たぶん2017年のブログです
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またまた古い本を再読しました。
なだいなださんの『れとると』(1975・角川文庫)。
読んだのはたぶんじーじが家庭裁判所で働きはじめた頃、今から40年くらい前のことです。
当時、じーじと一緒に採用になったのがW大の心理学科を出た優秀な同僚。
じーじは四流私大の社会学科しか出ていませんでしたが、彼はそんなじーじにも臨床のことをいろいろと親切に教えくれました。
じーじたちは、仕事帰りによく駅前の居酒屋でお酒を飲みながら、仕事のことについて熱く議論をしていました(シーナさんじゃないですけど、思えば黄金の日々でした)。
ある時、じーじが、非行少女の援助をしていて、結婚を考えるくらい真剣に応援したいな、と話したところ、W大くんが、赤坂さん、それは違います、なだいなださんの『れとると』を読むといいですよ、と勧めてくれました。
さっそく、小説『れとると』を購入して読んでみたところ、そこには心理療法における転移性恋愛の様子がていねいに描かれていて、心理学音痴だったわたしにもよく理解できました。
それからのじーじは、心理療法や精神医学の勉強をする必要性を強く感じて、河合隼雄さんや土居健郎さんの本などを読み始めました。
そういう意味で、『れとると』はじーじにとってもとても重要な小説で、それを教えてくれたW大くんには本当に感謝しています。
心理療法における転移性恋愛の問題は、専門家にも難しい問題で、フロイトさんを含めてさまざまな議論がなされています。
本書では10歳の不登校の女の子と22歳の視線恐怖の女性の心理療法のお話が、とてもわかりやすく、細やかに描かれていて、心理療法だけでなく、女性をめぐる文学作品としても一流だと思います。
本書には主人公の精神科医を指導するスーパーヴァイザーが出てきますが、どうも土居健郎さんがモデルのようで、その冷静さや正確さも魅力的です。
久しぶりに読みかえしてみましたが、今でも色褪せない魅力的な小説だと思います。
さらにいい仕事をしていきたいな、と強く思いました。 (2017?記)