことがあったのですが、ひとつは日本人の愛の形について。

 きたやまさんが、小津安二郎監督の映画を例にして、日本人は横に並んでいっしょに同じ方向を見ることが愛の形になると指摘されます。

 西洋の男女が見つめあうのとは違う愛の形があるのでは?と述べられていて、おもしろく感じました。

 そして、ともすると、日本では、つるが美しいままで去っていくのを見送ってしまう悲劇の物語になってしまうので、はかなさで終わらずに、すまなさという罪悪感をきちんと感じることが大切、と述べられます。

 それを受けてばななさんは、つるにずっと生き残ってもらえるようにすることが重要では?と提案をします。

 日本人の甘えや無責任さを鋭くつき、その打開策を考えるお二人のお話はとても参考になります。

 また、きたやまさんが、村上春樹さん(すみません、読み返してみると、村上龍さん、の間違いだったようです(2020.11 追記))の、普通というのは普通じゃないところを含んでこそ普通、という発言をひいて、正常は異常を含んで初めて正常、と述べています。

 ともすると、異端や異常を排除しがちな日本人の悪いところを指摘していると思いました。

 他にもいろいろと刺激されたところが多々あって、いい本だと思います。

 なお、著者名が漢字でなく、ひらかなのお二人ですが、ここには深い深いわけがあり、それは本書をじっくりと読んでみてください。

 それもがひとつの日本人論にもなっています。     (2018 記)

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 2020年11月の追記です

 きたやまさんが指摘する、村上龍さんの「普通」は普通じゃないものを含んでいる、という指摘は鋭いと思います。

 じーじは、ただの「普通」もそれなりにすごい、と考えていますが、もっと考えてみようと思います。

 蛇足ですが、じーじの公園カウンセリングは横並びでお話を聴くことが多く、これについても考えてみたいと思いました。     (2020. 11 記)

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 2023年12月の追記です

 日本人は横に並んでいっしょに同じ方向を見ることが愛の形になる、という指摘はすごいですね。

 じーじのカウンセリングは「愛」なのかもしれません(???)。       (2023. 12 記)

 

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吉本ばなな『キッチン』1991・福武文庫-全くなかみを忘れていた「意味」は?

2024年07月11日 | 小説を読む

 たぶん2016年ころのブログです

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 吉本ばななさんの『キッチン』(1991・福武文庫)をおそらく20数年ぶりに再読しました。

 前に読んだのはたぶんじーじが30代後半の頃、いい小説なのに、なぜかその時以来で、2回目ではないかと思います。

 この本もいつもおじゃましている精神科デイケアのメンバーさんにすすめられて再読となりました。

 驚いたのは、読みかえしても全く記憶が残っていないこと(吉本さん、ごめんなさい)。

 記憶力の悪さでは絶対の自信がある(?)じーじですが、ここまで完璧に内容を覚えていないのは少し不思議です。

 おそらくは何か「意味」がありそうですが(ここが心理屋の悪いところですが…)、それが何なのかはまだわかりません。

 不思議な小説ではあります。

 死、孤独、不安、別れ、などなど。

 あんまり覚えていたくない内容ではありますが、しかし、喪や諦めや再生などのテーマもあって、こんないい物語を忘れてしまうなんて、なんとひどい読者です。

 30代後半のじーじ、何をしていたんでしょう?

 小学生の長女と保育園の長男の子育てで余裕がなかったのかな?

 それとも中年を前にして、自分の生き方で悩んでいたのでしょうか?

 そのころの精神状態もあまり思い出せないということは、やはり何かあったのでしょうね。

 今回、こんないい小説を再読したのですから、おいおいわかってくることもあるかもしれません。

 メンバーさんのおかげで、貴重な体験ができました。

 ていねいに生きていきたいな、と改めて思いました。      (2016?記)

 

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